愛知「蓬莱泉 美 純米大吟醸」ただただ美しく滑らかな旨味がほっそりと通り過ぎる | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

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 自宅でささやかお祝いの宴を開くことにして、お酒を選びました。
 これです。

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 「蓬莱泉 美 純米大吟醸」。
 愛知県設楽町の関谷醸造さんが醸しているお酒です。
 関谷醸造は90年代に大きく成長し、吟醸酒メーカーとしての地位を確立しています。
 その牽引役となったのが同社のフラッグシップ酒の純米大吟醸「空(くう)」です。

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 日本酒の需要がジリ貧になるなかで、90年代の10年間で売上高を4倍にまで増やしたのですから、驚きです。
 吟醸酒への傾斜、社員杜氏と社員蔵人による半機械化という流れはある種、山口県の「獺祭」と似ています。
 ただし、獺祭は早々と純米酒、かつ、大吟醸酒に特化しているのに対して、関谷醸造はいまなお普通酒レベルのお酒も造っています。
 2004年には第二工場となる稲武工場(吟醸工房)を立ち上げています。
 その蔵の杜氏は2000年に廃業した愛知県瀬戸市の柴田合名の杜氏だった荒川貴信さんです。
 柴田合名は「明眸」という銘酒を造っていましたが行き詰まり、関谷醸造に「明眸」ブランドを譲渡しましたが、その際、関谷醸造は杜氏であった荒川さんの能力を買って、スカウトしたそうです。

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 さて、お酒です。
 関谷醸造の大看板である純米吟醸は、精米歩合のレベルによって、値段の高い方から「吟」→「空」→「美」となっています。
 呑み比べると微妙に違いがわかりますが、単体で飲んでしまえば、正直わからないハイレベルのお酒たちです。
 「美」も山田錦45%精米の立派な純米大吟醸です。
 いただきます。 

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 上立ち香は華やかな甘い花の香りがそよそよとやってきます。
 口に含むと、中程度よりもひと回り小さな旨味のまん丸の塊が、表面を磨きこんで、さらにその上に白粉を施してシャナリシャナリとやってきます。
 軽やかな旨味は舌の上で転がすと、促されるままに膨らみ、拡散しながら、ドンドンと純白の真珠の粒を連射してきます。
 粒から現れるのはツルツルの甘旨味。嫌味のない洗練された甘旨味は加水によって薄くなっており、決してでしゃばることなく、味わいの中央で静かに踊り続けます。
 立ち上ってくる含み香は典型的なカプロン酸エチルの甘い香りで、強すぎず、弱すぎず、適度な量が昇華してきます。
 酸味や渋味は無縁。
 最後にやってくる辛さも少量ですが、甘旨味も謙虚なので、呑み下した後の余韻は切れもよく、爽やかな風が吹きぬけるかのようでした。 

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 典型的な大吟醸の美酒でした。

★お酒の情報(10年121銘柄目)
銘柄名「蓬莱泉 美 純米大吟醸 20BY」
酒蔵「関谷醸造(愛知県設楽町)」
酒分類「純米大吟醸酒」
原料米「山田錦」
使用酵母「不明」
精米歩合「45%」
アルコール度数「15度」
日本酒度「-1」
酸度「1.4」
情報公開度「△」
標準小売価格「720ml=2835円」
評価「★★★★」