Beyond Despair -9ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

全てを諦め、両目を閉じるライトを愛花はじっと見つめる。

しかし愛花の身体は何故か震えていた。

二人を見つめる護も愛花が魔弾をライトに目掛け撃ち込めばすぐにでも身体で彼女を庇うだろう。

それくらいの予想は愛花には出来ている。

しかし、愛花が今身体を震わせているのはもっと他の理由からだった。

(何よ……私になら殺されても良いって。何でそんな事で今までの努力を諦められるのよ……)

自身の姉と同じ類の人間、だからこそ愛花はライトが許せない。

身勝手で他人を巻き込む人間を火野川愛花は嫌っている。

ライトもその類の人間、なのだと彼女は思っていた。

しかし――。

(身勝手なクセに、どうしてそんなにあっさり諦められるのよ……)

もっと抵抗してこないと、愛花の行動には何の意味も無いのだ。

もっと自分の身勝手さを棚に上げてもらわないと意味がない。

が、目の前にいるライト・クライスはそのような行動は一切しなかったのだ。

ただ愛花が放つ魔弾を弾くだけで。

反撃らしい事もさっきの一撃だけ、しかしそれも愛花を傷つける為ではなく愛花を止めようとしての一撃だ。

(これじゃ……私の方が……)

ライトに向けていた右手を愛花は静かに降ろす。

(私の方が……身勝手な人間じゃない……)

自分の行動に愛花は激しく後悔する。

ただ自分の一方的な感情に任せていたようなものだと。

と、そんな時……背中の方から何やらオルゴールらしき音楽が聞こえてくる。

駐車場にいる誰もが音のする方へと顔を向けた。

そこには、右腕が切り落とされたトンガリ頭の男が佇んでいた。

男の脳天には一本のナイフが綺麗に刺さっている。

そして左手には何やら小さなオルゴール。

「いい音だろコレ? 人間もたまにゃー良い物作りやがる」

脳天に突き刺さるナイフを引き抜く男。

そして手に持つオルゴールに愛おしそううに頬擦りする。

そんな男を護とライトは睨みつけていた。



/続く




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「――カッ、あ……ッ!!」

声が出せない程の腹部の痛みに目眩さえ起こす。

「ライトッ!」

そんな耳慣れた呼び声がどこからか聞こてくる。

けど声のした方に顔を向けられる程の気力は残っていない。

私は腹を抱えながら目の前に佇む愛花を見つめる。

愛花は相変わらずコチラを冷徹な視線で見つめてくる。

「もう終わり? 悪魔さん」

凛とした声で口を開く愛花。

そしてゆっくりと私の方へと近づいてくる。

目の前まで来ると、愛花は私に向けて右腕を向けてきた。

まるで殺す相手に銃口を向けるかのように。

「意外ね、もう抵抗してこないんだ」

私はその言葉に何も答えず、うつむいた。

すると、コチラに走ってくる足音が聞こえてくる。

「やめろ火野川ッ! いい加減にしろよ!!!」

声のする方に視線を向けると、そこには愛花を睨みつける護の姿。

「邪魔しないで護、アンタだってこの子のした事は許せないって言ってたでしょ」

「そうだけど、それでも少しくらいコイツの話を聞いてやろうとは思わないのかよッ!?」

ホント、コイツはお人好しで大馬鹿者だ……。

何で、こんな私なんかを必死に庇うんだろうか。

相手が愛花なのに……。そんな事したら今まで仲が良かったのに絶縁になってもおかしくないのに。

「何でアンタはそうまでしてこの子を庇うの? まだ一日二日の付き合いだってのに」

「庇うのは当たり前だろうが! コイツは俺達の仲間なんだぞ!!」

その護の言葉に愛花だけでなくエレナ達までも固まってしまう。

「……アンタってちょっと度が過ぎたお人好しよね。いいえ、ハッキリ言ってバカよ。この子は私達を置き去りにしたのよ? 裏切ったとも言える事をしたのよ? まぁ、あの時は別に魔術でどうにかなるからそこまで気にはしてなかったけどさ」

「それでも、コイツは仲間なんだよ。だから――」

「もう良いよ、護」

「――え?」

護は驚いた表情で私に顔を向ける。

そう言えば、コイツを護って名前だけで呼んだのは初めてだっけ。

「そこの魔術師の言う通り、私は最低で自分勝手な人間なんだ。……自分でも分かってたし、ここに戻ればこうなるって事は大体予想出来てた事なんだ。さっきも言ったろ? この世界はお前が理想とするほど優しく出来てないってさ」

