秋田「一白水成 良心 特別純米」きめ細かな黒砂糖のような甘味にコクが加わり、最後の渋味の締め付け | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

 自宅の晩酌にお酒を選びました。
 これです。

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 「一白水成(いっぱくすいせい)良心 特別純米」。
 秋田県五城目町の福禄寿酒造さんが醸しているお酒です。
 このお酒は一白水成の定番とも言える特別純米酒ですが、25BYのこのお酒には首のところに「良心」というラベルが貼られているのです。
 今年(2014年)2月の秋田の酒イベントにも出品されて、一口コメントのところには「蔵元の心を表しております」とありました。
 その心とはなにか。
 実はこのお酒は蔵元の渡辺康衛さんが、亡き弟である渡辺良衛さんの七回忌をこの冬(2014年2月)迎えたことから、改めて良衛さんの冥福を祈って「良衛への心へ」という思いから名付けたものだそうです。
 普段は空太郎も良衛さんの話を持ち出すことは控えていましたが、この時は「良衛さんが元気だったら、一白水成蔵も兄弟蔵の人気銘柄として名を轟かせていたに違いありません」などと申し上げさせていただきました。

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 良衛さんは2008年2月9日の早朝に醪の状態をチェックするために、仕込み部屋に行き、その際に、誤って仕込みタンクに転落して亡くなられたのです。
 享年24歳でした。
 近年、日本蔵の仕込タンクには転落防止の対策が施されているところが増えていますが、過去10年でも事故は何件か起きています。
 是非、災害ゼロの美酒造りを業界全体で取り組んでほしいと願います。

 さて、お酒は吟の精を麹米(55%)に、あきた酒こまちを掛米(58%)にした純米酒一回火入れです。
 いただきます。

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 上立ち香は一白らしく抑制気味に。
 玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、表面に溶かしバターを乗せて、ツルツルトロトロの感触を振りまきながらゆっくりと駆け込んできます。
 受け止めて保持すると、愚直な態度で少しずつ膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのウエットな粒粒を順番に射掛けてきます。
 粒から滲み出てくるのは甘味6割、旨味4割。
 甘味は黒砂糖をお湯で溶かして、よく漉して肌理を細かくした印象で、コクのある旨味と一緒に、しっかりとした味わいの踊りを展開。
 含み香も僅少。
 あとから来る酸味と渋味は最初は少量で勢いも弱めで味わいの隠し味役に徹するものの、甘旨味も増長することなく、限定的な味わいの放出を維持。
 終盤になると渋味が段々しり上がりに強くなりながら、甘旨味を縮退へと導き、飲み下した後の余韻は適度に短く、キレのよいものでした。

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 蔵元の思いがしっかりと滲み出ている美酒でした。

*一升2500円以下の純米旨酒に登録します。

★お酒の情報(14年259銘柄目)
銘柄名「一白水成(いっぱくすいせい)良心 特別純米 25BY」
酒蔵「福禄寿酒造(秋田県五城目町)」
分類「特別純米酒」「一回火入れ酒」
原料米「麹米=吟の精、掛米=あきた酒こまち」
使用酵母「不明」
精米歩合「麹米=55%、掛米=58%」
アルコール度数「17度」
日本酒度「+1」
酸度「1.4」
情報公開度「△」
標準小売価格(税抜)「1800ml=2240円」
評価「★★★★★(4.2点)」