Beyond Despair -7ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

誰もが表情を曇らせる。

〝逃げるなら、今だぜライト〟

そんな中、ライトの脳に直接悪魔の声が響いた。

〝こんな奴ら放っておいてさ、とっとと逃げろよ。でないとここで復讐劇は終わっちまうぜ?〟

「黙れ……私はもう、誰も見捨てない。私は――悪魔にはならない」

〝それは理想に過ぎない。いつか、苦しむ事になるぞ〟

冷め切った声で悪魔は呟く。

「言っただろ、私の復讐ってのは――人間として果たされないと意味がないって」

ライトは力強く悪魔に言い切る。

そんな彼女の言葉を聞いた悪魔は鼻で軽く笑うと――。

〝いい答えだ、だがまだアンタは勘違いしてる。その過ちを正さなければ、自身の心に食い殺される事になるぞ〟

と、笑いながら呟いた。

ふと、ライトは目の前の男に視線を向ける。

グリードは余裕の笑みを浮かべ蛇腹剣の刃をペロリと舐め上げた。

状況は絶体絶命と言えるものだ。

悪魔の言う通り、逃げたほうが得策なのは確かなのだろう。

しかしそれはライトにとっての得策であり、護達にとっての得策ではない。

勿論、一人で逃げるなんて言う選択肢は今のライトには存在していなかった。

「なるほどね、良いこと聞いたわ」

と、何を思ったのか愛花は口元を歪ませながら呟いた。

「愛花、さん?」

エレナはそんな愛花に視線を向ける。

「暗闇でなら無敵の身体。アーサー王物語に出てくる太陽の騎士とは対照的な存在ね」

愛花は地面に右手を押し当てる。

すると同時に彼女の手から青く輝く魔方陣が波の様に広がった。

「またしても悪あがきか? 無駄だって言ったろ嬢ちゃん、お前らの人生はここでエンドなんだよ」

「さぁ、エンドになるのはどっちかしらね」

地面に着く愛花の腕に再びマジックラインが引かれる。

と、愛花は左手も地面に押し当てると――。

第二(セカンド)因子(ファクター)起動(オンライン)()()

そう小さく呟いた。

同時に左腕にも右腕同様マジックラインが燃え上がる様に引かれる。

そして愛花は一瞬、深く深呼吸をすると上を見上げた。



/続く




にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!
 

「……やっぱりダメか」

舌打ちをしながらライトは呟く。

しかし彼女にはこの展開は予想できていた事だった。

男の脳天にナイフを突き刺したのは間違いない。

が、男はそれでも生きて、ここにノウノウと現れたのだ。

恐らく死んだ振りでもしていたのだろう。

しかし男、グリードは今や苛立ちが頂点に達しているのか死ぬ振りをする素振りすら見せない。

グリードは心臓部に刺さったナイフを引き抜くと、刃に付着した血を舐めとった。

「残念だったな赤毛犬。オレ様はこんなもんじゃ死なねェんだよ」

不死身の身体だからな、とグリードはゲラゲラ笑う。

そしてライトの槍に巻き付いた蛇腹剣を強引に引き戻した。

その衝撃でライトは槍から手を離してしまう。

ジャラン、と音をたてながらワイヤーの様に伸びた刃は持ち主の元へと戻っていく。

そして全ての刃が繋がった瞬間、グリードはエレナの方へと視線を向けた。

それに気づいたのか、エレナは身を震わせる。

「ククク……いいねぇその震え方。アンタみたいな嬢ちゃんを殺さなくちゃいけないと思うと少しばかり心が痛むぜ」

「……見ないで、こっちを見ないで……」

 弱々しい声でエレナは呟く。

「しかしまぁ、お前ら全員これで人生終了だな。オレ様は今ご覧いただいたよう、無敵の身体を持っている。お前らがいくら魔術やら悪魔の力を使おうが、この壁を超えることはできゃしねーんだよッ!!」

ふと、そのグリードの言葉にエレナの脳内である映像が流れ出す。

それはマンションの一室での出来事。

金紗の少女がグリードを軽くあしらった時、グリードは少女に言っていた言葉。

〝暗闇でなら、誰にも殺すことは出来ない〟

暗闇、ここナイトタウンはまさにそれに当たるのだ。

エリア全体が大きなドームに追われており、太陽の光が入る事は一切ない。

電気の明かりなどはあるものの、八割は暗闇で覆われている。

そんなこの街はグリードにとっては最高のテリトリーなのだ。

「ライトさん、愛花さんッ!! その人は暗闇ではどんな傷を受けても再生する特性を持ってるんです! だから殺すどころか、傷つける事すら出来ません!!!」

エレナは大声でその事をライト達に伝える。

「なるほど……、だからいくら急所を狙っても死なない訳か」

ライトは護を庇うように一歩グリードから後ずさる。

ここの駐車場にはいくつかの街灯が立っている。

しかし街灯が生み出す光などグリードにしてみれば無いも同然なのだ。



/続く



にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!  

やっと出来たから、だから手放したくないと。

だから必死にライトを庇ったり説得したりした。

エレナの時でも、彼は恐怖を顧みず必死に探していた。

「だから、俺みたいな奴を慕ってくれる奴を傷つける奴は……絶対に許さねぇッ!!!」

力強いその言葉に男は舌打ちをする。

ノソノソと立ち上がり、男も護と対峙した。

「けどよ、坊主……結局テメーにゃ何も出来ねーよ。そうだろ? この世は全て力なんだよ!」

男は両腕を翼の様に広げる。

「力がある者が生き残り、無い者は喰われる。弱肉強食、これまさしく人類の世界その物だろうが、アハハハッ!!!」

「それでもコイツらは俺を貶したりしないッ! そりゃ怒られる時もあるけど、それでも助けてくれる事もあるんだッ!」

護の反論に更に苛立ったのか男は眉間にシワを寄せる。

広げていた腕をダランと下げると、男は護に蛇腹剣を突きつけた。

「綺麗事ばっか並べんなよクソガキが。蹴落され、騙され、嘲笑われ、横取りされ、蹂躙され、無念に散った〝オレ達〟の気持ちが分かるかぁ!?」

男の叫びにエレナはビクっと身体を震わせる。

しかし護はそんな男の叫びにも動じない。

「分かりたくても、俺はお前らがどんな奴らなのか知らない。だけど、そうやって 恨めば、憎めば、殺せば満足するのか、お前らアヴェンジャーってのはッ!?」

その言葉に痺れを切らしたのか、男は護に蛇腹剣の刃を伸ばす。

男と護の距離はそこまで開いておらず、すぐにでも護の首を斬り落とせるだろう。

「――ライト、お願いッ!」

と、愛花のその声で傷口が完治したと分かったライトは人とは思えない速さで護に駆け寄る。

そして護を飛び越え、彼に迫る蛇腹剣に即座に作り出した槍を空中で投げ付けた。

伸びた刃はライトの投げ付けた槍に円を描く様に巻き付く。

そしてライトは地面に突き刺さる槍の側に着地した。

槍を左手で掴み、ライトは目の前の男を睨みつける。

「……テメーッ!!」

ギリっと歯を鳴らすグリード。

しかしライトは何も言わず、右腕に力を込めた。

すると彼女の右腕を黒い渦が被うと同時に、右手に男の脳天に刺さっていた物と同種のナイフが握られる。

それをライトは素早く勢いを付けて男の心臓部に投げ付けた。

ナイフは深々と男の心臓部に突き刺さる。

が、男は顔色一つ変えずにただライトをじっと睨みつけていた。



/続く




にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!