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フォノン通信

2019年にヤフーブログから移行してきました。
制作した絵画、詩、読んだ本のことなど投稿していきます。

 

★ブルーバックスの『宇宙と物質の起源』を紹介しています。

 

自分の備忘録も兼ねて、必要に応じてポイントとなる箇所を抜粋しています。

 

読んでいて自分で解決できない疑問点は、他の文献やCopilotなどの助けを借りることにしました。

 

★第3章の「元素の起源」は面白くないので、第4章に飛ぶことにしました。

 

 第4章「質量の起源」

 

電子、ミューオン、タウ粒子、ニュートリノなどのレプトン、W粒子やZ粒子は宇宙が始まった初期には質量をもっていなかった。それが、ヒッグス場という場があって、このヒッグス場との相互作用によって質量をもつようになった。

 

これが、ヒッグス機構なのですが、第2章に続いてさらに解説しているのが第4章です。

ここから本書から引用します。

 

【引用開始】

 

 クォークの基礎理論とは

 

単独では取り出せないクォークの質量を、直接測定することはできません。(補足:「クォークの閉じ込め」といって、クォークの単体を原子核から取り出すことはできない)

 

陽子・中性子の中に粒子ビームを撃ち込む実験である程度調べることはできるはずですが、やるたびに変わるという問題がありました。

(中略)

こういうときには、別の角度から考えてみるべきでしょう。まずは、素粒子標準理論の一部であるクォークの基礎理論から考えてみることにしましょう。

 

クォークに働く力は4つの基本的な力のうちの1つで、「強い力」あるいは「強い相互作用」と呼ばれます。

 

他の3つとは、重力、電磁気力、弱い力です。強い力は、文字通り力が強いので、電磁気力による反発をものともせず複数の陽子をつなぎとめて原子核をつくることができます。

 

もともとは、陽子や中性子に働く力を強い力と呼んでいました。現在では、クォークに働く強い力が少しだけ陽子・中性子の外まで漏れ出たものが、陽子・中性子の間に働いていると理解されていまます。

 

【引用終了】

 

★かつて強い力は、原子核の中の陽子・中性子の間に働く引力のことでしたが、現在ではクォーク間に働く引力のことを強い力と呼んでいます。

 

陽子はアップ・クォークが2つにダウン・クォークが1つで構成されています。アップ・クォークをuで表し、ダウン・クォークをdで表すと、uudが陽子を表します。一方、中性子はuddです。これらのuとu, uとd, dとdの間に働く力が強い力です。

 

クォークは、電荷をもっています。電子の電荷の絶対値を1とすると、アップ・クォークの電荷は+3分の2、ダウン・クォークの電荷はー3分の1である。

 

したがって自然界は分数を使っていることになる。興味深いですね。

 

さらに本書から引用を続けます。

 

【引用開始】

クォークに働く強い力。その基礎理論は「量子色力学」と呼ばれています。

 

クォークがもつ「色」という、ある種の電荷に働く力です。ここで登場する「色」は、私たちが見る色とは関係がありません。

 

クォークがもつこの特別な電荷には3つの成分があって、その混ぜ合わせでできているので、光の三原色との連想でそう呼んでいるにすぎません。

【引用終了】

 

★量子色力学の「色」は、視覚と関係する「色」とは全く関係がないというのは紛らわしいですね。通常の「電荷」と区別するために、クォークがもつ特別な電荷は、「色荷」と呼びます。

 

ここから次の節を引用します。

 

【引用開始】

 

 強い力が強いわけ

 

量子色力学は、電磁気力の理論と非常に似たものですが、電荷に相当する「色荷(しきか)」が3種類(3色)あるところが、大きく異なります。

 

そのために電磁気力を伝える光子に相当するグルーオンはそれ自身が色荷をもち、強い力を伝える役割を担うだけでなく、クォークと同じように、それ自身が力の源にもなるのです。すると、どうなるでしょう。

 

クォークには強い力が働きます。力を伝達するグルーオンにもやはり強い力が働き、その力を伝達する別のグルーオンにも・・・・・、という具合に雪だるま式に増えていきます。

つまり、遠くで働く力は、やがて無限に強くなります。これこそが、強い力が「強い」理由で、クォークが単独で存在できない理由でもあります。ただし、「無限に」強い力というのはあり得ません。そこでは何かおかしなことが起こっているはずです。

【引用終了】

 

 

★陽子、中性子の中にはそれぞれ3つのクォークが入っていますから、クォーク間に働く強い力を伝達する素粒子のグルーオンはそれぞれ3つでいいのではないかと考えてしまいます。僕もそう考えていました。しかし、そうではなかったのです。

 

実は、陽子の中には無数のグルーオンが存在します。いわば陽子の中には「グルーオンの海」があるのです。

 

どうやら陽子の中ではクォーク3個と無数のグルーオンがごちゃごちゃになっている。強い力を伝達する粒子であるグルーオンと他のグルーオンの間にも強い力が働いている。

このときグルーオンが他のグルーオンとグルーオンを交換しているのである。

 

本当にややこしいですし、難しいです。

さらにややこしいのですが、グルーオンは8種類あるのです。これについてはここでは触れません。

 

さらにややこしいのですが、クォークには質量があるのですが、グルーオンには質量はないのです。

 

★本書からの引用をまた続けます。

 

【引用開始】

 

 何もない真空で起こっていること

 

雪だるま式が強くなる量子色力学では、通常では考えられないことが起こります。強くなった力の影響を受けるのは、クォークだけではありません。普通は何もないと考えられる真空も大きな影響を受けるのです。どういうことでしょう。

 

ミクロの世界の基本原理である量子論では、粒子などが存在しない真空から粒子と反粒子の対生成が起こってもよい、ということがわかります。

 

エネルギー保存の法則を破るから駄目だと思われるかもしれませんが、ごく短い時間のうちに対消滅により再び消えてしまえば、量子力学の不確定性関係の許す範囲内で可能なのです。

 

こうして真空からいつの間にか対生成で生まれたクォークは、やはり色荷をもっているので、例によって雪だるま式に強い力が働き、力を伝える役割のグルーオンを次々と生み出します。再び対消滅するまでの間に、こうしたややこしいことが起こっているのです。

 

何もないと思っていた真空では、クォークの対生成、対消滅に引き続いてグルーオンが次々と湧き出ては消えるのを繰り返している。真空にはクォークと反クォーク、それにグルーオンが埋まっている、と言ってもよいのです。

 

【引用終了】

 

★上の話を読んで、疑問が生じました。クォークは例えば陽子や中性子の中に閉じこめられていて単独では取り出せないはずですが、上の解説には単独でクォークと反クォークが存在しているような話になっています。そして、いきなり「真空」の話になるのでわかりにくくなっています。

 

本の記述が示唆するように、真空に埋まっているクォーク、反クォーク、グルーオンは核子から「外に出た」素粒子というよりも、真空自体が非常にダイナミックな環境であるので、これらの素粒子が生成と消滅を繰り返しているとみることができるのです。核子(陽子や中性子)内部のクォークやグルーオンと、真空中のそれらは異なるものとして扱われますが、同じ基本的な物理法則に従っています。

 

ほんの短い時間ならば、クォークと反クォークが対生成し、そのクォークと反クォークが対消滅してもかまわないというのが不確定性原理です。この素粒子物理学ではよくこの不確定性原理が使われます。

 

★第4章のポイントはまだ続きますが、今回はここまでにします。

 

*ここまでお読みいただきありがとうございました。