大山の人車軌道隧道 (廃) 【2】 (富山市岡田~東小俣) | 穴と橋とあれやらこれやら

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初めまして。ヤフーブログ出身、隧道や橋といった土木構造物などを訪ねた記録を、時系列無視で記事にしています。古い情報にご注意を。その他、雑多なネタを展開中。

【1】より続く。
 
 
 
 
 
念願の物件をついに捉えた。
 
事前情報どおり、明らかに水没している。むむう。そして洞内からは、聞き慣れたアレが。40d145f8.jpg
 
洞内にぶらさがったシルエット。そう、聞き慣れたさえずりのようなそれは、こうもりさんに他ならない。どうもすでに目覚めてらっしゃるようで…。
 
 
 
 

 
 
 
 
さて!今さらながら、ここで今回の物件について少々。
 
「人車軌道」とは文字通り、人力により車両を押す鉄道で、その手軽さにより明治~大正期に多く敷設されたという。戦前までは多くが稼働していたが、戦後のモータリゼーションの波には勝てるわけもなく、昭和34年を最後にその姿を消したとのこと。
 
今回の大山の人車軌道については険酷隧さんのブログに詳しいが、その建設は明治32年、廃止は昭和30年ごろとのことで、つまりは今回紹介するこの隧道も明治物件だということ、そして廃止後60年近くにもなることを意味する。
 
今では人々の記憶も風化しつつあり、痕跡を残すのは松の木発電所導水管をまたぐ橋脚(これも記事にされています)と、この隧道のみだそうで、何とこの隧道、全国的にも現存する唯一の人車軌道隧道だということらしいのである!
 
 
しかるにだ。
 
 
 
 
これは2011年9月15日、静岡県熱海市を散策したときに撮影したもの。(野中山隧道の前ね)
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この豆相人車鉄道は、あの「鉄道廃線跡を歩く」シリーズにも掲載され、人車軌道の中では知名度が高い。熱海の市街地でも、痕跡こそないものの、こうしてきちんとした案内物が設置されている。
 
 
 
…ああ、それなのに。
 
 
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郷土史上、交通史上、土木史上の価値が極めて高いと思われる、「全国唯一」のこの隧道は、このように一顧だにされることもなく、打ち棄てられたまま。コレは、イカン遺憾ノーノーノーでしょう!
 
 
 
「予習」を済ませたところで、いざ隧道へ接近!
 

 
 
 
 
 
隧道前から振り返り。
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うん、やはりこれでも植生はマシなほうやったでしょうな。夏場はさぞかしおぞましいグリーン・ヘルとなることでしょう。
 
 
 
 
 
坑門工はなく、アーチの上は
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乱積みの石で固められている。凄いなコレ…。初めて見た…。
 
 
 
そして、そのアーチというのがまた素晴らしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
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総切石積みによるアーチ。
Exellent!
Amazing!
Awesome!
 
明治期の総石造隧道というだけで土木遺産的価値は十分にあると思われる。それがこの傷みのない素晴らしい保存状態、ましてや全国唯一の人車軌道隧道だというのであれば、逆になんで行政が放置しているのか、不思議なくらい。
 
さらに特筆すべきは、その側壁部(いや、坑門もだが)。通常、総石造隧道なら側壁も切石で構成されているものだが、この隧道ではなんと丸石、しかも空積み!その上に切石アーチが乗るというのは、前代未聞の空前絶後!!普通に考えても切石と丸石の組み合わせって、強度的にも安定感的にも相性悪そうなんだが…
 
凄いとしか言いようがない。
 
 
 
 
ノンフラッシュだと、こんな感じ。
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うーん、イカツイ。
 
 
 
 
 
満々と水を湛えておりますな…(汗)。そして、改めて…
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暗闇から聞こえる、軋みにも似たこうもりさんのさえずり音、いつ聞いてもぞくぞくするね~。いや、嫌いじゃない、全然。
 
 
 
 
マグライトをオン、ズームして見ると
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イイねぇ~!!あれ?共感少ない?(笑)
 
 
 
 
 
さて、当然ながら長靴を履いてきている(革靴じゃございませんよ~・笑)。あわよくば洞内を抜けたいところだが、それが叶わないだろうことも分かっている。まあ様子を見つつ、行けるとこまで行ってみるか…。
 
 
 
 
 
 
これが、長靴限界点からの眺め。…要は、ほとんど進めなかった、と(笑)。
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泥濘感が恐怖心を呼び覚ます。今日の朝イチに訪ねた某隧道のように、一気にもっていかれそうになることはなかったが、
 
 
 
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コレ以上は無理しても得るものなし!
 
 
 
 
脱出!
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まあ、こんなもんでカンベンしておいてやるか…。
 
 
 
完抜けは成らずとも、当然反対側も拝みに行かねばな。
 
 
 
 
 
【3】へ続く。