「お前らが自滅するのを望んでたんだが、どうやら意味がねーみてぇだ。残念だぜ赤毛犬、テメーの復讐物語もここで幕切れか」
そう残念そうに男は呟くと同時に、手に持った蛇腹剣がライトと愛花の二人を貫かんと急速に伸びる。
そして、伸びる剣の尖端部分がライトの背中を貫こうとした瞬間――。
「――ᛢ――」
男の手元から伸びた剣が、綺麗に粉々に粉砕した。
予想外の事に男は目を大きく見開く。
その隙を突き、愛花はライトの傷口に右手を添える。
すると徐々に添えた彼女の右手が緑色に輝き出した。
と、ノコギリの様に削られたライトの肩の傷が見る見る塞がっていく。
「……愛花、お前」
「ごめんね、ライト。私の方が、最低の人間よね」
悔しさのあまり、涙を流す愛花をエレナと護はじっと見つめる。
「アンタの苦しみも聞こうともしないで、ただ自分勝手な事をして」
ライトの傷口に愛花は魔力を集中させる。
「私と比べらば、アンタの方がもっと苦しんできたのに……!」
愛花の流す涙の一粒がライトの頬に静かに落ちる。
「つまんねーつまんねーぞお前らぁッ!!!」
そんな怒鳴り声が聞こえてくる。
と、粉砕した筈の男の蛇腹剣はいつの間にか再生していた。
そして治療に集中する愛花目掛け、再度剣を蛇の様に伸ばす。
(ダメ、今ここで防御魔術を使ったら……ッ!!)
それでも向かってくる刃は止まらない。
先と同じように、男はライトと愛花を貫かんと剣を伸ばしてくる。
が、伸びて来ていた筈の男の蛇腹剣は途中の所でヘナヘナと崩れる様に落ちてしまった。
愛花は視線を男に向けると、そこにはさっきまで側で自分達を見守っていた神崎護の姿。
護は蛇腹剣が愛花達を貫く前に男を殴り飛ばしたのだ。
男は物凄い勢いで壁に激突する。
「護、さん……?」
エレナは男を殴り飛ばした護の背中を呆然と見つめる。
それは愛花、極道、坂口も同じだった。
「テメー……いい度胸してんな坊主。魔力すらねークセにヒーロー気取りか?」
男は殺意混じりの視線を護に向ける。
しかし護はそんな声に恐る事なく、堂々と男に対峙した。
「ヒーローになんかなろうって思った事はねぇーよ。俺みたいな奴がなれるとも思えねーしな」
けどな、と護は力強く拳を握りしめる。
「仲間は何があっても護るってガキの頃に誓ってんだよ」
護はうつむきながら歯を食いしばる。
「俺は魔力がねーから、周りから避けられてた。今の世の中魔術が使えて当たり前の世界だからな。けど、そうじゃねー奴は周りから省かれるんだよ、虫けらみたいにさ」
ライトは自らの事を話す護に顔を向ける。
そして、彼女は神崎護という男子生徒の事を少しばかり理解したのだ。
何故自分をあそこまで庇うのか、助けようとするのか。
それは――。
「だけど、ここに来てようやく出来たんだよ。心から〝仲間〟って思える奴らがさ。最近また一人、赤毛犬って奴が増えたけどな」
護が今までどのような生活をしていたのかライトは知らない。
だけど、今の護の言葉で大体の予想はつく。
(アイツも、孤独だったのか……?)
だからこそ、護という人間は仲間を裏心なく大切に思っているのだ。
/続く