新潟「誰そ彼 渡る舟」中太の甘味に細身の旨味が寄り添い、渋味が終盤を取り纏める | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

新潟市に登場し、独自路線を極めるため奮闘している越後伝衛門さんが醸している酒をいくつか飲む機会がありましたので、ご紹介します。

 

1本目はこれです。

 

 

誰そ彼(たそがれ)渡る舟(わたるふね)」。

 

越後伝衛門を買い取って、2022BYから本格的な酒造りを始めた蔵元の加藤晃葵さんは、実質的にワンオペでやっています。

年(2023)取材した際に、「ずっと1人で酒造りをしていると、さすがに人恋しくなります」と話されていたので、空太郎は酒造りの手伝いがてら、蔵にお邪魔しました。

 

 

一泊二日で手伝ったので、初日の午後は洗米作業に取り組みました。

洗米はもちろん10㌔単位以下で洗います。

洗米機にざーっと米を投入して、秒単位で洗い終えると、米が吐き出されてきて、すぐにシャワーをしっかりと浴びせて残った糠を落とし、それから浸漬桶へ。

 

 

ここも加藤さんが決めた秒数だけストップウオッチをにらみながら漬けて、時間になったら取り出します。

すばやくバキュームの上に乗せて、米の回りの水を吸い取り、最後に計量器に乗せて吸水率を測って完了です。

吸水率の目標は20数パーセントです。

空太郎は他の蔵でもこの作業をしたこともあって、テキパキと作業を終えることができたのか?、加藤さんからは「頑張れば頭にしてあげます」と言われました。

冗談ですね。

まったくの素人です。

 

 

さて、1本目にいただくのは滋賀県産渡舟6号のお酒です。

越後伝衛門では、今季(2023BY)初めて使った酒米がこの「渡舟6号」と「愛山」です。

この2つの米の造りについて、加藤さんは次の様に話しています。

 

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製麹はいずれも高温麹法を採用しています。

仲仕事から仕舞仕事まで3時間で駆け抜けて、最高品温は45.5℃付近。

在室時間は45~48時間でやや老なしたのち乾燥させています。

醪経過ですが、渡舟、愛山ともに溶けやすいと聞いていたので、最高品温を9.9℃とやや低くしました。

結果、あまり溶けず(笑)。

醪日数は、たそがれが約40日、独身者が約35日です。

オリ下げは2℃で7日間(もう少し早めたい)、メッシュフィルターをかませた“無濾過”で瓶詰め。

すぐに瓶燗火入れののち、-2℃の冷蔵庫にて瓶貯蔵しています。

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今季が初めての渡船でしたので、当然、銘柄を決めなければならず、加藤さんは随分前から「なかなか決められない」と話していましたが、結局、こんなおしゃれなネーミングになっていました。

 

50%精米の純米酒、一回火入れです。

 

 

上立ち香は好感の持てる涼しげな酒エキスの香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に適度なとろみ層を乗せて、ゆったりとしたムードで滑り込んできます。

 

受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさの湿り気を帯びた粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味は流動性のある中濃ソースのよう、旨味はシンプル無垢でスレンダーな印象で、両者は伸びやかにストイックな舞いを披露します。

 

流れてくる含み香もスキニーな酒エキスの香りでデコレート。

後から酸味と渋味が少量、現れて、酸味はメリハリ付けに寄与し、渋味はしばし佇んだ後、終盤になると全体を取り纏めて、そのまま喉の奥へと導いていきました。

 

 

加藤さんは「初めてで醪のコントロールが思うようにいかなかった」と話していますが、仕上がりは問題ありませんでした。

それでは、越後伝衛門のお酒、2本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年160銘柄目)

銘柄名「誰そ彼(たそがれ)渡る舟(わたるふね) 純米 2023BY」

酒蔵「越後伝衛門(新潟市)」

分類「純米酒」

原料米「渡船6号」

酵母「協会9号」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=3520円」

評価「★★★★★(7.6点)」