長野「narai kinmon」端正な甘旨味が温暖で湿潤な世界を描く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

旧聞に属するお話になりますが、長野県の日本酒とワインが一堂に会する「信州のIPPON」というイベントに行きました。

その時飲んだお酒を10本ほど紹介したいと思います。

 

6本目はこれです。

narai kinmon(ならい・きんもん)純米大吟醸」。

長野県塩尻市の杉の森酒造さんが醸しているお酒です。

 

中山道の宿場町、奈良井で酒を醸してきた杉の森酒造が酒造りを止めて、休眠状態になったのが2012年です。

蔵の建物も含めて、そのまま朽ちてしまうのかと危惧されましたが、建物はリノベーションしてホテルとして再生することが決まり、酒造りは京都のKirakuが引き継ぐことになりました。

そして、京都の松本酒造で酒造りをしていた入江将之氏を杜氏に招き、酒造りを再開しました。

新生・杉の森酒造のお酒が発売されたのが2022年2月でした。

「narai」ブランドで、四合瓶5000円という高額戦略でスタートしました。

入江さんが1人で造るワンオペ体制で3季目に入っていますが、このほど、お酒のデザインをリニューアルしています。

黒のみを基調とした従来のデザインが、シックであるものの、今ひとつ目立たないとの声が多かったためで、鋭く聳える山々の上の部分を金色や白を使っています。

確かにこの方がよい気がします。

 

お酒の精米歩合は非公開ですが、多分、48%精米の純米大吟醸と思われます。

上立ち香は抑制の利いた仄かな甘い香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽やかな雰囲気で忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプル無垢な印象で、両者は足並みを揃えて潤いたっぷりのダンスを披露します。

流れてくる含み香も遠慮がちな柔らかな香りで薄化粧を付与。

後から酸味と渋味が適量現れて明快なアクセントを施します。

甘旨味は終盤までバランスに富んだ舞いを続け、最後は反転縮退して、切れよく喉の奥へと駆け去っていきました。

とても好感の持てる仕上がりでした。

それでは長野のお酒、7本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年11銘柄目)

銘柄名「narai kinmon(ならい・きんもん)純米大吟醸 2022BY」

酒蔵「杉の森酒造(長野県塩尻市)」

分類「純米大吟醸酒」

原料米「金紋錦」

使用酵母「協会7号」

精米歩合「非公開(たぶん48%)」

アルコール度数「14度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=5500円」

評価「★★★★★(8.0点)」