今年の9月9日に千葉市に上陸した台風15号は、房総半島に甚大な爪あとを残していきました。
大規模停電が長期化し、造りの真っ最中ではなかったものの、千葉県の酒蔵さんは対応に終われました。
そんな千葉の酒蔵を応援する目的で何本かを取り寄せて、晩酌にいただきました。3本目はこれです。
「東魁(とうかい)山廃純米」。
千葉県富津市の小泉酒造さんが醸しているお酒です。
被害状況について蔵元さんは次のように話していました。
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停電は12日間も続き、売店は休業を余儀なくされました
酒については生酒の貯蔵はほとんどなく、大半が火入れ済みだったので、なんとかなりました。
むしろ、台風の大雨が来るとひやひやするのが蔵の脇を流れる湊川の増水です。
湊川の左岸周辺で一番低いのがうちの蔵なんです。
このため、水が堤防を越えると一気に浸水の憂き目にあいます。
9月の台風でも氾濫危険水位を超えて、あと少しというところまで来たので、天にも祈る気持ちでした。
無事に乗り切れた時は脱力しました。
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被害が最小限でよかったです。
さて、お酒ですが、小泉酒造の自社田で栽培した五百万石米を使い、80%という低精白で醸した山廃酒母の純米酒、火入れです。いただきます。
上立ち香は甘味と酸味の香りがまだら模様になって漂ってきます。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に産毛を敷き詰めて、周囲を撫で回しながら、まっしぐらに転がり込んできます。
受け止めて保持すると、情熱的な態度でグイグイと膨らみ、拡散しながら、弾力性に富んだ粒粒を連射してきます。
粒から現出してくるのは甘味8割、旨味2割。
甘味は黒砂糖を思わせる唾液を刺激するタイプ、旨味はシンプルで、甘味に寄り添って、元気でエモーショナルな世界を描くのです。
流れてくる含み香も非常に濃くて甘い香りでデコレート。
後から来るのはたっぷりの酸味のうねりで、甘旨味の舞いに覆いかぶさって味わいに明快な輪郭を付与。
甘味と酸味は局地戦を展開して、マーブルな味わいへと昇華し、最後まで活力を失わずにコンテンポラリーな味わいを描ききるのでした。
まさに、モダン山廃の極上な仕上がりでした。
千葉を応援しようという機運が高まっている現在、是非、
県全体で千葉のお酒のアピールをしてほしいものです。
*一升(四合)三千円(1500円)以下の美酒に登録します。
お酒の情報(19年287銘柄目)
銘柄名「東魁(とうかい)山廃純米 2018BY」
酒蔵「小泉酒造(千葉県富津市)」
分類「純米酒」「山廃酒」
原料米「自社田産五百万石」
使用酵母「不明」
精米歩合「80%」
アルコール度数「16度」
日本酒度「+1」
酸度「2.0」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税抜)「720ml=1200円」
評価「★★★★★(4.4点)」