Beyond Despair -13ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「誰って、そうだなー、名前は一応グリードってんだ、よろしくな嬢ちゃん」

不気味な微笑みを浮かべるグリードと名乗る男。

私は一歩後ずさる。

するとグリードは左手に掴む剣を私達の方へと突きつけてきた。

「な、何だコイツ……」

突然の第三者の登場に動揺している護。

と、グリードは動揺する護に視線を向けた。

「おやおや? 誰かと思えば昨日公園で吐いてた奴じゃねぇかよ」

ヒヒヒ、と癇に触る笑い声を上げるグリード。

ふと、そんな奴の言葉に私は引っかかる物を感じた。 

「おい、お前……何で昨日公園でコイツが吐いた事を知ってるんだ」

ん? とグリードが私に視線を向ける。

何でコイツは昨日の事を知っているんだ。

そもそも護が吐いた事を知っているのはあの場にいた私だけの筈なのに。

「そりゃ俺達は記憶を共用してるからな~」

「……どういう意味だ、記憶を共有してるって」

コイツは何を意味の分からない事を言っているのだろうか。

「どういう意味もなにも、俺達はそういう〝生命体〟だからな」

と、不気味な笑みを浮かべなるグリード。 

生命体、その単語が何を意味するのか私はすぐに理解した。

コイツは、間違いなく――。

「人間により近い、アヴェンジャー……」

私の言葉を聞くとグリードは満足した顔で口笛を吹く。

「ジャック・ポット……」

男がそう言い終えた瞬間、背筋に寒気が走る。

私は反射的に後ろにいる護の手を取り走り出そうとした、が既に遅かった。

コチラに突きつけられているグリードの黒い剣が、まるで蛇の様に伸びてきたのだ。

「――ッ!?」

刹那の速さで伸びてくる黒い剣の尖端を私は顔ギリギリの所でかわす。

が、完璧にかわしきれなかった左頬から真っ赤な血がダラリと流れる。

「ライトッ!」

護の呼び声が聞こえてくる。

でも今の私には奴の呼び声に反応する心の余裕が無かった。

伸びた剣はジャリジャリと音をたてながら主の元へと戻っていく。

「おぉ~? よくかわしたな赤毛犬。今のは普通の人間ならまずかわせねーってのに」

心臓がバクバクと激しい鼓動音をならしているのが分かる。

いつのまにか口の中もカラカラになっていた。



/続く




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「その証拠に、今日学院寮のエントランスでお前は俺に謝ってくれたじゃないか。昨日の公園で、お前にあんな所を見せてすまなかったって。それだけじゃない、俺がアヴェンジャーに殺されかけた時にだって助けてくれた。もしお前が自分の言う通り最低の人間なら助けたりも謝ったりもしないだろ」

そうだった、私はそんな事をしていたのだっけ。

アヴェンジャーに殺されかけた護を助けた事。

アヴェンジャーを殺し尽くして笑い声を上げている自分を見せてしまった事への謝罪。

思えば、アイネを泣かせてしまった事にも私は罪悪感を感じていた。

あぁ、私はなんて矛盾してるのだろう。

「……お前の事、ホントに言えないな」

呆れてまた笑ってしまう、自分の矛盾した事に対して。

すると護は立ち上がり、私に手を差し伸べてきた。

「人として悪魔憑きでいれば良いんじゃないか?」

ニッコリと笑う神崎護。 

私は何も言わず、ただ差し伸べられる手を掴んだ。

そしてゆっくりと立ち上がる。

コイツはホントにお人好しでバカな野郎だって事はよく分かった。

けど、私はコイツのおかげである事に気づく事が出来た。

まぁ、コイツの言葉で気づかされたこには少しイラつくけど。

「んじゃ愛花達のとこに戻るか」

護のその言葉から、アイツらは全員無事なんだと言うことが理解出来た。

私は握り合っている手を離し、護から顔を背ける。

「ん? どうかしたか」

一応、コイツのおかげで少し気が楽になったから。

だから、礼くらいは言っておこうかな。

「いや、ただ……その……」

と、お礼を言おうとした瞬間、道の奥の方から口笛が聞こえてきた。

そしてそれと同時に、足音が聞こえてくる。

その足音はコチラに近づいてきているらしい。

「良いね、良いね、感動的だなオイ?」

ヘラヘラした男の声がだんだんと近づいてくる。

そしてその声の主の姿がようやく現れた。

とんがった髪型で何故か右腕が切断されている。

そして左手には変わった形状の剣が握られていた。

「んで、人として生きるにあたりアンタはどうずんだぁ? 赤毛犬」

「……お前、誰だ」

目の前の男を睨みつける。

何故か分からないが、この男からは普通の人間とは違う物を感じられる。

殺意、憎しみ、僻み、嫉妬、そういった人間の醜い感情がこの男からは放出されている感じ。



/続く



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「何で、探しになんて来た……」

コイツは本当にバカなのだろうか。

置き去りにした奴を探しにくるなんて、普通の人間のする事じゃない。

むしろ見つけたらボコボコにするくらいだろ。

何にコイツは、何でそんな事を笑顔で言えるのか。

「お前ってさ、自覚ないのか? 私はお前達を置き去りにして一人逃げた最低の人間なんだぞ。なのにノコノコ探しに来るなんて」

アホらし過ぎて笑ってしまう。

すると護はむ、とした表情になった。

「いや、お前がした事はマジで頭に来る。男だったらきっとぶん殴ってるぞ」

「そう思ってんなら何で探しに来んだ、バカかホントに……」

まぁ、自分で自分は矛盾してるって自覚してる訳だが。

「いや、お前とちゃんと話したいと思ってさ」

「話したい?」

「あぁ、何かお前……苦しそうだったし」

困ったかのような表情で護はそう言った。

「それに、震えてたから気になってさ」

コイツはバカが付くほどもお人好しなのかもしれない。

そうでなければ自分を置き去りにした人間の心配なんて普通しないだろうに。

「なぁ、お前にとっては罪悪感を感じる事はそんなにいけない事なのか?」

「当たり前だ、私は悪魔憑きなんだぞ。悪魔憑きになるってのはな、人として生きる事を諦めるって事なんだ。だから、人間的な感情なんて抱いちゃいけないんだよ……」

悪魔に言われた事をそのまま口にする。

私はうつむき、護から顔を逸らした。

と、その時だった。

何のつもりか、護が私の頭を優しく撫でてきたのだ。

私は反射的に顔を上げてしまう。

すると、私の顔を見た護は優しく微笑んだ。

「何で悪魔憑き=人じゃなくなる、なんだよ。別に良いじゃんか、人として生きたって」

そんな護の言葉に私はまた笑ってしまう。

「そんな事出来ると思ってんのか? 私はな、もう非道の道を歩んでるんだよ。昨日だってそうだ、お前の前で己の為だけにアヴェンジャーを殺し尽くしたッ! お前が吐こうがお構いなしにだ! そそて今度はお前達を切り捨てたんだぞ! こんな私が人間だって言え――」

「お前は人間だ。絶対に人間だ」

言えるのかと、言い終える前にそう、目の前の男は断言してきた。

力強く、当たり前のように。



/続く



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