昭和59年度(1984)生まれの長野県の蔵元後継者5人で2015年に結成した酒蔵ユニット「59醸(ごくじょう)」。
毎年、決められたテーマに沿ってそれぞれが美酒を造って、その出来映えを競うという趣旨で始まったわけですが、当初から「10年やったら終わり。
解散する」と宣言。そして、ついに、最終年がやってきました。
今年も5本を入手しましたので、飲み比べをしました。
10年目のお題は集大成なので、その名の通り、「極上の酒」。
精米歩合(59%)と一回火入れだけ足並みを揃え、あとは自由に考えるということでした。
最後の5本目にいただくのはこれです。
長野県上田市の沓掛酒造さんが醸しているお酒です。
蔵元の沓掛正敏さんは今回の酒造りについて、次のように話しています。
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私は醪に音楽を聞かせる“音楽醸造”にこだわってきました。
これまでの9年間はいろいろなクラシック音楽を選んで来ました。
しかし、考えてみると、日本酒なのになぜ洋楽なのか、と考えることも時々あり、今回は思い切って日本の音楽である雅楽を聴かせることにして、舞いの名曲「春庭花(しゅんでいか)」を使う事に。
また、これまではスピーカーで音楽を流すに留まりましたが、今回は仕込みタンクに直接、スピーカーをくっつけて、低音の振動も醪に伝えるようにしました。
酒自体はうち本来の目指す酒である日常酒を造ろうと、香りは控え目、酸をだしてすっきりとした味わいを目指しました。
甘味も残したかったのに、醪が切れる傾向にあって、当初よりも早めに搾りました。
少し、ドライ感が強かったのが心残りですが、自己採点は95点です。
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地元産山恵錦、酵母は協会7号です。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快なスピードで滑り込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。
甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプルでやや粗めな印象で、両者はタイミングを合わせて、上下に伸縮するようにして踊ります。
後から酸味が僅少、渋味がやや多めに現れて、くっきりとしたメリハリを施します。
終盤になると甘味と渋味が交互にせめぎ合いながら主張を繰り返し、飲み下した後の余韻はスパッと短いものでした。
自由演技と言う事もあって、過去10回の中で5蔵の酒質が最もばらついた印象でした。
それぞれ、個性があって、楽しい飲み比べでした。
気持ち的には、これで終わりではなく、何らかの形で59醸が存続して欲しいものです。
*18~19日と銀座NAGANOでファイナルイベントがあります。是非、ご参加ください。
銘柄名「59醸 福無量(ふくむりょう) 2023BY」
酒蔵「沓掛酒造(長野県上田市)」
分類「純米酒」「一回火入れ酒」
原料米「地元産山恵錦」
使用酵母「協会7号」
精米歩合「59%」
アルコール度数「15度」
日本酒度「+2」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「○」
標準小売価格(税込)「720ml=2200円」
評価「★★★★★★(7.7点)」