山口「日下無双 生酛純米60」過熟した超太めの甘旨味をパワフルな酸味が締め付ける | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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自宅の晩酌に山口県岩国市の村重酒造さんのお酒をまとめて取り寄せて飲み比べをしました。

最後の3本目はこれです。

 

 

「日下無双(ひのしたむそう)生酛純米60」。

 

2本目と3本目の「日下無双」のお酒は平成30(2018)BYを最後に造るのを止めており、現在の在庫がなくなり次第、終売となります。

その理由は、この銘柄の誕生のきっかけになった杜氏の日下信次さんが平成30BYをもって、村重酒造を退職してしまったためです。

 

 

日下さんは広島市出身。高校を卒業後、製パン会社に勤めるものの、まもなく、手に職をつけたくなって、三宅本店(広島県呉市)に入社(1986年)して、酒造りの世界に飛び込みます。

必死の努力の積み重ねで杜氏の信頼を勝ち得て、1994年、28歳で東広島市の千代乃春酒造の杜氏に抜擢されました。

 

ところが、千代乃春酒造は2001年に休蔵してしまったため、村重酒造に移ってきました。

その後、普通酒主体だった村重酒造に「日下無双」という特定名称酒の銘柄を誕生させ、自らが広告塔になって銘柄育成に励んできたのです。

 

そんな日下さんも50代半ばですが、突然、何故、辞めてしまったのか。残念でなりません。

ちなみに、今季は佐賀県の天吹酒造で酒造りに加わっているとのことです。

 

 

さて、最後の3本目は、60%精米の生酛酒母の純米酒、火入れですが、平成26BYの造りで、5年も熟成させたお酒です。いただきます。

 

 

上立ち香は思い切り過熟して老成した重い香りがどろりと。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、表面に大量のとろみ層を乗せて、表面を激しくうねらせながら、ゆっくりと忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、とろみ層が崩れ、大振りの粘っこい粒粒となって、四散してきます。

粒から現出してくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は煮詰まったカラメルのよう、旨味も無数のコクが重層化しており、両者は超ヘビー級の徘徊を始めるのです。

 

流れてくる含み香も過熟の濃霧のような香り。

そこに追随してくるのが、パワフルなクエン酸系の酸味で、膨れて大きく広がった甘旨味をぎゅっと引き締めるのです。

味わいはかろうじて適度な活力を維持し、飲み下した後の余韻も適度に太めで踏みとどまりました。

 

 

「日下無双」の後継銘柄として今季登場するのは「村重」だそうです。

いずれ、飲んでみたいと思っています。

 

お酒の情報(20年84銘柄目)

銘柄名「日下無双(ひのしたむそう)生酛純米60 2014BY」

酒蔵「村重酒造(山口県岩国市)」

分類「純米酒」「生酛酒」

原料米「西都の雫」

使用酵母「協会8号」

精米歩合「60%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「720ml=失念」

評価「★★★★(4.0点)」