三重「酒屋八兵衛 朔旦 純米吟醸」凡庸で地味な甘旨味を酸味がしっかりサポートする | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に三重県大台町の元坂酒造さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

3本目はこれです。

 

 

酒屋八兵衛(さかやはちべえ)朔旦 純米吟醸」。

 

1&2本目に書いたお話の続きです。

 

元坂兄弟のこだわりは搾った後にもあります。

その一部を要約してご紹介します。

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全ての米を限定吸水で洗い、低温で仕込み、アルコール分16.0度前後で上槽します。

搾った直後でも全体の調和が取れた状態を狙っています。

火入れのお酒は常温での瓶貯蔵です。

1年をかけて熟成が進む事を考慮して酒質を設計しています。

厳密な冷蔵保管が求められる昨今の風潮に疑問を感じ、常温で美味しく飲める日本酒の本質的なバランスを探して、お客様にも地球にもストレスの無い、ものづくりを模索し続けています。

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一回火入れの瓶貯蔵は他の先進地酒蔵と同じですが、元坂酒造はあえて冷蔵庫保管しないということです。

蔵の中は冬場の寒さが残り、夏場でもひんやりと20度前半でしょうから、常温貯蔵と言っても熟成は適度で出荷できると考えているのでしょう。

確かに、近年の日本酒造りは電気の消費が多く、この点については、持続可能な社会という面では課題もあるので、元坂酒造の決断は選択肢の1つと言えそうです。

 

3本目のお酒は山田錦50%精米の純米吟醸規格の火入れ酒です。

 

 

上立ち香はシックな酒エキスの香りが仄かに。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、気持ちザラザラな感触を強調しながら、淡々と滑り込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままにキビキビとした態度で膨らみ、拡散して、適度な大きさの硬めの粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味は肌理の粗めな印象で、両者は大人しく、静かに淡い世界を画きます。

流れてくる含み香も穏やかな酒エキスの香りが薄化粧を付与。

後から酸味と渋味が少量現れて、クエン酸主体の酸味が甘旨味にしっかりとメリハリをつけながらサポートします。

味わいは地味ながらも、存在感を維持し、最後は反転縮退して、喉の奥へと吸い込まれていきました。

 

それでは、元坂酒造のお酒、最後の4本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年92銘柄目)

銘柄名「酒屋八兵衛(さかやはちべえ)朔旦 2022BY」

酒蔵「元坂酒造(三重県大台町)」

分類「純米酒」

原料米「山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=2000円」

評価「★★★★★(7.6点)」