Beyond Despair -11ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

愛花はゆっくりと右腕を私の方へと突き出してきた。

そして手の平を静かに広げる。

「私がキレてるのはね、アンタがどうしようもなく自己中心的な女だからよ。自分の目的の為なら周りの人間が傷つこうが関係ない、そんな奴」

コチラに向けられる右腕に絡まる様に赤く光るラインが引かれる。

「私ね、人間でそう言う奴が一番嫌いなのよ。どうしてだか分かる? それはね、私の姉さんがそう言う最低の人間だったから」

「……姉さん?」

と、愛花が言葉を言い終えると同時に、彼女の手から魔弾が拘束で放たれた。

「……ッ!?」

余りにも急な攻撃。

先のグリードとの殺し合いの時もそうだが、どうも今日の私は油断しているらしい。

そうで無ければこんな、武器を作り出すのに間に合わないなんて事にはならないからだ。

魔弾は赤く、燃え上がりながらコチラに猛速の速さで迫ってくる。

かわすにも間に合わないだろう。

――けど、仕方ない。

こうなったのは私が原因なんだから。

だから、ここで仮に愛花に殺されるのなら、それは仕方ないと思った。

と、諦めかけた時――。

「ライトッ!」

護が魔弾から私に被さるように庇ってきたのだ。

それと同時に後ろの方から激しい爆発音が聞こえてくる。

愛花の放った魔弾がどこかに衝突したのだろう。

「……お、お前」

目の前には神崎護の顔。

護は息を荒くしながら愛花の方へと顔を向ける。

「火野川……! なんのマネだお前ッ!!」

「邪魔しないでくれる?」

「何でこんな展開になんだよッ!」

「さっきも言ったでしょ? その子は私が一番許せない人間の類だって」

いつも明るい護と愛花の会話が、今では互いの事を睨みながらの会話になっていた。

「待てよ火野川! 確かにコイツのした事は許せない、だけど――」

護は一瞬、私に視線を向けてくる。

そしてすぐに愛花に視線を戻した。

「コイツ、泣いてたんだ。俺達の事を置いていった事に罪悪感を感じて泣いてたんだよッ!! って事はコイツにも善意の心があるって事だろうが!」

護は必死に愛花を説得する。

が、そんな護の必死の言葉は彼女には届いていなかった。



/続く




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廃墟と化したマンションの駐車場に四人の人影。

「お~い、戻ったぞ~」

手を振りながらまるで遠足帰りのように四人に声をかける護。

私はそんな彼の後ろをただ黙って付いていく。

四人のうち、愛花が私達の方に顔を向けてきた。

残るエレナ、坂口、極道の三人も愛花に続き顔を向ける。

「ちゃんと連れ戻して来たのね、護」

低く、冷たい愛花の声が響いて聞こえてくる。

明るく微笑む護とは対照的に愛花は冷たい表情だ。

何が怒ってないだ、完全にキレてるだろアレは。

まぁ、コイツの言葉は信じちゃいないけど。

「おうって、騎士団の連中まだ来てないのか?」

「そうみたいね」

と、愛花は突き放つように護との会話を切る。

そして私を鋭い目付きで睨みつけてきた。

「……意外ね、戻ってくるとは思ってなかった」

その一言で場の空気が一気に変わるのが分かる。

そして何故か、エレナや坂口、極道達が愛花を止めるかのように手を伸ばしている。

それが不思議に思ったのか、護は首を傾げた。

「なぁ、気のせいだと思うんだがー、火野川……もしかして怒ってるのか?」

その質問に愛花は長い髪の靡かせながらえぇ、と即答した。

「って、え!? だってお前探しに行っていいって――」

「探して良いとは言った、けどライトを許すとは一言も言ってないわよ」

まぁ、こうなるだろうとは思ってたけどな。

私はため息をしながら睨みつけてくる愛花に視線を向ける。

その目からは激しい怒りが感じられた。

「あ、愛花さん、やめましょうよ……私は気にしてませんから」

愛花の後ろで怯えながらエレナが声を上げる。

そんな彼女に愛花は一瞬顔を向ける。

「勘違いしないでエレナ、私が彼女を許せないと思ってるのは、別に私達を置き去りにしたからじゃないの」

