東洋医学講座 No.24 精と神 | 春月の『ちょこっと健康術』

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おはようございます ニコニコ


先週から、韓流ドラマファンのお客様お勧めの『太陽人 李済馬(イ・ジェマ)』のDVDを観ています。『宮廷女官チャングムの誓い』、『ホ・ジュン』にならぶ、医師の物語です。イ・ジェマは「韓国医学の父」と呼ばれる方だそうで、人の体質を太陽人・太陰人・少陽人・少陰人の4つに分けて、体質をベースに薬の処方を変えるという治療法を始めた人のようです。ドラマの面白さもあいまって、韓国医学にも興味津々です。


東洋医学講座も、先週で気血津液を終えて、今回精神についてお話しすると、東洋医学の基本の基、すなわち人体に対する考え方についての解説が終わります。次回からは、病気や症状のとらえ方、診断のしかたへと順次話を進めていきましょうね。


さて、「精神」と聞いたとき、みなさんは何を思い浮かべますか?「こころ」?「たましい」?「知性」あるいは「理性」?「意志」?「意識的なこころの動き」?そんなところでしょうか。いずれにしても目に見えるものではありませんね。和英辞書で調べてみると、spirit、mind、soul、will、a motive という言葉が当てはめられています。


東洋医学では、は別のものなんですが、「東洋医学講座 No.23 気血津液 その5 気血津液の関係」 気血津液がそうであったように、その関係はとても密接で、「より生まれ、によって生じ、の共同作業によってあらわれる」といわれます。のほうはこれまでもたびたび登場していますが、「東洋医学講座 No.9 五臓の生理 その2」 で「を蔵す」として出てきただけかもしれません。


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1 (せい)の種類と働き


には、先天の精後天の精があります。食事・呼吸・運動がきちんとできている人は、が盛んで、生命力が旺盛であり、身体も丈夫で気力も充実しています。は、精気ともいい、加齢や過労、房事過多などで消耗し、不足すると、身体が弱って病気にかかりやすくなり、老化が早まります。


① 先天の精

両親から授かった生命の素であり、身体を形づくる様々な器官や組織の素となります。「東洋医学講座 No.13 五臓の生理 その6」 にあったように、五臓のに貯蔵されて、発育・成長そして生殖に関わります。後天の精によって補充されて、生きている間に枯渇してしまうことはありません。先天の精に変化すると、元気原気)となって、生命活動の原動力となります。


② 後天の精

飲食物から得られる水穀の精微であり、脾胃でつくられます。先天の精を補充し、また、営気衛気宗気津液の基となります。


2 (しん)の種類と働き


は、生命活動を支配し統制するであり、神気ともいいます。思惟や意識、こころ、生命活動の正常な状態をあらわします。神気には、(しん)、(こん)、(はく)、(い)、(し)、(し)、(りょ)、(ち)などがあります。


① 

は、五臓のにおさまり、神気の最上位にあって、生命現象そのものでもあります。心拍や呼吸を適切に行わせ、視る・聴くなどの知覚や、思考・判断などの意識活動に働き、手足の運動・表情・言語表現などを正常に行わせます。が安定していれば心身ともに健康でいられますが、不安定になると知覚・思考・判断・運動機能の異常が起こり、失われれば死に至ります。


② 

が意識的な活動を支配するのに対し、は無意識的な活動を支配します。は、いわば「たましい」であり、眠っているときや高熱でうなされているとき、あるいは酔っぱらっているときなど、の支配が薄れると、夢想や幻覚などを引き起こします。五臓のにおさまり、人の本性を支えます。が弱ると自信を失い、傷害されると現実と非現実の境が識別できなくなります。


③ 

は、五臓のにおさまり、本能的な行動や習慣化した日常動作を起こさせたり、痛みやかゆみなどの感覚をもたらしたり、注意を集中させたりします。が衰えると、注意力が散漫となってもの覚えが悪くなり、皮膚感覚が鈍ります。傷害されると、自分勝手な振る舞いをしたり、日常的な言葉や動作を忘れたりします。


④ 

は、五臓のにおさまり、日本語の「思」や「覚」に当てはまるもので、単純な記憶や思考に関わります。が傷られると、思い悩み、こころが落ち着かなくなります。


⑤ 

は、五臓のにおさまり、目的を持って考え、思いを持続させるこころです。が傷られると、記憶の混濁や忘却が起こります。


⑥ 

とともに知的な思惟に関係し、は物事を工夫して考えるこころ、は先のことを思いめぐらして深く考えるこころ、は熟慮したうえで最善の判断を下すこころです。


以上のことからおわかりいただけるように、は五臓と密接なつながりを持つために、五臓の不調がひどければにも影響がおよびます。このように、東洋医学では、身体と精神は切り離して考えることはできません。精気が盛んであれば、神もしっかりとして、身体も健康でいられます。神を傷つけたり、精気の働きを妨げたりすると、身体の衰弱を招きます。


東洋医学的に考えれば、身体のケアで精神も落ち着き、精神をケアすることで身体の不調をととのえることもできるということになります。


今日もいい1日になりますように。そして、七夕ですから、晴れるといいですね。


春月の『ちょこっと健康術』-ユリ