佐賀「東鶴 純米生酒 春陽」麗らかな春の様な甘旨味の舞いを小粋な香りが囃す | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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大井町の駅近くにある國酒文化振興酒場さんで角打ちをいたしました。

この店は佐賀県の酒を徹底的に揃えており(ごく一部例外あり)、この日も次々と佐賀のお酒を堪能することにしました。

4杯目にいただいたのはこれです。

東鶴(あづまつる)純米生酒 春陽」。

佐賀県多久市の東鶴酒造さんが醸しているお酒です。

 

近年、多くの酒蔵が興味を示しているのが4MMPと呼ばれる、白ワインのソービニョンブランや、クラフト系のビールの一部に含まれている、キリッと爽やかな香りです。

この香りを出すにはどうしたらいいのかは、多くの酒蔵で試みが進んでいますが、一方で「春陽という米を原料に使えばたいていは4MMPが出る」と言い切る蔵元もいます。

春陽は農研機構がアミノ酸の発生量を抑えられる酒米として2004年に開発していますが、当初はあまり評価されませんでした。

「お米を削ればアミノ酸の量を抑えられるのだから、あえて不要」と考えた蔵元がほとんどだったため、だと考えられます。

 

ところが最近、アミノ酸を抑制することで、4MMPが増えるのではないかと見る向きが増え、「高精白にしなくてもアミノ酸が抑制されるのであれば、都合がいい」と考える蔵が増え、春陽が再注目されているというわけです。

ただし、まだ、科学的に解明されていない部分も多いのです。

それでも、近年はその春陽を使って酒造りを試みるところが増えています。

佐賀の天山酒造、佐賀の光栄菊酒造、福岡の山口酒造場などです。

東鶴酒造も同様の目的で試験醸造したというわけです。

 

65%精米の純米、生酒です。

上立ち香はすっきりとした薄甘い香りが微かに。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快に滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系の適度に深みのある濃いタイプ、旨味は無垢でやや粗めの印象で、両者はゆったりと余裕を保ちながら麗らかな春を描きます。

 

流れてくる含み香はフルーティーで小粋な印象で、甘旨味を元気良く囃すのです。

後から酸味と渋味がやや多めに現れて、甘旨味をしっかりと締め付けます。

味わいは無駄に広がらずに限定的な範囲で踊り、終盤になると早めに縮退して昇華して行きました。

白ワインに直結はしませんでしたが、ドライなニュアンスは感じました。

それでは、佐賀のお酒、最後の5杯目をいただくことにします。

 

お酒の情報(23年121銘柄目)

銘柄名「東鶴(あづまつる)純米生酒 春陽 2022BY」

酒蔵「東鶴酒造(佐賀県多久市)」

分類「純米酒」「生酒」

原料米「春陽」

使用酵母「不明」

精米歩合「65%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3410円」

評価「★★★★★(98点)」