Beyond Despair -16ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

〝そうだぜライト、そいつらはお前にとっては感心すらない他人だろうが〟

そうだ、悪魔(コイツ)の言う通りだ……

私に守るなんて事は出来ない、壊す事しか出来ないんだから。

こんなところで死んで、ライアンを殺した化け物を皆殺しに出来なかったら、どうライアンに償えばいいってんだ。

エレナがアヴェンジャーの声を聞く事が出来るなんてどうでもいい、興味ない。

コイツらがここで死のうが、喰われようが構わない。

私はエントランスの出口辺りに視線を向ける。

私一人でなら充分に化け物を吹っ飛ばして退却出来るだろう。

両手に握られている短剣を前方に溢れているアヴェンジャーの群れに投げ付ける。

グチャ、と音をたてながらエントランスの出口を塞いでいたアヴェンジャーの首が切断される。

これで退路は開けた、人間一人が駆け抜けらば抜けられる退路が。

私はそのまま開かれた出口に向かって歩き出す。

「ちょっと、待ってよライトッ! この人数で出口から出るのは無理よッ!!」

そんな声が背中から聞こえてくる。

しかし、私はその声を無視しながら先に進む。

その途中、四体のアヴェンジャーが鎌状の腕を振り回しながら近づいてくる。

私は舌打ちをしながら素早く槍を作り出し、尖端部分をアヴェンジャーの首に目掛けて振り回す。

噴水のような勢いで血を吹き出しながら倒れていくアヴェンジャー。

床は奴らの首から今だ流れ出る血で赤く染まっていた。

そんな血の水溜まりを私は容赦なく踏みつけながら出口に歩いていく。

「ライトッ! 私達を置いてくつもりなのッ!?」

いい加減、後ろからの声にもイライラしていた。

私は出口の目の前で足を止め、振り返る。

エントランスの中央に寄り添いながらアヴェンジャーを警戒している五人の学院生徒。

そのうちの一人、火野川愛花が私をじっと見つめていた。

「少し待ってよ! それにアイネさんが騎士団に連絡してくれてるんでしょ!?」

騎士団が来るまで持ち堪えれれば、とでも思っているのだろうかこの女は。

私はつい鼻で笑ってしまう。

「ラ、イト……?」

「あぁ、そうだな? で、だからなんだ」

「だからなんだって、ここで一緒に――」

「一緒だぁ? お断りだそんなの。お前の魔術は少々特殊みたいだが、それでも私とお前だけで持ち堪えられる数じゃない。下手な事して死ぬなんてのは私はごめんだ」

私はそう言いながら愛花達に背を向ける。

「待ってよッ! 貴方がここに来たのはエレナを助けてくれる為じゃなかったの?」

愛花のその言葉に私はついつい呆れてため息をしてしまう。

「私がいつそんな事を言ったんだ? 私がここに来たのは誘拐犯を捕まえる為だ、一言もそこのスマイル女を助ける為だとか言ってないだろ」

都合良く解釈されても困る。

本当はあのスマイル女に誘拐犯の行方を聞きたかったくらいだが。

ああなっていては使い物にならない。

「……見捨てるの、私達の事」

震えた声で、愛花が私にそう問いかけてきた。

私は一瞬彼女に顔を向ける。

「そもそも、そのスマイル女がどうなろうが私には関係ない」

すると愛花は顔をうつむかせると、赤く光る右手の拳を力強く握り締めた。

「どうして、そんな事が言えるの? エレナは初対面のアンタにも優しく接してくれてたでしょッ!?」

愛花の怒鳴り声で、フラフラ動き回っていたアヴェンジャー達の動きが止まる。

愛花は涙を流しながら、悔しそうな表情で私を睨みつけてきた。

「……だから、なんだってんだ?」

「―― え?」

「優しくしたのはソイツの勝手だろ? そんなの私には尚更関係ない話だ」

冷たい声で私は愛花にそう答える。

既に私が切り開いた出口までの道はアヴェンジャーの群れによって塞がれていた。

階段からはエレナを狙うアヴェンジャーが何十体もウジャウジャと降りてきている。

「じゃあな、お前ら。生きていたらまた明日」

そう、私は最後の別れを口にして廃墟となったマンションを後にした。



/続く



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その瞬間、アヴェンジャーに伸ばしている愛花の右腕に赤いラインが絡まっているかのように光り出す。

