「今すぐこんな事やめろッ! ただでさえ誘拐事件に巻き込まれたってのにこんなのうんざりだッ!!」
精神的に参っているのか、護は顔を歪ませている。
しかし、そんな護に構わず愛花は私目掛けて今度は四発連続で魔弾を放ってきた。
きっと護だけじゃなく、周りの奴らの声すらも今の彼女には聞こえていないだろう。
それくらい、火野川愛花は狂っている。
向かってくる魔弾を同じように私は弾き返す。
が、今回のは少しばかり重かったように感じた。
力が増しているのだろうか。
「……悪いな、神崎護。この世界はお前が理想とするほど……優しく出来ちゃいないんだよ」
きっとコイツは私を連れ戻せば皆が暖かく迎えてくれる、そんな理想を抱いていたのだろう。
けど現実は違う、結果的に今こうして私の身勝手な行動で凛とたくましかった火野川愛花が狂ってしまったのだから。
すると護はその場に崩れるようにしゃがみこんでしまった。
私はそんな彼をしばらく見つめた後に目の前の愛花に向き直る。
愛花は息を切らしながら、魔弾を何ども装填する。
「アンタみたいな身勝手で自己中な女に私の何が分かるってのよッ! 自分ばっかり被害者ぶってんじゃないわよアンタァ!!!」
狂う愛花を見つめるエレナ達は信じられない表情をしていた。
きっとアイツらもこんな愛花を見るのは初めてなのだろう。
私は槍の尖端を愛花に突きつける。
殺す気は一ミリもこっちには無い、けど私もコイツのさっきからの言動には癇に触るものがある。
だから、全治一週間程度の傷を負わせるだけで良いだろう。
と、そう頭の中で計算しながら私は愛花の左肩に目掛けて槍を投げ付けた。
が、そんな私の計算はあっという間に砕かれる事になってしまった。
「――ᛏ!!」
その呪文が聞こえた瞬間、投げつけた槍が跡形もなく粉砕したのだ。
「――なッ!」
私は思わず絶句する。
正直なめてた、魔術ってもんを。
今まで身近に魔術を使える奴はアイネしかいなかったから、ホントの魔術と言うのがどういうものなのか私は知らなかったのだ。
アイツはまだ魔術師としては半人前だ。
けど無意識に私はアイネを基準に魔術という物を考えていた。
それがアダとなって出たのだろうか。
/続く