Beyond Despair -17ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

愛花は震えるエレナを抱えながらアヴェンジャー達を見渡している。

「逃がす気は一ミリも無さそうだな、これ」

護が掴む手を振り払い、私は化け物共を睨みつける。

腕が鎌状の奴に、人型で相手に噛み付くタイプの奴。

合計五十体って言ったところか。

さすがにコイツらを守りながらは骨が折れる。

けど、退路はどこも塞げれていてコイツらを逃がす事すら出来ない。

本当にタイミングが悪すぎるよ、この化け物共はさ。

私は一度息を吐き、右手に今度は短めの短剣を作り出す。

そして先に作った短剣を左手に逆手で持ち替えると、もう一本同じ短剣を作り出す。

その短剣も逆手に持ち替え、私はアヴェンジャーの群れに構えを取った。

五十体相手に長すぎる槍や剣を使うのは得策じゃない。

出来るだけ小回りがきく武器が望ましいのだ。

「お前ら、後ろに下がってろ」

前に居る三人にそう言った、その瞬間だった――。

周りを囲むアヴェンジャーが一斉に愛花へと飛びかかったのだ。

いや、正確には愛花にではなくエレナに向かってだろうか。

「いや、いや、いやぁぁぁあぁ!!!!」

アヴェンジャーが向かってくるのと同時にそんな悲鳴が聞こえる。

愛花は急に襲ってきたアヴェンジャー達をただ眺める事しか出来ない。

それくらい、奴らの行動は急すぎたのだ。

「火野川、エレナッ!!」

と、そんな愛花達を前にどっかの馬鹿がまた我が身忘れて彼女の元へと走り出す。

そして愛花達を庇うかのよに護は彼女達の目の前で両手を伸ばしてアヴェンジャー達に立ち塞がる。

当然、アヴェンジャーはそんな乱入者なんて気にせずに襲いかかる。

私は舌打ちをしながら右手に持つ短剣をブーメランの様に右から左へと投げ飛ばした。

円を描く様に取り囲んでいたアヴェンジャー達を名もなき短剣が綺麗に切断していく。

そして、綺麗に円を描いた短剣が私の手元に戻った瞬間に飛び掛ったアヴェンジャーの身体はバラバラに砕け散った。

赤い血をまき散らす肉片が愛花達の周りに汚い音をたてながら落ちていく。

「ひぃぃぃ!」

床に散らばった肉片を目にした坂口がそんな悲鳴を上げる。

エレナは未だに激しい頭痛に襲われているのか、周りを見る余裕がなく苦しんでいる。

極道は坂口のように悲鳴こそ上げないが身体を震わせていた。

愛花は足元に落ちた肉片をただじっと見つめている。

護はと言うと、昨日のように吐いたりもせず残るアヴェンジャー達を警戒していた。



/続く



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「ハァ、ハァ……!」

息を荒らげる護を私はじっと見つめる。

「おま、え……」

と、そんな私の手を護は掴むとそのまま階段の方へと走り出す。

「お、おいッ! 何するんだ、離せッ!!」

必死に護の手を離そうともがくも、力強く握られていてふりほどく事が出来ない。

「聞いてるのか! 離せって言ってるんだッ!!」

「聞いてるって、でもお前の足止めはあんまり意味ないんだってのッ!!」

声を乱しながら護はそう答える。

階段を走りながら降りているせいで、思わず転びそうになる。

「意味がないって、どういう意味だ!」

「周りの階を見てみろ、そこらじゅうにあの化け物共がウヨウヨしてんだろ!」

私は階段を走り降りながら周りの階を見渡す。

すると、階の廊下のあちこちに黒い何かかがウヨウヨしているのが分かる。

言うならここはアヴェンジャーの巣のような物だ。

「多分、各部屋に待機してたんじゃないか?」

私の手を引きながら走る護が自分の考察を口にする。

「誘拐犯が何で居ないのかは知らねーけど、今ここに化け物共がウジャウジャ集まって来てるって事は、エレナが目当てなんじいゃないのか?」

「あのスマイル女が目当て?」

「あぁ、きっと誘拐犯には目的があったんだ。何で若い女性ばっか拐ったのかは知らないけど、エレナ意外の女は皆、目的を達成するまでには至らなかった。だから用無しと判断されて殺された。けどエレナは生きてる、って事はつまり……」

