Beyond Despair -14ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

私はフラフラと立ち上がり、壁に寄りかかる。

胸の痛みは引いてくれない、息も苦しいままだ。

無意識に私はまたマンションのある方へと視線を向ける。

誰も来ない、誰も居ない、追ってくるはずもない。

「……何でこんなに苦しくなる……なんで、私には関係ないのに」

矛盾している自分にイライラする。

いつしか私は涙を流していた。

視界がボヤけていくのが分かる。

私は壁に寄りかかりながら崩れる様に座り込む。

非道の事をしただけで何でこんなにも私は壊れそうになる……。

悪魔と契約した時から、人間として生きる事をやめたのに。

膝を抱え込み、下を向く。

周りからは何も聞こえない、聞こえるのはただ、自分の情けない鳴き声だけだ。

「……ダメだ、このままじゃ」

このままじゃ、〝あの頃の私〟に戻ってしまう。

無力で、何も出来ない私に。

「罪悪感なんて……感じてない……」

そう、感じてなんてない。

私は他人から見れば最低の人間なんだ、だからあんな事だって平然と出来る奴なんだ。

だから、だから……。

「じゃ何で泣いてんだよ、お前……」

「――え?」

突然の声に私は反射的に顔を上げる。 

そこには、さっき廃墟に置き去りにしたはずの神崎護の姿があった。

護は私の目の前にしゃがみこむと、顔を覗き込んでくる。

「ったく、お前人の事言えねぇだろ。俺らの事切り捨てておいて罪悪感に襲われるって何だよ? もう少し悪役っぽくしてもらってないと、置き去りにされた俺達も調子狂うっていうか……」

深々とため息をつきながら護は私を見つめる。

「……何を、しにきた」

説教をしにでも来たのかコイツは?

それとも切り捨てておいて泣いている私に嫌味でも言いにきたのだろうか。

「何しにって、お前を探しに来に決まってんだろうが」

「……はぁ?」

一瞬、耳を疑ってしまう。

コイツは今、なんて言ったのだろうか。

探しに来たと、そう言ったのか?



/続く




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「けど、そう思っちまうのはまだアンタが人間ってのに焦がれてるからだ。俺様と契約した時点でそんな甘い思いなんざ殺さなくちゃいけねーってのによ」

悪魔がそう言った瞬間、突然腹部に激しい痛みが走る。

「あ、ぐッ!」

誰かに力強く蹴られた感覚。

恐らく、目の前の悪魔が蹴りつけてきたのだろう。

私は腹部を両腕で抑えながら悪魔を見上げる。

暗いせいか、よく直視する事が出来ない。

が、コイツが今私を見下ろし嘲笑っている事は理解出来た。

「良いか女、テメーはもう普通の人間としては生きられねーんだ。なのにちょっとアイツらの友情を見ただけで心が揺らいじまうのは困るんだよなぁ?」

と、悪魔が私に顔を近づけてくる。

私は悪魔から視線を背けた。

「揺らいでなんて、ない……」

震えた声で私は悪魔の言葉を否定する。

そんな私の否定を悪魔はまたゲラゲラと嘲笑った。

ゾロリ、と頬を舐め上げられる。

気持ちの悪い感覚に身体が震える。

「あながちあの(おとこ)が言ってたのも間違ってねーかもな、なぁ? 〝強がりライト〟」

やめろ、やめろ!

「ヒヒヒヒ! 口ではデカい事言ってるけど心が弱っちーもんなアンタはさぁ!!」

弱くない、弱くない、違う、違う!

「良いか、しょせん人間なんて生き物は騙し合いの生き物だろうがッ! そんな生き物に焦がれてどーすんだよッ!!」

黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッ!!!!!!

「黙れッ!!!!」

心で思っていた言葉が口に出る。

そして、私は無意識に刻印が刻まれた右腕に噛み付いていた。

その瞬間、目の前に居た悪魔が渦を巻きながら消滅する。

それでも私は口を離さない。

ギリ、と音をたてながら柔らかい肌に歯を食い込ませる。

口の中に鉄の味が広がるのが分かる、恐らく血が出ているのだろう。

私はしばらくしてからやっと口を離した。

右腕からは血がダランと地面に下だり落ち、赤い水溜まりを作っている。

けど、仕方ない。

これ以上、悪魔の言葉を聞いていたら頭がおかしくなりそうだ。



/続く




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暗い一本道をひたすら歩く。

その間、何度も私は後ろを振り返る。

あのマンションからはもう随分と離れている。

さっき少しばかり大きな音が聞こえたが、それはアイツらによる物か化け物によるものかは分からない。

私は立ち止まり、何度目になるのか後ろに振り返る。

誰も居ない、誰も来ない。

アイツらは生きているのだろうか、と少しばかり思ってしまう。

切り捨てておいてこんな事を思うなんて矛盾している。

あの(バカ)の事を矛盾している、なんて今の私には言えないな。

ふと、自分の身体が震えている事に気づく。

何で震えているのだろうか。

―― アイツらを見捨てたから?

そんな事で私は、こんなにも震えているのか?

「違う……」

悪魔との契約の証である刻印が刻まれた右腕を睨みつける。

そもそも悪魔と契約している時点で私は救いようのないクズで最低の人間なんだ。

そんな人間が他人を見捨てた程度で何を震えているんだ……。

〝ヒヒヒ……罪悪感を感じてるのか?〟

と、震える私に悪魔が語り掛けてきた。

すると突然、右腕の刻印が黒い渦を巻き起こす。

そして黒い渦はまるで蛇の様に私の足元まで下だり落ちると、そこからゆっくりと黒い人型の影を作り出した。

黒い人影は私に顔を向けるとニヤリといやらしく口元を歪ませる。

「ヒヒヒ、本心では心配で仕方ないんだろ?」

「違う……思ってない、私はそんな事なんて……」

「罪悪感を感じて、何ども振り返ってんだろ? 付いてきていないかとか、そんな事期待してんだろう??」

まるで呪いの言葉のように目の前の悪魔が私に呟く。

「違う……違う、違う違う違うッ!!!」

頭を抱えながら私は叫ぶ。

「ヒヒヒ、アンタも充分矛盾してんだよッ! さっきもそうだったよな? アイツらの友達の絆の強さに焦がれてただろ? 今ままで友達とかカスの集まりと思っていたアンタがさぁ!!」

私はその場に崩れるようにしゃがみこんでしまう。

何故か、胸が苦しい……。

張り裂けそな激痛が胸から頭へと走り抜けていく。

エレナの様に頭を抱えながらいつの間にか私はうずくまっていた。

息がだんだん苦しくなっていく。

嫌な汗が下だり落ちる。



/続く




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