岩脇山の列車壕 (蒸気機関車壕) (滋賀県米原市岩脇) | 穴と橋とあれやらこれやら

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初めまして。ヤフーブログ出身、隧道や橋といった土木構造物などを訪ねた記録を、時系列無視で記事にしています。古い情報にご注意を。その他、雑多なネタを展開中。

2009年5月21日、この趣味でまだまだ初期の頃の県内徘徊で訪れた、ここ米原市岩脇(いおぎ)。この物件の存在自体は結構前から知ってたけど、実際に見に行ってみようと思ったのは、やはりこの趣味の影響。
 
ちなみにこの日、この後に訪ねたのが横山隧道
 
 
 
 
さて、予告篇の写真で当然すでにお気づきかと思うけど、
 
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背後の山になにやら怪しい穴が開いておる。しかも、見えにくいが写真右端にももうひとつの穴がある。つまり、2本の穴が並列している。
 
 
 
 
場所はコチラ。
 
 
 
 
東海道本線に面した南側斜面である。こんなところに…
 
 
 
素掘りの穴が!
 
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真新しいゲートと「立入禁止」の看板が、この場所がきっちり管理されていることをうかがわせる。コレはいったいな~んだ?
 
 
 
そうそう、この記事の時にはすっかり忘れてたけど、滋賀県内の完全素掘りの穴、ここにもあった(笑)。
 
 
 
 
がしかし、コレは廃隧道ではない。いや、正確に言うと、「廃」でもなく「隧道」でもない。
 
 
 
そうとしか見えないけどな!
あ、フェンスの隙間からですよコレ(笑)
 
 
 
 
 
 
 
 
で、右側の穴がコチラ。
 
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…って、掘りかけもあるやん!?
 
 
 
 
 
 
さてさて、マジな話、コレは一体なにかと申せば…
 
 
蒸気機関車を避難させる防空壕」
として掘られた穴だったのである。
 
 
 
…「??」といったところ?(笑)
 
 
 
 
 
この日の時点ではまだなかったが、2010年10月10日の煉瓦祭りで立ち寄った際には案内の看板が設置されていた。
 
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「蒸気機関車避難壕
 
コレが保存に当たっての正式名称となったようだ。画素極小の先代機写真だけに、内容がよく見えないだろう。なので、ここに全文を転記する。
 
 
「ここに存在する二つの洞窟(左側は奥行52m止め、右側は130mで貫通)は、太平洋戦争末期に日本の輸送の大動脈である東海道線及び北陸線の列車を引っ張る蒸気機関車を連合軍の空爆から守るために掘られた防空壕です。
この岩脇山は岩盤が固く、その上当時は物量が乏しく、火薬、スコップ、ツルハシ、トロッコなどの手作業のため難工事であったことがうかがえます。
しかしながら完成することなく終戦となったが、作業に従事した人達の汗と涙の結晶である防空壕跡が、長い間ごみ捨て場として放置されたままになっていました。
そこで「岩脇まちづくり委員会」では戦争の悲劇を風化させないために戦争の遺跡として保存するため平成20年10月から平成21年8月にかけて整備したものです。」
 
 
 
 
終戦間際の緊迫の中、鉄道の要衝であるここ米原では、輸送に欠かせない大切な蒸気機関車を守るための列車壕が人知れず「本気で」掘られていた、ということ。いろんな意味で「せっぱつまった感」「どん詰まり感」を感じさせる、戦争遺跡である。
 
 
書かれているとおり左の穴は未貫通、右の穴は貫通するも、一見してわかるとおりにこんなサイズで蒸気機関車が収容できるはずもない。いずれも未成のまま、使用されることなく終戦を迎えた、と。
 
 
従って、コレは廃隧道ではなく、「未成」の「防空壕」とするのが正しいのである。
 
 
 
 
わたくしがこの物件を初めて知ったのが何でだったかよく思い出せないのだが、そのとき目にした写真はもっともっと陰鬱かつ凄惨な感じだったように思う。
ゴミ捨て場として荒れ果てていたこの穴をこのように整備してくださったのが、「岩脇まちづくり委員会」有志の皆さん。自治体からの補助を受けつつも、手弁当で作業にあたられたという。まったくもって、頭の下がる思いだ。
 
定期的に見学会も行っているようで、非合法な真似をしなくても(笑)内部を見られる。…と言いつつ、参加を果たせていないわたくし…。よって、内部は未見なのよ…。
 
 
 
 
コレは右側の穴の内部を、フェンスの外から。
 
 
 
貫通しているとされるほうの穴だが、向こうの明かりは見えない。曲がっているのか、あるいは…半閉塞しているのか?見たところでも、少し奥で崩落?が見られるようだが…。
 
 
まあとにかく、この写真は(看板以外は)2009年5月のもの。現在ではもっと綺麗に整備されているはず。
 
 
 
 
 
 
ところで、案内看板では先ほどの掘りかけの穴については触れていなかった。アレはどういうものなのか…?
 
 
どういうもの、と言えば、
 
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!!
右の穴の少し上の斜面には、こんな穴も。
 
 
 
思わずのぞいて見ると…
 
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わかりにくいが、急角度で下へと向かっている。結局下の穴につながってるのか?
 
 
蒸気機関車の収容を目的としていたということで、換気に関するなにかだろうか。排煙装置的な。
もしかしたら、追加の案内看板とか出てないかな?また機会があったら立ち寄ってみよう…。
 
 
 
 
 
 
 
 
最後に、この岩脇山、非常にこじんまりした山ながら、善光寺と稲荷神社を抱いている。全体的にかなりいい雰囲気。何点か写真をご覧いただいてシメとする。
 
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以上、完結。