高知「四万十 純米大吟醸 生酒」崇高さを感じさせる甘旨味が酸渋を従えて精緻に舞う | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

四万十(しまんと)純米大吟醸 生酒」。

高知県四万十町の文本酒造さんが醸しているお酒です。

 

1900年創業の文本酒造は、戦後は主に土佐鶴酒造への桶売りを柱に、自社銘柄「桃太郎」で酒造りをしてきました。

しかし、桶売りは徐々に縮小し、2000年以降はわずか50~100石で細々と「桃太郎」を地元向けに販売してきました。

そこへコロナ禍が襲い、2020年3月、休蔵に。

杜氏&蔵人も解雇し、廃業は時間の問題でしたが、その話を日本航空から高知県の観光振興部門に出向していた阿部達也氏(現専務)が聞きつけ、地元、四万十町の観光資源とし再生活用する可能性を感じ、出資社を探し出して、2022年7月に事業承継しました。

全株式を所得したのは三重県伊勢市のエヌアール。

イベント企画や地方創生事業の支援などを幅広く手掛けている会社(従業員30人)で、創業社長は岡山裕成氏。

岡山氏自身は自社の事業に忙しく、文本酒造の実質的な経営は専務の阿部氏に委ねています。

酒造りは総米が200㌔から500㌔までの小仕込みのみ。

地元四万十町で採れた仁井田米だけで酒造りをし、フレッシュローテーションを目指して、在庫が減ったら酒造りをする四季醸造体制にしています。

 

お酒は基本が透明なスパウトパウチ。

軽量でかさばらないので、輸送コストも安くなり、SDGSにも貢献できることを売り文句とします(特注では瓶詰めもする)。

蔵に新たにショップとカウンターもある日本酒バーを設けて、観光客がスナックと日本酒を角打ちスタイルで楽しめるようにしています。

ショップとバーのオープン(2023年5月1日)に合わせて、3月初旬から初めての酒造りを始めました。

店売りのほか、オンラインでの販売から始め、いずれ、県内の酒販店との取引も始める予定です。

 

今夜いただくのはそんな仁井田米50%精米の純米大吟醸、生酒です。

上立ち香は熟したバナナの香りが適度に。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振ってサラサラな感触をアピールしながら、まっしぐらに転がり込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系のある程度しっかりとしたタイプ、旨味はシンプル無垢でやや肌理の粗い印象で、両者は足並みを揃えて、エネルギッシュに踊ります。

流れてくる含み香はフレッシュジュースの甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味が少量現れて、薄氷の輪郭を付与。

甘旨味は終盤まで疲れも見せずに、崇高さを感じさせる雰囲気で精緻に踊りきるのでした。

高知に美酒が1つ復活したと言っていいでしょう。

今後の動きに注目です。

 

お酒の情報(24年24銘柄目)

銘柄名「四万十(しまんと)純米大吟醸 生酒 2023BY」

酒蔵「文本酒造(高知県四万十町)」

分類「純米大吟醸酒」「生酒」

原料米「地元産仁井田米」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「500ml=4900円」

評価「★★★★★(7.5点)」