新潟「雅楽代 鳴神 生酒」すべてがスタンダードで無難に整った美麗な舞いを見せる | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

雅楽代(うたしろ)鳴神 生酒」。

新潟県佐渡市の天領盃酒造さんが醸しているお酒です。

 

20代の若き加登仙一さんが天領盃酒造を個人で買収して6年が経ちました。

買収に必要なお金に加えて、老朽化していた蔵の設備の更新にも相当な資金が必要だったかと思います。

加登さんは金融機関からの借り入れに加えて、国の補助金もフル活用していますが、異色なのが、2017年4月に施行された有人国境離島法に基づいた特定補助金を利用していることです。

 

 

海に囲まれた日本の実質的な国境(領海)は海の上にあり、その境の近くにある有人離島は言ってみれば、国境の最前線なわけです。

その島が人が住まなくなるのは国の防衛上好ましくないと考え、議員立法で成立したのがこの法律です。

 

 

対象となる島は148島で、そのうち、71島は地域社会を維持するための施策をほどこすことができるようになっています。

すなわち地域の雇用創出に繋がることに国の補助金がつくというわけです。

酒蔵はものづくり補助金と事業再構築補助金を利用しているケースが多いのですが、天領盃酒造はこれらに加えて、こちらの補助金も利用可能というわけです。

 

さて、お酒は五百万石、精米歩合非公開の生酒です。

 

 

上立ち香は酢酸イソアミルの好ましい香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、軽快なテンポで滑り込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプル無垢で気持ち粗めな印象で、両者は足並みを揃えて、穏やかな昼下がりの世界を描きます。

流れてくる含み香も控え目な薄甘い香りでデコレート。後から酸味と渋味はほんの少し現れて、薄氷の輪郭を施します。

甘旨味は終盤までやや単調に隙の無い優等生的な舞いに終始するのでした。

 

 

加登さんが買収した直後のお酒を思うと、隔世の感があります。

 

お酒の情報(24年140銘柄目)

銘柄名「雅楽代(うたしろ)鳴神 生酒 2023BY」

酒蔵「天領盃酒造(新潟県佐渡市)」

分類「純米酒」

原料米「五百万石」

使用酵母「不明」

精米歩合「不明」

アルコール度数「14.5度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3300円」

評価「★★★★★(7.5点)」