自宅の晩酌にお酒を選びました。
これです。
埼玉県飯能市の五十嵐酒造さんが醸しているお酒です。
五十嵐酒造は長年、飯能市内からも望めるハイキングにも人気の山、天覧山を銘柄に採用し、地元向けに販売をしてきました。
しかし、埼玉と言っても飯能周辺は人口減もあるし、高齢化も進んでいることから、生き残るには東京(首都圏)で販売を広げなければなりませんでした。
ただ、その術がわからないため、地酒を育てるのに長けていた東京の小山商店に足を運びました。
持参した天覧山を飲んだ店主の小山さんは、店で取り扱っている人気蔵の酒を次々と利かせて、「こういうタイプの酒なら売れる。頑張れ」と言われたのです。
その最大のポイントは蔵人が飲んでいるのと同じフレッシュな酒の提供でした。
その答えが、しぼりたての生酒のなかでも、最もフレッシュな搾り機の口から出てきたお酒をそのまま瓶詰めにする直汲みだったのです。
もちろん、手間は半端ではありませんが、蔵元の五十嵐正則さんは、搾って出てきた酒を蔵元か杜氏が利いて、「五十嵐」として出して大丈夫かを判定してから直詰めし、詰めたお酒は出荷までマイナス5度の冷蔵庫に囲うという条件で販売しています。
おかげで、「五十嵐」の評判はすぐに上がり、現在800石ある蔵の酒のメインは五十嵐に取って代わっています。
今夜いただくのももちろん、直汲み、無濾過生原酒です。
吟風55%精米の純米吟醸です。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にわずかに微細な気泡を包含したとろみ層を乗せて、元気良く駆け込んできます。
受け止めて保持すると、気泡のわずかな破裂を背後に聞きながら、テンポよく膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。
甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味は純白無垢の印象で、両者は足並みを揃えて、完璧なハーモニーを奏でます。
流れてくる含み香は生酒の長所の部分の甘い香りで完璧にデコレート。
後から酸味が適量、渋味が少量現れて、酸味は甘旨味に一部で溶け込んで、局地的に甘酸っぱい部分に変えながら、多彩な味わいの世界を描き続けるのです。
終盤まで疲れを見せずにフレッシュ・ジューシーな世界が続くのでした。
直汲みの良さが120%表現されていました。
それでは、五十嵐酒造のお酒、もう1本いただくことにします。
お酒の情報(24年33銘柄目)
銘柄名「五十嵐(いがらし)純米吟醸 無濾過生原酒 2023BY」
酒蔵「五十嵐酒造(埼玉県飯能市)」
分類「純米吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」「直汲み酒」
原料米「吟風」
使用酵母「不明」
精米歩合「55%」
アルコール度数「16度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「720ml=1760円」
評価「★★★★★★(8.1点)」