愛花は長い髪をサラっと靡かせながら私を庇う護に殺意混じりの視線を向ける。
「だから? 罪悪感を感じてたから何なのよ?」
「――な、んだと」
「そんなの知らないし、その子が身勝手って事に変わりないじゃない」
愛花の右腕にまた光が集まり始める。
魔力を注いでいるのだろうか。
「って言うか、アンタは何でその子を庇うの? アンタだって昨日、この子のせいでへこまされたじゃない。アンタに気遣いすらせず、ただ自分の目的の為だけにアヴェンジャーを殺し尽くした、違う?」
視線で愛花が私に問いかけてくる。
その問いには否定出来なかった。
愛花の言う通り、昨日私は傍にいる護の事なんて考えてもいなかった。
コイツが吐こうがトラウマになろうが、そんなのどうでもいいと思っていたから。
一応は謝ったけど、それでも無かった事には出来ない。
私は愛花から庇う護を押しのけゆっくりと立ち上がる。
そして彼女に向き直った。
互いが互いを殺すかのように睨み合う。
「お前、言ったよな、私みたいな自己中心的人間は大嫌いだって」
「えぇ、そうよ。私の姉さんみたいに自分勝手な人間は大嫌い」
「姉さん、か。ところで一つ聞きたいんだが、そのお前の姉さんとやらはどういった奴だったんだ?」
私がそう問いかけると、愛花は怒りに震えるかのように身体をプルプルさせる。
そしてギリ、と歯を鳴らした。
それほどまでに姉に対しての恨みがあるのか、今までの愛花からは想像出来ない変わりようだ。
「……あの女はねぇ……自分の遊びの為に家族を潰したのよッ!!」
「遊びの為?」
怒り狂う愛花の声が駐車場に響きわたる。
「私の父さんは私がまだ幼い頃に病死して、それからは母さんが女手一つで私と姉さんを育ててくれた。私はそんな母さんに少しでも喜んで欲しくて頑張って勉強したわ。初めはダメダメだったけど、それでも日々の努力が報われてきて、中学の頃には大人で初めて習得できる魔術を使えるようになった」
と、愛花の声が徐々に低くなる。
そしてコチラに向けられていた右腕をダラリと降ろすと、何かに絶望するかのようにうつむいた。
「……初めは姉さんも頑張ってた。母さんにはいろいろと大変な思いをさせてるから、一緒に頑張ろいうなって。……なのに、あの人は、私は中学二年の時には人が変わったみたいになってしまったの」
両拳を力強く握りしめる。
いつしか、彼女は涙声になっていた。
とても辛そうに、顔を歪めながら。
「母さんが働いて稼いだお金を、いつからか自分の遊びに使うようになった。毎日毎日、母さんから奪う様に……。しかも一番タチが悪いのが、私が学校に行ってる間に母さんから金を奪ってるってとこ。私がいたら邪魔されると思ったのかしらね」
自分を馬鹿にするかのように愛花は笑う。
「それでトドメは、一番最悪な展開だった。私が学校から帰ったら、母さんが倒れてたのよね。命に別状はなかったけど、医者の話じゃショック死寸前までいってたって」
と、愛花は下げた右腕を再び私の方へと向けてくる。
握られていた拳をゆっくり開くと同時に、彼女の右腕に絡む様に赤く輝くマジックラインが燃えるかのように引かれた。
/続く