「けど、そう思っちまうのはまだアンタが人間ってのに焦がれてるからだ。俺様と契約した時点でそんな甘い思いなんざ殺さなくちゃいけねーってのによ」
悪魔がそう言った瞬間、突然腹部に激しい痛みが走る。
「あ、ぐッ!」
誰かに力強く蹴られた感覚。
恐らく、目の前の悪魔が蹴りつけてきたのだろう。
私は腹部を両腕で抑えながら悪魔を見上げる。
暗いせいか、よく直視する事が出来ない。
が、コイツが今私を見下ろし嘲笑っている事は理解出来た。
「良いか女、テメーはもう普通の人間としては生きられねーんだ。なのにちょっとアイツらの友情を見ただけで心が揺らいじまうのは困るんだよなぁ?」
と、悪魔が私に顔を近づけてくる。
私は悪魔から視線を背けた。
「揺らいでなんて、ない……」
震えた声で私は悪魔の言葉を否定する。
そんな私の否定を悪魔はまたゲラゲラと嘲笑った。
ゾロリ、と頬を舐め上げられる。
気持ちの悪い感覚に身体が震える。
「あながちあの護が言ってたのも間違ってねーかもな、なぁ? 〝強がりライト〟」
やめろ、やめろ!
「ヒヒヒヒ! 口ではデカい事言ってるけど心が弱っちーもんなアンタはさぁ!!」
弱くない、弱くない、違う、違う!
「良いか、しょせん人間なんて生き物は騙し合いの生き物だろうがッ! そんな生き物に焦がれてどーすんだよッ!!」
黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッ!!!!!!
「黙れッ!!!!」
心で思っていた言葉が口に出る。
そして、私は無意識に刻印が刻まれた右腕に噛み付いていた。
その瞬間、目の前に居た悪魔が渦を巻きながら消滅する。
それでも私は口を離さない。
ギリ、と音をたてながら柔らかい肌に歯を食い込ませる。
口の中に鉄の味が広がるのが分かる、恐らく血が出ているのだろう。
私はしばらくしてからやっと口を離した。
右腕からは血がダランと地面に下だり落ち、赤い水溜まりを作っている。
けど、仕方ない。
これ以上、悪魔の言葉を聞いていたら頭がおかしくなりそうだ。
/続く