第二章 友達の絆 127 | Beyond Despair

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「傷口からばい菌が入ったら大変だぞ」

そう子供を甘やかすかのような口調で護は言いながら、私の左頬に絆創膏をぺタっと貼り付けた。

私はもう一度左頬を手で触ってみた。

傷口があったはずの所に貼られた絆創膏の感触。

何でだろう、胸が締め付けられる感覚だ。

とても苦しくて、でも……。

どこか嬉しくて、暖かくて……。

……涙が……出そうになる。

視界がボヤけて、大粒の涙が頬を伝って地面に落ちる。

私はハッとなり、うつむきながら涙を拭った。

「ライト?」

「……目にゴミが入っただけだ」

そんな言い訳をしながら私は護に背を向ける。

心臓の鼓動音がハッキリと聞こえてくる。

心が、暖かい毛布にくるまれている感じ。

ただ絆創膏を誰かに貼られただけなのに、どうしてこんなにも私は暖かい気持ちになるのだろうか。

「そっか、なら心配ないか」

背中からそんな明るい声が聞こえてくる。

涙を拭き終え、私は護に向き直った。

「因みに、その絆創膏に描いてあるキャラはゴマ太郎ってんだぞ?」

得意げな顔で子アザラシの名前を教えてくる護。

私は小さくどうでもいい、と呟いた。

すると護はむ、とした表情で私を見つめてくる。

どうやら今の私の呟きが気に食わなかったらしい。

「ライトは少しくらいアニメとかに興味を持つべきだ」

「アニメとか興味ないよ」

そう言うと、護は残念そうにうつむいた。

が、すぐに顔を上げ私に視線を向けてくる。

そしてニコリと微笑みながら――

「んじゃ、火野川達のとこに戻るか。だいぶ遅れちまってるしな」

と、私に手を差し伸べてきた。

当たり前の事のように。

正直困る、こんな事をされても。

さっきもさりげに言われてたけど。

私は護から視線を逸らす。

「……私なんかが戻ってどうするんだ」

コイツはお人好しだから私が置き去りにした事は気にしていないようだけど。

けど愛花やその他の連中は違うはずだ。

きっと私の事を最低な奴と認識しているだろう。

特にあのスマイル女に関しては。

「もしかして、気にしてるのか?」

「当たり前だろ、私はお前らを置き去りにしたんだぞ。そんな奴がノコノコ戻ってどんな顔すれば良いってんだ」

アイツらだって私なんかが戻ったら嫌な顔をするだろう。

まぁ、そんな顔今まで生きてきた中で何どもされてるから気にならないけど。

「あぁ、その事についてなら大丈夫だ」

「――はぁ?」

予想外の言葉に私はそんな声を上げる。

「一応お前を探時に火野川達に許可はとってあるからな。許可したって事は怒ってないって事だろ?」

コイツはどこか人間として抜けている所があるのかもしれない。

探すのを許可したから怒ってない、という結論にすぐに至るのはおかしいだろう。

が、そんな私に構わず護は勝手に私の手を掴んだ。

そしてそのまま強制的に歩き出す。

「お、おい! 誰も戻るとは言ってないだろ!!」

「お前にはどっちにしろ戻ってもらわないと困るんだよ」

「どうしてだ! 私は関係ないだろ!!」

「だってライトがアイネに騎士団に連絡しろって言ったんじゃないか。なのに頼んだ本人が居なかったらアイネが心配するだろ」

そう言われては反論出来ない。

アイネに騎士団に連絡しろと言ったのは確かに私だからだ。

と言うか、アイネと別れてからかれこれ一時間近くは経過している。

そろそろ連絡があってもいい頃だろうに。

そんな事を考えながら私は護に引っ張られ、愛花達の元に戻る事になった。



/続く




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