昨年、
長崎浦上第一病院(現聖フランシスコ病院)医長だった秋月辰一郎 先生の著書『死の同心円-長崎被爆医師の記録』(絶版)にある、先生の原爆体験が話題になりましたよね。
爆心地から1.8kmの距離にありながら、浦上第一病院で働いていた人たちに原爆症の症状が出なかったのは、みそ汁と塩濃いめの玄米おむすびのおかげだった…という話。
そのネタ元になったのは、ホリスティック医学研究所所長の大塚晃志郎 さんのブログ、『大塚晃志郎の、経営者とその家族のための健康管理と自然治癒力を生かした「命もうけ」の知恵』でした。
初出は2005年8月16日の『原爆で被爆しても原爆症が出なかった人たち―3』 でしたが、今回の福島原発事故を受けて、『緊急重要メッセージ!原発事故による放射能汚染から、身を守る可能性を高めるために、すぐにできることを実行しよう!』 として、3月15日に改めてアップされました。
東洋医学的にみると、味噌も塩も、四気 は寒涼性、五味 は鹹味(塩からい味)で、帰経 は主として腎 。そのため、余分な熱をさまして解毒し、硬いものをやわらかくして、生命の源となる精 を強くします。
そう、熱を伴う毒を排泄するワケですから、言葉を変えれば、やけどのような症状を呈する放射線障害にも良さそうな気がしませんか? 硬いものをやわらかくする、すなわち腫瘍のような塊を溶かす。さらに、生命力を増すとなれば、秋月先生の被曝者への食養生は、東洋医学的には理にかなっていたと言えそうですね。
現代医学的・栄養学的には、どうなんでしょうか? その答えを探していたら、kaolune さんの「被曝対策~味噌編」 という記事に行きあいました。まずはkaoluneさんの記事と、その中でリンクされているmiriさんの記事をお読みくださいませ。
彼女たちが取り上げていたのは、秋月先生のおみそ汁の効用。なるほど、味噌がミソだとすれば、栄養学的にも説明がつきます。詳しくはmiriさんの記事でどうぞ。
で、味噌の放射線防御効果については、ちゃんと論文があります。それは、こちら↓。広島大学原爆放射能医科学研究所教授の渡邊敦光先生の論文です。
Radioprotective effects of miso (fermented soy bean paste) against radiation in B6C3F1 mice: increased small intestinal crypt survival, crypt lengths and prolongation of average time to death、Hiroshima J Med Sci. 2001 Dec;50(4):83-6. (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11833659 )
長いタイトルを訳すと、『B6C3F1マウスにおける放射線に対する味噌の放射線防御効果:増加した小腸陰窩の残存と陰窩長と平均寿命の延長』となります。
この論文の日本語版はないみたいなんだけど、渡邊先生が書かれた『発酵食品並びに成長因子を用いた放射線障害の防御作用の開発』 (PDF)というレポートがありました。この中に、上記の論文の内容があります。
このレポート、URLが長いのでタイトルにリンクを貼ってしまいましたが、そのURLからIAEA (国際原子力機関)のアーカイブに入ってるんだってことがわかりました~。つまり、IAEAも注目する論文ってことね。
実験に使った味噌は、
① 赤辛口米みそ: 発酵前期(仕込み後2~3日)、発酵中期(120日)、完熟(180日)の3種
② 淡色辛口米みそ: 非熟成(仕込み後10日)、熟成初期(60日)、熟成後期(90日)、過熟成(180日)の4種
凍結乾燥したお味噌を餌に10%分混ぜて、放射線(γ線・X線)照射の1週間前から与え、普通の餌を食べたマウスと比較検討した結果、生存率が、味噌入り>普通の餌であり、完熟味噌>熟成の短い味噌だったとのこと。
でね、渡邊先生がなぜ味噌に注目したのか、そこんところを知りたくて、あれこれ検索していたら、去年の広島大学・県立広島大学連携シンポジウムの市民公開講座、『考えよう!食と健康』 の資料がみつかりました。
渡邊先生は、『お味噌と健康』と題して話されていて、その中で、「長崎の被爆医師秋月辰一郎の『体質と食物』で味噌を食べていたことにより原爆症が発症しなかったと言う記述があり、我々の研究が始まった。」っておっしゃってるの。
あぁ、やっぱり秋月先生が発端だったんですねぇ。秋月先生については、西日本新聞の『爆心の丘の「五七五」』 とか、長崎新聞の『反核に生きて』 などで特集されています。
渡邊先生の『お味噌と健康』に戻ると、「味噌による放射線防御作用は、製造した地域ではなく、熟成期間が重要」とのことなので、もし被曝対策として1日1杯おみそ汁を飲むなら、完熟味噌がいいってことですね。
そして、お味噌の塩分を心配する必要はないみたい。塩とお味噌の塩分とは作用が違うようです。ラットの餌に食塩と味噌とをそれぞれ混ぜて与えると、胃癌の発生率が食塩>味噌になったそうです。血圧の実験でも同様だとか。
渡邊先生は、『お味噌と健康』の最後を次のように結ばれています。
「味噌汁はまさに「御」が三つ重なる「御御御汁(おみおつけ)」であり、日本人の健康維持のためには忘れてはならない素晴らしい食材で、「健康食品」でもある。「たかが味噌、されど味噌」であろう。」
さて、塩むすびの塩よりも、味噌汁に効果があるってことは、放射線防御のカギになるのは、酵母による発酵にありそうですね。ってことは、他の発酵食品もいいんじゃない?
渡邊先生の『発酵食品並びに成長因子を用いた放射線障害の防御作用の開発』には、お味噌のほかに、ヨーグルトと霊芝(レイシ)が取り上げられてました。レイシはキノコですけどね。
ほかにも、放射線医学総合研究所の研究に、↓下記のようなものがありました。
『ビール成分に放射線防護効果を確認 法医研・東京理科大の研究チームがヒトの血液細胞とマウス実験で実証 放射線防護効果は最大34%にも』
『ミネラル含有熱処理酵母に放射線防護効果を確認、被ばく後投与でも 放医研・体質研究会の研究チームがマウス実験で実証 放射線被ばく障害の治療剤に展開』
『牛乳などに含まれるラクトフェリンに放射線防護効果を確認 被ばく障害の安価な予防薬、治療薬として有望』
前者ふたつはビール酵母であり、みっつめはラクトフェリン。味噌もヨーグルトも、いずれにしても、『もやしもん』 の世界の微生物たち。発酵の世界は深いなぁ…。
とはいえ、発酵食品がいくらからだによくても、それだけっていうのはいけません。やっぱり食事はバランスです。最大の防御は健康な身体。そのためには、バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動ですよ。
最後に、一連の検索の中で、こんなものもみつけちゃいました→Miso soup: Powerful antidote to radiation 。『Ethiopian Review」』の記事なんですけど、みそ汁の具にタマネギ、ピーマン、トマト、ガーリックなんか入れちゃうとこがとってもエスニック。海外でも注目されるミソ・スープってことで…。
一天一笑、今日も笑顔でいい1日にしましょう。