Beyond Despair -15ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「ふぅ~、マジで死ぬと思ったよ」

 汗をダラダラ首から流す坂口が息を荒くしながらそう言った。

「お、おぉう……オレでもさすがに死を覚悟したぜ」

 いつもは乱暴な口調の龍二も坂口の言葉に同意と言わんばかりにそう答える。

 護は何も言わず、ただ呆然と上を見上げていた。

 私はエレナをゆっくりと座らせると、その隣に腰を下ろす。

「にしてもあのクソ女、オレらを見捨てて自分だけ逃げやがってッ!!」

 地面に拳を叩きつけながら龍二はそう怒鳴り散らす。

 彼のその言葉に誰も何とも答えようとしない。

 私も何て言えばいいのか分からない。

 正直、ライトがあんな事をするなんて思ってなかったから。

 嫌な沈黙は数分続く。 

 一先ずここに居れば、アイネさんが騎士団に連絡を入れてくれている訳だし安全だろう。

 と、そんな事を考えている時だった。

 今まで座っていた護が唐突に立ち上がったのだ。

 私を含む四人、護に顔を向ける。

「マモッチ、どうしたん? トイレ?」

「ちょっと、ライトを探しに行こうと思ってさ」

 その、当たり前の事の様に答えた護の言葉に私達は固まってしまう。

 それから数秒後、龍二は立ち上がるとすぐさま護の襟元をグイっと力強く掴んだ。

「テメー何言ってんだァ!? あの女はオレらを見捨てたクズ野郎だぞオイッ!! そんな野郎を探しに行くだァ!?」

 激しく護の身体を揺らしながら怒鳴りつける龍二。

 そんな龍二が掴む手を護はサッと振り払う。

「お前がキレるのも分かるよ。けど、アイツ……震えてたんだ」

 護は顔を曇らせてそう答える。

「そりゃアイツが俺達にした事はマジで頭に来る。けど……放って置けないんだよ」

 護の言葉にライトがこの廃墟を出ていく時の映像が脳内で再生される。

 そう言えば、口では突き放つような事を言っていたけど……。

 微かに、彼女は身体を震わせていた様に見えた。

 さっきは少しパニック状態だったから気付かなかったけど。

「それで、護はどうしたい訳?」

 私は分かりきった質問を護にする。

 すると護は――。

「ライトを探して、ちゃんと話したい」

 そう、真剣な表情でハッキリと答えた。



/続く




にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!  

「さてと、それじゃ一先ずここを出ましょうか」

苦しそうな表情をしているエレナの肩に腕を回す。

まだ自分の力では立ち上がる事は出来ないだろうから。

すみません、とエレナが静かに謝ってくる。

そんな彼女に私は微笑みかけた。

エレナの身体をお越し、そのまま出口に向かう。

私の後を続いて坂口と龍二も歩き出す。

と、何故か護だけがその場を動こうとせず一人立ち尽くしていた。

「護?」

護の顔は上の階を向いている。

もしかしたらまた新たな化け物でも見つけたのだろうか。

「ちょっと護? どうかしたの」

二度目の声に護はハッと私に顔を向ける。

「あ、いや何でもねぇよ。ただ、誰かが見下ろしてた気がしてさ」

苦笑いしながら不気味な事を口にする護。

「あのね、ただでさえ心臓がバグバグしてるんだからそういう事言わないでくれない……」

「別に怖がらせるつもりで言ったんじゃない。本当に誰かが見てる気がしただけだって」

む、とした表情で護はそう言った。

そして私を横切り廃墟となったマンションの出口から外に出る。

私は一度、護が見ていた階に視線を向けた。

そこには人影どころか、何も見えない。

「気のせいよ、あの馬鹿の」

自分にそう言い聞かせながら、私もエレナと共に廃墟となったマンションから外に出た。

マンションの前は広い駐車場となっていた。

そこの中央に男三人が疲れたと言わんばかりにヘタレこんでいる。

「ホント、頼り甲斐のない奴ら……」

大体なんで私がエレナを抱えなきゃいけないのか。

いや嫌って言う訳じゃない、ただこう言う力仕事は普通男がやるものだと思うのだ。

「あ、愛花さん、もう大丈夫です」

と、弱々しい声でエレナがそう言った。

私から身体を離し、フラフラした足で何とか立とうとする。

けどエレナはまだ本調子ではないのか、すぐにその場に倒れそうになる。

「まだ無理よ、良いから私に掴まる!」

そんなエレナを強制的に引っ張りもう一度肩に手を回す。

そして使い物にならない男共の元に足を運んだ。



/続く




にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!
 

赤いコートの少女の姿が遠のいていく。

私はただ呆然とその背中を見つめる事しか出来なかった。

何もかも拒絶している彼女、ライト・クライスの背中を。

「……ライト」

隣にいる護が彼女の名前を呟く。

「あの野郎ッ! オレらを置いて一人だけ逃げやがったぞオイッ!!!」

鉄パイプを振り回しながら怒鳴り声を上げる龍二。

それもそうだろう、龍二の言う通りライトは私達を置いて一人逃げていったのだ。

怒りたくなる気持ちもわからなくもない。

「ヒノッチ、ど、どうするん?」

脅えた声で坂口が私にそう言った。

私自身どうすれば良いのか分からない。

けど、今ハッキリしている事はある。

「そんなの決まってるでしょ! 生きてこのマンションから脱出するのよ!!」

私は右腕に魔力を集中させる。

すると絡まる様に引かれた赤いラインが更に眩しく輝き出す。

ライトはこう言っていたっけ、私と自分の力を合わせても騎士団が来るまで持ちこたえる事は出来ないって。

「けど残念、下手したらここに居るアヴェンジャー全員吹き飛ばせる事だって魔術には出来るのよッ!!」

私はその場にしゃがみこみ、地面に右手の平を着ける。

前方と後方、左右からはコチラを喰らわんとするアヴェンジャーの群れ。

きっとこんな状況、ライトが見たら呆れてしまうのだろうけど。

「選択するは北欧より伝わりしルーンを用いた魔術式――」

けど、それでも私は諦めない。

魔術でこの化け物を倒す事が出来ると分かった今だからこそ、私のこの決意は揺るぎない物になったんだから。

「〝イサ!〟」

祝詞を唱えると、地面に乗せている手の平から波の様に白い光が流れていく。

そしてその刹那、光に接触したアヴェンジャーは凍りついた。

光の波は階段を上がり、各階に潜むアヴェンジャーをも凍りつかせる。

「す、すげぇ……」

凍りつくアヴェンジャーを眺めながら護は感心するかのようにそう言った。

さっきまでうるさいほど聞こえてきたアヴェンジャーの足音も今では聞こえなくなっている。

どうやら、この廃墟に潜むアヴェンジャーは全て凍りついたようだ。

私は腰を上げると、うずくまるエレナに顔を向ける。

「エレナ、まだ頭痛はする?」

「い……今は大丈夫です」

息を荒くしながらエレナはそう答えた。

エレナが苦しまないと言うことは化け物が完全に消滅した事を表しているのだろう。

けどまだ安心は出来ない、魔術で凍らせても予想外な事態が起こるかもしれないからだ。

右腕を天井に翳す。

マジックラインに再び魔力を注ぎ込む、するとラインが再び赤く輝き出した。

「〝テイワズ!〟」

勝利を意味するルーン祝詞を唱えると、凍りついたアヴェンジャーの身体が甲高い音をたてながら粉々に吹き飛んだ。



/続く




にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!