そして次の瞬間、刹那の間に前方に広がっていたアヴェンジャーが一気に焼け死んだのだ。

―― 目を疑ってしまう。

今愛花の魔術のによって焼かれたアヴェンジャーはそのどれもが息絶えているのだ。

アメリカに居た時でも滅多に見る事が出来ない光景だ。

普通魔術を用いたアヴェンジャーとの戦闘は〝一人〟ではなく〝集団〟で行う物だ。

それでも集団掛かりでも奴らを殺すのは難しいと聞いている。

にも関わらず、今私の隣にいる女子生徒は〝一人〟でいとも簡単にアヴェンジャーを焼き殺してしまったのだ。

私は愛花をじっと見つめる。

愛花は赤く光る自身の右腕を眺めながら――。

「なんだ、魔術じゃ中々倒せないって……あれ、嘘だったのね」

と、ホッとしたかのように笑いながら呟いた。

「ライト、愛花ッ! 後ろ!」

ふと、背中から護の叫び声が聞こえてくる。

私はとっさに振り返ると、階段の方から既にエントランスに足を踏み入れている化け物共の姿。

ついつい愛花の魔術に魅入ってしまっていた事を今更後悔する。

階段の方からコチラに向かって来ているアヴェンジャーの数はざっと三十体ほどだ。

とてもじゃないが殺し切れる数じゃない。

頭がパニック状態になる、こんなの久しぶりだ。

頭を抱えながら周りのアヴェンジャーを見渡す。

―― このままじゃ、間違いなく死ぬ……。

〝そうそう、死んじまうぜ? アンタの復讐物語はここで幕切れになっちまう〟

私の中に居る悪魔が、そう囁く。

そう、そうだよ、何をやっているんだ私は。

何で私はこんな奴らを守ろうなんて考えていたんだろうか。



/続く



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一度経験するとすぐに慣れる奴なのか、アイツは。

「お前ら、ライトの後ろに行くぞ」

身体を震わせる仲間に護はそう言った。

坂口は尻餅をついたまま私の後ろへと下がっていく。

その後に続くように極道、そして火野川達もアヴェンジャー達へと身体を向けたまま私の後ろに下がって行った。

愛花は抱えいたエレナを一度床に横にさせる。

エレナは相変わらず頭をかけたままだ。

きっと周りに居るアヴェンジャーが原因だろう。

しかし、何故コイツはこの化け物の声が聞こえるのだろうか。

そんな奴今まで聞いた事すらない。

ふと、上の階から物音が聞こえてくるのが分かる。

視線を向けると、先程の七階から各階の廊下よりコチラに踊るように向かってくる黒い影の姿が見える。

まずった、ついエントランスの奴らに気が行っていて忘れていた。

このままじゃサンドイッチのように挟まれるのがオチだ。

さっき殺したアヴェンジャーの数はおよそ五体。

今エントランスに居るアヴェンジャーは四十五体。

だが上の階から降りてきているアヴェンジャーの数は何体か想像も出来ない。

「まずいな……」

ついそんな事を小声で呟いてしまう。

アメリカでもこんな危機的状況に置かれたことなんてなかった。

しかも今回はコイツらを守りながら戦わなくちゃいけないから、ますますタチが悪い。

いっそのこと、コイツらを置いて退散するかとさえ考えてしまう。

それくらい、今の状況は私にとっては打開出来ないものだった。

と、そんな絶望的な事を考えている時だった。

今までエレナの傍に居た愛花が私の真横にやってきたのだ。

「何してんだ、そこに居たら邪魔だぞ」

こっちは必死になってるってのに何のつもりなんだこの女は。

すると愛花は私に顔を向けるなり――。

「邪魔にはならないわよ。だって、私も手伝うんだから」

と、当たり前の事の様にそう言った。

静かに右腕をアヴェンジャー達の方へと伸ばす様に向ける。

そして拳を握っていた手の平を広げると――。

魔術(マジック)因子(ファクター)――起動(オンライン)――

と、小さく愛花はそう呟いた。



/続く



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