三重「酒屋八兵衛 八十八夜 純米生酒」生酒特有の太めの甘味が後半いささか疲れを見せる | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に三重県大台町の元坂酒造さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

2本目はこれです。

 

 

酒屋八兵衛(さかやはちべえ)八十八夜 純米生酒」。

 

1本目に書いたお話の続きです。

 

四季醸造へのアンチの姿勢を見せたのに続いて、こだわるのは麹造りです。

その一部を要約してご紹介します。

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太平洋側内陸部の大台町は冬季の湿度が低く、麹室が乾燥するので、しっかりと破精込みよく締まったキレのある麹になります。

本来、麹室の環境は各酒蔵によって違い、だからこそ麹に個性が現れ、それが酒質の核になると思っています。

機械製麹によって安定化された麹は、優秀ですが面白くない。

麹箱の温度を見るため、寒い夜中に炬燵を抜け出し、見て、嗅いで、味わって、麹づくりを体で感じる事。

麹室から出て汗を拭きながら見上げる星空が、毎晩違った美しさで輝くのを尊く感じるように。

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この機械製麹とは大手が使っている自動製麹機ではなく、ハクヨー5段に代表される麹造りの二日目から出麹までに使う製麹機を指していると思われます。

この製麹機を使いこなすと、夜中の麹の世話がほとんど不要になり、蔵人の労働環境改善が図られるのです。

これもまた、どちらが優れているかは判定できず、酒屋萬流の世界だと空太郎は思っています。

 

3本目は山田錦を麹米、五百万石を掛米に使った60%精米の純米、生酒です。

 

 

上立ち香は生酒特有の麹バナがややとろりと。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、初々しく駆け込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに軽快に膨らみ、拡散して、適度な大きさのややウエットな粒々を次々と射掛けてきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系の気持ち肥えたタイプ、旨味はシンプルながら、肌理の粗い印象で、両者は元気良く健康的な舞いを披露します。

流れてくる含み香は酒エキスにプラスアルファが加わり、さらに、わずかに生ヒネも混じって、デコレート。

後から酸味は皆無、渋味がやや多めに現れて、味わいの輪郭をはっきりとさせます。

甘旨味は終盤になるといささか疲れを見せ、活力を徐々に落とし、最後はゆっくりと縮退して、喉の奥へと吸い込まれていきました。

 

 

それでは、元坂酒造のお酒、3本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年91銘柄目)

銘柄名「酒屋八兵衛(さかやはちべえ)八十八夜 純米生酒 2022BY」

酒蔵「元坂酒造(三重県大台町)」

分類「純米酒」「生酒」

原料米「麹米=山田錦、掛米=五百万石」

使用酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1600円」

評価「★★★★(7.4点)」