奈良県上北山村の岩屋谷に謎の隧道がある。
この情報をどこで知ったのだったかもう記憶がないのだが、結構前のはず。6年くらいは経つだろうか。
白川又川支流・岩屋谷。そこは沢屋さんにとって、そして滝屋さんにとっても、非常に知られた谷である。ネットではこの谷の遡上記録と、遡上した先にある岩屋谷滝の訪問記が数多く出てくる。
が、こと隧道となると、そこに特化した訪問記はほぼ皆無。まさに、今回同行くださったペッカーさんのレポ、ただ一本じゃないかと思われる。例によって最後にリンクを貼らせていただく。
行ってきましたよ、その憧れの場所に!
いや、正直に申告しよう。連れてってもらった、かな。
引き続き前説。
わたくしかつて、その最下流に架かる岩屋谷橋を記事にしているんだが、
橋上から望む岩屋谷がこちら。ぱっと見、チョロそう?
遡上記録が数多く出てくるからと言って、そこが訪問しやすいイージーな谷なのかといえば、実態はその対極、遡るには、しっかりとした装備と技術と経験がなければお呼びでない(ド素人ながら、ちょっと遡上記事を見れば明らか)。この写真からはそう思えないかもだが。
従って、沢登りでなく滝の訪問が目的である場合には、別のルートが存在する。
見にくかろうが、一応地理院地図からの切り出しをご覧いただきたい。
中央やや北側を横切る岩屋谷と、その上流に「岩屋谷滝」が見える。東寄りには国道169号(赤線)。
滝へは、その国道の白川橋南側、白川トンネルそばにある水尻集落から稜線を直登し、675mピーク、926mピーク、小峠山(1099.9m)、1003mピークを経て1108mピーク付近より岩屋谷へと下降、というのが正攻法である。
岩屋谷滝は下流側の雌滝と上流側の雄滝とがあり、実際のところ完全に別の滝なので、下降ルートは少し異なるようだ。
とは言え、下降ルートはおろか上記のルート全て点線道表記さえもないってところでお察し…(笑)。「一般向け」からは程遠いってことだ。ちなみに、地理院地図で「岩屋谷滝」と記載されている位置が雄滝にあたる。
で、件の「謎の隧道」は、その岩屋谷滝・雄滝のさらに上流側にあるという。
うむむ…。
ネットで見られるこの「水尻ルート」の先人たちの記録を見ていると、もう完全にガチ登山。遭難寸前のような危ない話も頻出…てな具合で、いかにもハードルが高い。
いやちょっとこれはなあ…とか考えてる間に、自らがガチ遭難の失態をやらかしたりもして、なおさら腰が引けまくり。ここはもう無理っぽいなと、少なくとも単独では絶対に行かない(行けない)、と考えていた。
2020年9月(訪問は2019年12月)、ペッカーさんがおそらく業界初の隧道訪問レポートをアップされ、そこで初めて詳細な姿を目にすることができた。そしてその記事で初めて知ったのが、ここ数年で開拓されたとおぼしき、氏が使われた「第三のルート」。
それは、上の地理院地図左下。「不動七重滝」(これまた凄まじい滝で、一見の価値は十分以上にあり)を過ぎ、「前鬼川」という表記の東側にある、北側から前鬼川に流入する沢を入口とするショートカット・ルートだ。岩屋谷滝への往復にここを使えば、距離・時間共に短縮できるという素敵なルートだという。が…
記事で見たそれは、決して「素敵」ではなかった(笑)。
いや、むしろ…。
そして今年の9月ごろだったか、ペッカーさんより連絡をいただいた。「ゆたさんとそろそろ岩屋谷に再訪しようとなりましたが、一緒にどうですか?」と。
なんという願ってもない話!ペッカーさんだけでなくゆたさんもご一緒だなんて。こんなに心強いことはない。
すでに当地を訪問済み、かつガチ探索のスペシャリストのお二人にくっついて行ければ、わたくしでもなんとかなるはずだ…ついて行ければ、だが。
かくして2022年11月16日、作戦決行。どうやら天候には恵まれたようだ。集合は朝6時に下北山スポーツ公園(きなりの湯)入口付近。
前夜に出立し、なんとか2時間ほどの仮眠時間をひねり出したわたくし。とにかく体力面での不安が大きかったため、少しでもHP回復を、というわけだ。
しばらくぶりの再開となるお二方との挨拶もそこそこに、まずはデポ地へと移動開始。
国道169号から前鬼林道へ。
そうそう、これは2010年8月の撮影だが、
通りすがりに望める不動七重の滝がこちら。実物はこれの50倍くらい素晴らしい。
落ち葉と落石の入り混じった油断ならない林道を進むことおよそ7kmで、デポ地へ到着。ここでアタックの最終準備を整えた。
ゆたさんとペッカーさん。百戦錬磨のお二人の足を引っ張らないようにしなければ。
ゆたさんは顔出しOKの人だが、まあバランス上隠させていただきます~。
デポ地付近から見下ろす前鬼川。
写真ではわからないが、正面あたりに「第三のルート」入口の沢があるはずだ。
時刻は、7時16分。いよいよ、アタック開始。
まずはペッカーさんを先頭に、前鬼川への降下から。
さあがんばれ、わたくし!
【1】に続く。