「――はぁ?」

思わず声を上げてしまう。

てっきり置き去りにした事に激怒していると思っていたのだが。

すると愛花がゆっくりと私の方に向き直る。

それと同時に彼女の周りに激しい風が吹き始めた。

そして、彼女の足元から白く輝く魔方陣の様な物が波の様に広がっていく。

――魔術。

アイネの魔術は何度か見たことはある、が。

彼女、火野川愛花の魔術はアイネのそれとは比較出来ない程の力を有している事が肌で感じられた。



/続く




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「傷口からばい菌が入ったら大変だぞ」

そう子供を甘やかすかのような口調で護は言いながら、私の左頬に絆創膏をぺタっと貼り付けた。

私はもう一度左頬を手で触ってみた。

傷口があったはずの所に貼られた絆創膏の感触。

何でだろう、胸が締め付けられる感覚だ。

とても苦しくて、でも……。

どこか嬉しくて、暖かくて……。

……涙が……出そうになる。

視界がボヤけて、大粒の涙が頬を伝って地面に落ちる。

私はハッとなり、うつむきながら涙を拭った。

「ライト?」

「……目にゴミが入っただけだ」

そんな言い訳をしながら私は護に背を向ける。

心臓の鼓動音がハッキリと聞こえてくる。

心が、暖かい毛布にくるまれている感じ。

ただ絆創膏を誰かに貼られただけなのに、どうしてこんなにも私は暖かい気持ちになるのだろうか。

「そっか、なら心配ないか」

背中からそんな明るい声が聞こえてくる。

涙を拭き終え、私は護に向き直った。

「因みに、その絆創膏に描いてあるキャラはゴマ太郎ってんだぞ?」

得意げな顔で子アザラシの名前を教えてくる護。

私は小さくどうでもいい、と呟いた。

すると護はむ、とした表情で私を見つめてくる。

どうやら今の私の呟きが気に食わなかったらしい。

「ライトは少しくらいアニメとかに興味を持つべきだ」

「アニメとか興味ないよ」

そう言うと、護は残念そうにうつむいた。

が、すぐに顔を上げ私に視線を向けてくる。

そしてニコリと微笑みながら――

「んじゃ、火野川達のとこに戻るか。だいぶ遅れちまってるしな」

と、私に手を差し伸べてきた。

当たり前の事のように。

正直困る、こんな事をされても。

さっきもさりげに言われてたけど。

私は護から視線を逸らす。

「……私なんかが戻ってどうするんだ」

コイツはお人好しだから私が置き去りにした事は気にしていないようだけど。

けど愛花やその他の連中は違うはずだ。

きっと私の事を最低な奴と認識しているだろう。

特にあのスマイル女に関しては。

「もしかして、気にしてるのか?」

「当たり前だろ、私はお前らを置き去りにしたんだぞ。そんな奴がノコノコ戻ってどんな顔すれば良いってんだ」

アイツらだって私なんかが戻ったら嫌な顔をするだろう。

まぁ、そんな顔今まで生きてきた中で何どもされてるから気にならないけど。

「あぁ、その事についてなら大丈夫だ」

「――はぁ?」

予想外の言葉に私はそんな声を上げる。

「一応お前を探時に火野川達に許可はとってあるからな。許可したって事は怒ってないって事だろ?」

コイツはどこか人間として抜けている所があるのかもしれない。

探すのを許可したから怒ってない、という結論にすぐに至るのはおかしいだろう。

が、そんな私に構わず護は勝手に私の手を掴んだ。

そしてそのまま強制的に歩き出す。

「お、おい! 誰も戻るとは言ってないだろ!!」

「お前にはどっちにしろ戻ってもらわないと困るんだよ」

「どうしてだ! 私は関係ないだろ!!」

「だってライトがアイネに騎士団に連絡しろって言ったんじゃないか。なのに頼んだ本人が居なかったらアイネが心配するだろ」

そう言われては反論出来ない。

アイネに騎士団に連絡しろと言ったのは確かに私だからだ。

と言うか、アイネと別れてからかれこれ一時間近くは経過している。

そろそろ連絡があってもいい頃だろうに。

そんな事を考えながら私は護に引っ張られ、愛花達の元に戻る事になった。



/続く




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