奈良「みむろ杉 菩提酛 純米」独創性に富んだ旨味が甘味と洗練されたスレンダーな味わいを造る | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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自宅の晩酌に奈良県の酒蔵が造った菩提酛のお酒を2本取り寄せて、飲み比べました。

「風の森」に続いて、2本目はこれです。

 

 

みむろ杉 菩提酛 純米」。

奈良県桜井市の今西酒造さんが醸しているお酒です。

 

1999年1月に初めての菩提酛造りが始まりましたが、当初は酒母の仕込み作業は関係者のみで行われ、非公開でした。

ところが、「室町時代の酒造りの再現」としての菩提酛の知名度が上がり、これは毎年の風物詩として観光資源にもなると考え、2005年1月からは「菩提酛清酒祭」として一般公開されています。

 

 

出来上がった酒母はそれぞれの蔵が引き取って、仕込みに活用しています。

ちなみにお酒に「菩提酛」と表記できるのは「菩提酛研究会」の会員のみに限定されており、同じ手法で酒母を造っても非会員は「水酛」と表示しています。

 

現在、菩提酛研究会のメンバーは奈良県の7蔵で、同じ県内の美吉野醸造(花巴蔵)は会員にならずに「水酛」表記で酒造りをしています。

奈良県外の酒蔵が会員になれずに「水酛」と表記するのはわかりますが、美吉野醸造はなぜ、菩提酛研究会に入らないのか、謎です。

 

さて、今西酒造は仕込みには奈良県産山田錦を使って純米、火入れで出しています。

 

 

上立ち香は非常に複雑系の甘い香りが漂ってきます。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルの感触を強調しながら、まっしぐらに転がり込んできます。

受け止めて保持すると、粛々とした態度で膨らみ、拡散して、適度な大きさの透き通った粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のからりとしたタイプ、旨味は非常に独創的な個性を秘めた印象で、旨味主導でキリリとしたスレンダーな世界を画くのです。

流れてくる含み香はシンプルな薄甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味が少量現れて、隠し味役を担います。

甘旨味は洗練された無駄の無い踊りを最後まで演じ、飲み下した後の余韻はすっきりと切れたものでした。

 

個性的な仕上がりでした。好感が持てました。

 

お酒の情報(24年89銘柄目)

銘柄名「みむろ杉 菩提酛 純米 2022BY」

酒蔵「今西酒造(奈良県桜井市)」

分類「純米酒」「原酒」

原料米「奈良県産山田錦」

使用酵母「正暦寺で造られた菩提酛」

精米歩合「不明」

アルコール度数「13度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=2200円」

評価「★★★★★(7.6点)」