長野「信濃錦 超玄 S91」雑味はないが、超不思議で個性的なコクが横行する | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

旧聞に属するお話になりますが、長野県の日本酒とワインが一堂に会する「信州のIPPON」というイベントに行きました。

その時飲んだお酒を10本ほど紹介したいと思います。

 

7本目はこれです。

信濃錦(しなのにしき)超玄(ちょうげん)S91 純米」。

長野県伊那市の宮島酒店さんが醸しているお酒です。

 

このお酒については、近年、新しいシリーズとしてリリースしたこともあって、蔵元が熱い想いをパンフレットで語っていますので、そのままご紹介します。

*************

宇宙の全てを表そうという『超弦理論』。

その理論では万物の中で「重力」のみが別の時空へ伝わることができるとされています。

新たな時代を迎えた中で、フード・ロスやエネルギー消費を抑制するという視点から日本酒を見つめ直し、新たな「時空」へ歩みを進める必要があるのではないでしょうか。

 

食糧危機を目前として、ライフ・サイクル・アセスメントに思いを馳せ、環境負荷の少ない農法で作られた原料米を大切に用い、フード・ロスやエネルギー消費を抑えることができる低精白米による純米醸造酒が日本酒の未来を拓くのではと考えています。

農薬を使わずに契約栽培した「特別栽培米」を、超・低精白にて仕込んだ純米酒を造りました。

その名も『超玄(ちょうげん)』。

超玄(くろ)い、という意味にて「超玄」と名付けましたが、「超弦理論」へのオマージュが込められています。

日本酒の製法品質表示基準で「特定名称酒」のラインとして示された、精米歩合70%より10%を超えて低精白な精米歩合81%以上のものを「超玄」領域とさせて戴いております。

使用米が山恵錦であれば「S」、美山錦であれば「M」、ひとごこちであれば「H」を冠して、「超玄S91」などと記号を精米歩合を組み合わせた表記をしています。

超玄シリーズのラベルには超弦理論の方程式が刷り込まれ、「超玄」がテーマとしているライフ・サイクル・アセスメントを意識したラベルデザインとさせて戴きました。

このラベルは商品としての印象度は保ちつつもラベルサイズが必要最小限となり、紙の使用量が削減できるだけでなく、ラベル保護紙(フィルム)なども不要となり、消費後のラベルの除去と廃棄が簡便となります。

ラベル貼付が機械では行えず手間はかかりますが、その商品が生産され消費されるまで思い描く中で、一歩ずつ前に進むことができたらと考えています。

 

超玄い米から生み出される甘味、酸味、辛味、苦味、渋味という日本酒の「五味」が調和した豊かな味わいを、生酒でありましても是非「熱燗」からお楽しみください。

**************

そういうわけで、山恵錦91%精米の純米酒、一回火入れです。

上立ち香は懐の深い不思議な酒エキスの香りがたっぷりと。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にうっすらととろみ層を乗せて、どっしりと四股を踏みながら忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を次々と射掛けてきます。

粒から現出してくるのは甘味5割、旨味5割。

甘味は上白糖系の細身のタイプ、旨味が不思議で個性的なコクが無数に重なり合った印象で、旨味主導で原色系のカラフルな世界を描きます。

流れてくる含み香も濃い煮詰まった酒エキスの香りでデコレート。

後から酸味と渋味はほんの僅かに現れて、隠し味役を担います。

雑味はなく、純度の高い旨味が終盤まで類い希な舞いを続け、最後に飲み下した後の余韻も不思議なコクでした。

なんとも印象の残るお酒でした。

それでは長野のお酒、8本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年12銘柄目)

銘柄名「信濃錦(しなのにしき)超玄(ちょうげん)S91 純米 2022BY」

酒蔵「宮島酒店(長野県伊那市)」

分類「純米酒」

原料米「山恵錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「91%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=3140円」

評価「★★★★★(7.5点)」