〝そうだぜライト、そいつらはお前にとっては感心すらない他人だろうが〟
そうだ、悪魔の言う通りだ……。
私に守るなんて事は出来ない、壊す事しか出来ないんだから。
こんなところで死んで、ライアンを殺した化け物を皆殺しに出来なかったら、どうライアンに償えばいいってんだ。
エレナがアヴェンジャーの声を聞く事が出来るなんてどうでもいい、興味ない。
コイツらがここで死のうが、喰われようが構わない。
私はエントランスの出口辺りに視線を向ける。
私一人でなら充分に化け物を吹っ飛ばして退却出来るだろう。
両手に握られている短剣を前方に溢れているアヴェンジャーの群れに投げ付ける。
グチャ、と音をたてながらエントランスの出口を塞いでいたアヴェンジャーの首が切断される。
これで退路は開けた、人間一人が駆け抜けらば抜けられる退路が。
私はそのまま開かれた出口に向かって歩き出す。
「ちょっと、待ってよライトッ! この人数で出口から出るのは無理よッ!!」
そんな声が背中から聞こえてくる。
しかし、私はその声を無視しながら先に進む。
その途中、四体のアヴェンジャーが鎌状の腕を振り回しながら近づいてくる。
私は舌打ちをしながら素早く槍を作り出し、尖端部分をアヴェンジャーの首に目掛けて振り回す。
噴水のような勢いで血を吹き出しながら倒れていくアヴェンジャー。
床は奴らの首から今だ流れ出る血で赤く染まっていた。
そんな血の水溜まりを私は容赦なく踏みつけながら出口に歩いていく。
「ライトッ! 私達を置いてくつもりなのッ!?」
いい加減、後ろからの声にもイライラしていた。
私は出口の目の前で足を止め、振り返る。
エントランスの中央に寄り添いながらアヴェンジャーを警戒している五人の学院生徒。
そのうちの一人、火野川愛花が私をじっと見つめていた。
「少し待ってよ! それにアイネさんが騎士団に連絡してくれてるんでしょ!?」
騎士団が来るまで持ち堪えれれば、とでも思っているのだろうかこの女は。
私はつい鼻で笑ってしまう。
「ラ、イト……?」
「あぁ、そうだな? で、だからなんだ」
「だからなんだって、ここで一緒に――」
「一緒だぁ? お断りだそんなの。お前の魔術は少々特殊みたいだが、それでも私とお前だけで持ち堪えられる数じゃない。下手な事して死ぬなんてのは私はごめんだ」
私はそう言いながら愛花達に背を向ける。
「待ってよッ! 貴方がここに来たのはエレナを助けてくれる為じゃなかったの?」
愛花のその言葉に私はついつい呆れてため息をしてしまう。
「私がいつそんな事を言ったんだ? 私がここに来たのは誘拐犯を捕まえる為だ、一言もそこのスマイル女を助ける為だとか言ってないだろ」
都合良く解釈されても困る。
本当はあのスマイル女に誘拐犯の行方を聞きたかったくらいだが。
ああなっていては使い物にならない。
「……見捨てるの、私達の事」
震えた声で、愛花が私にそう問いかけてきた。
私は一瞬彼女に顔を向ける。
「そもそも、そのスマイル女がどうなろうが私には関係ない」
すると愛花は顔をうつむかせると、赤く光る右手の拳を力強く握り締めた。
「どうして、そんな事が言えるの? エレナは初対面のアンタにも優しく接してくれてたでしょッ!?」
愛花の怒鳴り声で、フラフラ動き回っていたアヴェンジャー達の動きが止まる。
愛花は涙を流しながら、悔しそうな表情で私を睨みつけてきた。
「……だから、なんだってんだ?」
「―― え?」
「優しくしたのはソイツの勝手だろ? そんなの私には尚更関係ない話だ」
冷たい声で私は愛花にそう答える。
既に私が切り開いた出口までの道はアヴェンジャーの群れによって塞がれていた。
階段からはエレナを狙うアヴェンジャーが何十体もウジャウジャと降りてきている。
「じゃあな、お前ら。生きていたらまた明日」
そう、私は最後の別れを口にして廃墟となったマンションを後にした。
/続く