あのスマイル女は誘拐犯の目的を達成するに至る者だったって言う事か。

と、先程アヴェンジャーが現れた瞬間のエレナの姿が脳内に浮かび上がる。

〝私に、押し付けないで……、そんな感情、押し付けないでッ!!〟

頭を抱えながら何かにそう訴えるエレナ。

その現象は間違いなくアヴェンジャーが現れてから起きた事だ。

「あの女……化け物の声でも聞こえるのか?」

そう、一人小声で呟く。

そんな事を言っている間にも私達は一階に到着していた。

が、逃げ切れたと思っていた愛花達を取り囲む無数の黒い影。

坂口は腰を抜かしているのかその場に尻餅を着いている。

極道はどこから持ち出したのか、鉄パイプを両手に握り締めアヴェンジャー達を睨みつけていた。



/続く



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「アンタ……何、それ」

昨日の護と同じ反応だ、それほどもでに武器を作り出すというのは珍しいらしい。

愛花の問いに答えようと私は口を開けた、その瞬間――。

「……ッ!?」

屍を操っているアヴェンジャーが一気に間合いを詰めてきたのだ。

私は反射的に女の屍の頭部を斬り飛ばす。

「アァァァァァァァァッ!!!!!!」

頭を切り落とされたアヴェンジャーの口からそんな悲鳴が聞こえてきた。

いや、アヴェンジャーの悲鳴と言うよりは屍の嘆き声と言ったところか。

「何してる、早く逃げろッ!!」

未だに呆然としている五人に怒鳴りつける。

私の声に愛花はハッとなり、抱きかかえているエレナの肩に手を回し立ち上がった。

「ライト……お願い!」

そう言い残すと愛花は階段の方へと走っていく。

その後に続いて坂口と極道も退散していく。

が、何故か神崎護だけは私の側を離れようとしない。

「お前なんでまだそこに居るんだ! 死にたいのかッ!?」

と言うか、何で平気で私の真後ろに突っ立ってられるんだ。

昨日みたいに恐怖に怯える顔すらしていない。

と、今度は屍が二躰同時にコチラに飛び掛ってきた。

そのうちの一体を蹴り飛ばし、もう一体の屍の脳天に刃の尖端を突き刺す。

そしてそのまま刀ごとウジャウジャ溜まっているアヴェンジャー共の方へと投げ飛ばす。

飛ばされたアヴェンジャーに衝突し、フラフラと立ち尽くしていたアヴェンジャーがドミノだ押しの様に倒れていく。

しかし倒れた仲間など気にならないのか、706号室から続々と出てくるアヴェンジャーは起き上がろうとするアヴェンジャーを踏みつけながらコチラへと向かってくる。

私は一歩後ずさりながら階段の方へと視線を向ける。

愛花達の姿はない、無事にエントランスまでたどり着けただろうか。

「ライト、後ろだッ!!」

「―― え?」

突然、そんな呼び声が聞こえてくる。 

私は素早く振り向くが、もう遅かった。

昨日公園で見た腕が鎌状になっているアヴェンジャーが私の首を狩ろうと飛び掛ってきていたのだ。

化け物との距離は数メートルしか無い、武器を作り出すにも遅すぎる。

と、そんな私を狩ろうとしていたアヴェンジャーに赤色の消化器が投げ付けられる。

投げ付けたのは私の側を離れようとしなかったツンツン頭の男子生徒。

そんな彼の予想外の反撃にアヴェンジャーは704号室のドアを突き破りながら吹き飛んだ。



/続く



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