顔を向ける護に無意識に微笑みかけてしまう。

そして私は右手を向けてきている愛花に顔を向けた。

「――私はお前が羨ましい」

「――どういう意味よ、それ」

「言葉通りの意味だよ。〝キョウダイ〟の事でそこまで苛立つ事が出来るなんてさ」

今の私にはどう足掻いても戻ってこない物だから。

「……何よ、それ。言っとくけど、そんな同情を誘ったって無駄だからね! わ、私はアンタを本気で殺そうと思ってるんだから! そう、そうよ予行練習、姉貴を殺す為の予行練習なのよアンタを殺す事は!!」

さっきとは一変し、どこか慌ただしい態度をしている愛花。

そして、何故かコチラに向けられる右手が震えていた。

私としては――。

「私は、お前に殺されるなら構わない」

「――ッ!!」

その言葉に驚いたのか愛花は目を大きく見開いて私を見つめる。

本気で言ってる? とでも言いたそうな表情だ。

勿論、私は本気だ。

だって、それ程の事をコイツにしてしまったのだから。

まぁ、諦めが早いと言われたら反論出来ないけど。

それでも、心のどこかで私は――。

彼女になら殺されても仕方ないと、思ってしまうのだ。

「随分あっさりしてるのね……。さっきはあんなに抵抗してたくせに。今だってその気になれば抗えるでしょ」

「あぁ……けどもういいよ。なんだか、いろいろと疲れた」

ライアンには申し訳がたたないな。

けどさ、許して欲しい……こんな私を。

これ以上、こんな生き方してられないよ。

もっと早く気づくべきだったけどさ。

そして、もっと早く見つけれたら良かった。

簡単で、見つけるのが難しい私の答えって奴を……。



/続く




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と、愛花は魔方陣の中心に膝を着いた。

そして両手を地面に押し当てる。

「――Conceive(宿す) flame() is() my(我が) hands(両手なり)――

彼女のその静かな呟きが聞こえると同時に、愛花の両手が激しく炎の渦に巻かれた。

そして炎の渦に巻かれる両手で自身の両足を掴む。

「――Our(宿す) feet() carry() the(我が) flame(両足なり)――」

轟、と火花を散らしながら今度は両足に炎の渦が巻かれる。

まるで炎の手袋とブーツのように見える愛花のそれは間違いなく魔術により作り出されたものだろう。

愛花は着いていた膝を上げ、ゆっくりと私に顔を向けてくる。

そしてしばらくの沈黙が流れた後――。

愛花の足元に広がる魔方陣が消え失せたと同時に、彼女は私に今まで通り魔弾を放ってきた。

私は瞬間的に作り出した短剣でそれを弾き返す。が、その隙突き愛花は私との間合いを一気に詰めてきたのだ。

愛花は炎に巻かれる右足で私の首を目掛け回し蹴りを叩き込んでくる。

「――グッ!!」

私はギリギリの所でそれをかわし、愛花から距離を取るため後ずさる。

息が荒くなる。

今の愛花の行動も予想外だった。

アイツはさっきまで魔弾をバンバンデタラメに撃ち込んでくるだけだったから、てっきり遠距離攻撃しかしてこないと思ったからだ。

が、あの両手と両足の炎は愛花の接近戦専用の魔術なのだろう。

しかもタチが悪い事にあれに触れれば恐らく火傷じゃ済まされない。

現にアイツの回し蹴りをかわす時に微かに髪が焼けた。

「今のかわせば終わりと思わないでよッ!!」

と、息を整える私に今度は魔弾を放ってくる。

「チッ!」

舌打ちをしながら私は魔弾を弾く。

が、またしても愛花がその隙を突いて間合いを詰めてくる。 

これじゃ同じことの繰り返しだ。

私は右手に持つ短剣を左手で握り、もう一本同種の短剣を作り出す。

そして両剣を逆手に持ち替え、詰め寄ってくる愛花にダッシュする。

愛花はそんな私に今度はストレートを叩き込もうと右腕を伸ばしてくる。

そんな愛花の右腕を私はクルリとかわし、そのまま彼女の右腕に短剣を振り下ろす。

少々手荒いが、こうでもしないとコイツは大人しくならないだろう。

が、降りおろす短剣を愛花は素早く左手で弾き返してきたのだ。

カキン、と鉄と鉄がぶつかり合うかのような音が響きわたる。

今のはなんだ、どうして弾かれた?

と、動揺している私の腹部に愛花は容赦なく膝蹴りを叩き込んできた。

私はそのまま吹き飛ばされ、壁に激突する。



/続く




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