自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。
「風の森(かぜのもり)秋津穂 657 純米生酒」。
奈良県御所市の油長酒造さんが醸しているお酒です。
風の森の最大の特徴は、ALPHAシリーズの一部の例外を除いて、全量が無濾過、無加水の生酒だということですが、それに加えて、使う酵母は協会7号酵母に限定している点でしょう。
この辺について、蔵元社長の山本長兵衛さんは次のように話しています。
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一種類の酵母にすれば、異な酒米による味の違いがわかりやすく表現できるようになるからです。
協会9号酵母でもよかったのですが、協会7号酵母はスペックによって多彩な香りが出てきます。
露葉風の50%精米だとイチゴやパイナップルの香りが強く出るし、露葉風の80%精米だと熟し切っていないバナナやマニキュアの除光液のような香りが出てきます。
その辺が面白いので7号酵母を気に入っています。
また、風の森の酒質には酸が欠かせないのですが、協会7号酵母は有機酸をたくさん生成してくれるのでやりやすいということもありますね。
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多くの酒蔵が協会7号酵母を使うケースは純米酒で味わい優先、香り抑えめというのがお定まりなのですが、風の森はどんなスペックでもチャーミングな香りを放ってくるのです。不思議です。
さて、今夜いただくのは、地元産秋津穂の65%精米の純米酒、「65%精米の7号酵母使用」ということで「657」と表記しています。
上立ち香はパイナップルとライチのミックスした香りが鼻腔をくすぐります。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に油膜を張り、その上に無数の気泡をくっつけて、軽快なテンポで滑り込んできます。
受け止めて保持すると、気泡の涼やかな破裂をBGMにして膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。
粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。
甘味は潤いたっぷりの柔らかなタイプ、旨味は複数の若々しいコクが織り上がった印象で、両者は軽快に伸びやかなシンフォニーを奏でます。
流れてくる含み香は上立ち香同様の香りで薄化粧を付与。
後から酸味と渋味が適量現れて、明快なアクセントを付け、リンゴ酸とクエン酸の混じった酸味は甘旨味とさらなる高みを目指して躍り上がり、終盤になって気泡の破裂が静かになると、反転縮退して一気に昇華していきました。
二日目には気泡の破裂はなくなるものの、味わいのバランスは不変でした。
風の森の個性満載の逸品です。
お酒の情報(21年60銘柄目)
銘柄名「風の森(かぜのもり)秋津穂 657 純米生酒 2020BY」
酒蔵「油長酒造(奈良県御所市)」
分類「純米酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」
原料米「奈良県産秋津穂」
使用酵母「協会7号」
精米歩合「65%」
アルコール度数「16度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「○」
標準小売価格(税込)「720ml=1155円」
評価「★★★★★(4.5点=98点)」