栃木「澤姫 純米吟醸 ひとごこち」温室育ちの甘旨味が終盤までのんびりと徘徊する | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

澤姫(さわひめ)純米吟醸 ひとごこち」。

栃木県宇都宮市の井上清吉商店さんが醸しているお酒です。

 

井上清吉商店は昨年(2020)7月、本社のアンテナショップを改修し、16種類の澤姫を一度に試飲できる全自動サーバーを導入しました。

サーバーは冷蔵機能があり、1台に一升瓶が4本収容でき、内部のお酒を窒素ガスで押し出して、一回に10ミリリットルをおちょこに注ぐ仕組み。

 

一升瓶内のお酒の酸化も防げて、常に開封したてのお酒を楽しんでもらえるようになっています。

このサーバーをずらりと4台並べてあります。

このサーバーを1台置いてある酒蔵はありますが、4台で16種類のいろいろなお酒が試飲できるというのは、全国の酒蔵の中でも初めてなのではないかと思います。

 

井上清吉商店では、それまでも冷蔵庫からお酒を出して注ぐスタイルで試飲ができるサービスをしていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止には効果的と考えたようです。

 

蔵元の井上裕史さんは、「家飲みが増えて、蔵にお酒を買いに来てくれる人も増えている。たくさんのいろいろなお酒が試飲できた方が、より多くのお酒を買ってもらえることも期待している」と話しています。

 

今夜いただくのも、そんなサーバーの中に収容されている、ひとごこち50%精米の純米吟醸酒、火入れです。

上立ち香はお酒のエキスの香りが仄かに。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面にとろみ層を適度に乗せて、ゆったりとしたテンポで忍び入ってきます。

 

受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら適度な大きさの弾力性のある粒々を次々と射掛けてきます。

粒から現出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系のやや押し味の目立つタイプ、旨味も複数の個性あるコクが複層化しており、両者はやや足取り重く、ゆっくりと旋回します。

 

流れてくる含み香も酒エキスの香りで、静かに囃します。

後から酸味と渋味は極小量現れて、隠し味役に徹します。

刺激が不足して甘旨味は緩慢な動きから変化せず、終盤までとろりとした味わいを放ちながらぼんやりと踊り続けるのでした。

飲み下した後の余韻も長く伸びるのでした。

もう少し、切れ味があったらと思いました。

 

お酒の情報(21年65銘柄目)

銘柄名「澤姫(さわひめ)純米吟醸 ひとごこち 2019BY」

酒蔵「井上清吉商店(栃木県宇都宮市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「ひとごこち」

使用酵母「栃木T-S、T-F混合」

精米歩合「50%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「+4」

酸度「1.4」

情報公開度(瓶表示)「○」

標準小売価格(税込)「1800ml=3135円」

評価「★★★★(4.3点=89点)」