Beyond Despair -12ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「……コイツが、エレナを拐った犯人……」

と、低く冷めた声で護が呟いた。

私は視線を護に向ける。

そこには今までのコイツからは想像出来ない、そんな表情でグリードを睨みつけている護の姿があった。

仲間に恐怖を味あわせた事に対しての怒りからか、拳を力強く握り締めている。

コイツは本当にお人好しで、裏心の無い仲間思いな奴なんだ。

今の時代、こんな奴が居るのはホント珍しい。

バカが付くほどの仲間思いだろう、きっとコイツは。

「お前は、真っ直ぐな人間なんだな」

「え?」

護は驚いたかのような表情で私に顔を向けてくる。

その時、偶然にも護と目が合った。

「……あ」

私は反射的に護から顔を逸らす。

そんな私の動作を不振がるかのように首を傾げる護。

「……ひょっとして、褒めてる?」

「違う、褒めてなんてないッ!」

そう怒鳴るように私は答えた。

すると護は優しく微笑みながら――

「素直じゃねぇなお前」

と、嬉しそうに呟いた。

くそ、なんだってコイツはすぐに笑うんだ。

「ところでライト、その傷は大丈夫なのか?」

「……え、傷?」

「忘れてんのか……ホラ、ほっぺの切り傷だよ。さっきあの野郎にやられたろ」

そう言えばそうだった。

あまり痛みが無いからそこまで気にする事でもないけど。

切り傷がある左頬を手で少し触ってみる。

まだ傷口が完全に塞がっていないのか、触った指に赤々しい血がついた。

「傷口はまだ完全に塞がってないけど、まぁ放っておいて大丈夫だろ」

頬の傷なんてそこまで気にするほどでもない。

私はため息をつきながら護に向き直る。

と、その時――

「――え……?」

突然護が私の左頬に優しく触れてきたのだ。

あまりにも突然すぎて私は何も言えず、ただ頬を優しく撫でる護を見める。

すると護は空いている手で自分のズボンのポケットの中を弄り出した。

そしてそのポケットから取り出したのは、何やら子アザラシのイラストが描かれた絆創膏だった。



/続く




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「やった、のか……?」

倒れ込むグリードを見つめながら護はホッと胸をなでおろす。

それにつられるように私はホッと息を吐いた。

ふと、私はグリードの左腕に見つめる。

コイツの腕を、どこかで見た覚えがあるのだ。

そして脳内にさっきマンションの一室で見た光景が再生される。

窓際で身体を震わすエレナを呼び求める愛花の足元に転がっていた右腕。

確か、その右腕だけは女性の腕の物とは違っていた覚えがある。

「――そうか、そう言う事か」

殺意混じりの低い声で呟く。

怒りで身体が震える。

そう、間違いなく今目の前で死んでいるコイツが今回の連続誘拐事件の犯人なのだろう。

そして私とアイネに情報をくれた男を猫の餌にしたのも恐らくコイツだ。

力強く拳を握りしめる。

もっと早くコイツが犯人だと気づいていれば殺さなかったってのに。

私は目の前の死体を睨みながら舌打ちをする。

「どうかしたか? ライト」

苛立つ私に護は声をかけてきた。

私は振り向き、護に視線を向ける。

すると何故か、不思議な事にコイツの顔を見た瞬間、今さっきまで募らせていた殺意や怒りが和らいでしまったのだ。

護は首を傾げたまま私を見つめる。

そう言えば、コイツはさっき私を助けてくれたのだっけ。

思えば、これで二度目だ。

廃墟で私に向かってくるアヴェンジャーに消化器を投げつけて助けてくれた。

そして今度は伸びるグリードの剣を鉄パイプで私の身体を貫く直前に叩き落としてくれた。

……何だか、今日はコイツに助けられてばかりな気がする。

何の力もなくて、誰よりも無力な奴のくせに。

「……いや、もう少し早く気づけば良かったって後悔してるだけだよ」

「後悔?」

「あぁ、コイツが誘拐犯だって事にさ」

私がそう言うと護は驚いたかのような表情を浮かべる。

私はもう一度倒れるグリードに視線を向けた。

今更後悔しても殺してしまったのは仕方がない。

本当は捕獲してあらいざらい吐き出させたい所だったが。



/続く



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「ホラホラ、何ボサッとしてんだ? 早く何かしら武器作らねーと……」

長く伸びた剣がグリードの手元に全て戻る、と同時に――。

「今度は心臓目掛けちまうぜぇ!?」

ズン、と甲高い音をたてながら再び剣がコチラに伸びてくる。

今度は私の心臓部分を目掛けて。

が、武器を作り出すにももう間に合わない。

それに、私はこの一撃はかわす事は出来ないと直感していた。

さっきは直線を描くように伸びてきただけだが、今度はかわした瞬間、曲がって背中から串刺しにされる可能性だってある。

そう考えると無理にかわさず手で防いだ方がまだ無事にすむかもしれない。

しかし、そんな私の予想は簡単に裏切られた。

――速すぎる……!!

どう考えてもさっきの時よりスピードが増している。

とても手で防げる物じゃない。

下手したら手の平を貫通してそのまま私の身体を貫きかねない。

剣は確実に、猛速でコチラに伸びてきている。

身体が震える、頭が真っ白になる。

剣を突きつけられた時、武器を作り出しておけば良かったと今更後悔してしまう。

しかしもう遅い、延びる黒い刃は私のすぐ目の前まで迫っている。

私は来ると予想された〝死〟に備えるよいに目を閉じた。

が、その時、目の前で鎖が叩き落とされるかのような音が聞こえてきたのだ。

私はそっと目を開ける。

目の前にはヘナヘナと地面に崩れる鎖のような剣。

そしてそのすぐ近くに息を荒くしながら鉄パイプを握る神崎護の姿。

コイツが、伸びてくる剣を叩き落としたのだろうか。

と、護は私に顔を向けるなり――。

「ライト、今だッ!!」

そう、叫ぶように声を上げた。

その言葉に私は反射的に短剣を作り出す。

そして、短剣の先端をグリードの脳天に投げ飛ばす。

グチャリ、と汚い音が響きわたる。

グリードは白目を剥き、脳天から血をダラダラ流す。

奴の剣も主が刺されたのが原因か、さっきまで戻っていた動作を停止した。

そのままグリードは大の字を描くように倒れ込んだ。



/続く



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