第二章 友達の絆 136 | Beyond Despair

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「お前……なんで、生きてんだ……」

震えた声で護は男に問う。

しかし男は護の問いに答えず、真っ直ぐ愛花を見つめてきた。

「お嬢ちゃん、アンタは実に人間らしい。弱者をことごとく叩きのめすその姿、良いねぇ~クールだねぇ~ヒヒヒ」

ゲラゲラ笑う男の声が響きわたる。

愛花は目の前の男の言葉に身体を震わせた。

「しかしまぁ~、こうして見るとお前ら二人似た者同士じゃねぇか? 身勝手な困ったちゃんの赤毛犬に、自分の感情一方通行なお嬢ちゃん」

「――違う、違う、私はそんなつもりじゃ……」

「ヒヒヒヒハハハハッ!! 良いねぇ、人間らしいぞお前ら!」

グリードの言葉に愛花は頭を抱える。

嫌な汗が頬から首に垂れる。

「違う、私はそんなつもりでライトを……」

愛花の脳内で、ライトに向けて言った言葉が再生される。

〝私がキレてるのはね、アンタがどうしようもなく自己中心的な女だからよ。自分の目的の為なら周りの人間が傷つこうが関係ない、そんな奴〟

自己中心的な――自分。

周りが傷つこうが関係ない――自分。

「違う、違う、違う、私はそんな人間じゃないッ!!」

頭を抱えながら叫ぶ愛花。

そんな愛花をゲラゲラ笑いながら見つめる男。

「結局は嬢ちゃんもそこの赤毛犬と変わらないんだよなぁ? ヒヒヒ、身勝手で、自分の感情に素直に従って? 何の反撃もしてこない赤い毛をしたワンちゃんをいたぶる人間」

「うるさい……うるさい、うるさいうるさいッ!!」

と、その時、男が流すオルゴールがピタリと止まる。

そしてジャラン、と鎖が落ちる音がした。

愛花は音のした方に視線を向ける、と――。

「――ッ!?」

どこから取り出したのか、男の手に握られている変わった形状をした剣が愛花目掛けて急速に伸びてきたのだ。

完全に油断して、かわすことが出来ない愛花を男は嘲笑う。

「安心しな、人間はそういう醜い生き物なんだからよぉ!!」

伸びる刃は既に愛花の目の前まで迫っていた。

恐らく首をごっそり斬り落とすつもりだろう。

そう分かっていても、愛花はかわす事が出来なかった。

愛花は迫る死の恐怖に震える事すら出来ずにただ呆然と立ち尽くす。

「火野川、逃げろッ!!!!」

既に護の声すらも彼女にとってはただのBGMでしかなかった。

(身体が……動かない)

伸びる刃は愛花の首を狩るためにグルリと円を描くように彼女に近づいていく。

そして、刃が愛花の首に触れそうになった瞬間――。

愛花の目の前に右肩から赤い血を噴水の様にまき散らすライトの姿があった。



/続く




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