岩手「南部美人 純米吟醸」ごく中庸な甘旨味が大人しく無風の月夜を演じる | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

「南部美人(なんぶびじん)純米吟醸」。

岩手県二戸市の南部美人さんが醸しているお酒です。

 

南部美人は昨年(2020)暮れに、自蔵が造るお酒について非遺伝子組み換え(Non-GMO)認証を米国とカナダで取得しました。

 

米国の認証団体「Non―GMO Project」に申請して認められたもので、対象となるのは特別純米や純米吟醸など11種類の清酒と糖類無添加の梅酒や「ゆずレモン」などのリキュール3種類です。

米国でNon―GMO認証が広がっており、主力輸出先でマークがついていると販促にドライブをかけられると判断したからのようです。

南部美人は海外市場で日本酒をどんどん売ろうと、すでに2013年にはユダヤ教の戒律に沿う食品に対するコーシャ認証を取得し、さらに2019年には完全菜食主義者向けのビーガン認証も取得済です。

そのフットワークの良さには感心することしきりです。

 

さて、いただくお酒は純米吟醸の一回火入れですが、「瓶燗急冷却」と明快に表示してあるのは

好感が持てます。

上立ち香は薄甘い酒エキスの香りがほんのりと。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に産毛を薄らと乗せて、マイペースを維持しながら、ゆっくりと転がり込んできます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに穏やかな態度で膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を速射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は上白糖系の儚いタイプ、旨味はシンプルでややざらついた印象で、甘味は旨味の背後に回って、旨味主導でゆっくりとしたハーモニーを奏でます。

 

流れてくる含み香も酒エキスの香りで静かに囃します。

後から来るのはほんのわずかな渋味で隠し味役に徹します。

味わい全体はあくまでも静かに広がり、まるで無風の月夜を思わせる沈思黙考が最後まで続くのでした。

瓶燗急冷ならもう少し、生酒のフレッシュさも残っていて欲しかったです。

 

お酒の情報(21年119銘柄目)

銘柄名「南部美人(なんぶびじん)純米吟醸 2020BY」

酒蔵「南部美人(岩手県二戸市)」

分類「純米吟醸酒」「一回火入れ酒」「無濾過酒」

原料米「不明」

使用酵母「不明」

精米歩合「麹米=50%、掛米=55%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3300円」

評価「★★★★(4.3点=91点)」