新潟「嘉山 特別純米」蜂蜜のような粘っこい甘味に酸味が融合した味わいのお酒がこんなに安いの? | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

 東中野の銘酒居酒屋の大政小政さんで続いていただいたのはこれです。

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 「嘉山 特別純米」。
 新潟市の小黒酒造さんが醸しているお酒です。「
 越の梅里」を醸す小黒酒造は売り上げが2、3億円ある地酒蔵としては比較的大きい部類ですが、新潟には地酒といっても規模の大きな錚々たる蔵が目白押しなので、比較すれば“新潟の小さな蔵”になります。
 激しい販売競争に押されて、酒造りについて方向転換を模索したところ、昔ながらの杜氏さんの抵抗に逢い、
 「これからは蔵元が酒造りの方針も決めなければ生き残れない」
 と2005年(ごろ)、杜氏を解雇し、蔵元の小黒秀平さんが杜氏を兼務する体制にしました。
 濾過と火入れをしっかりやった淡麗辛口酒だけでは、飲み手のニーズに答えられない、という思いだったのでしょう。

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 その後、東京の有力酒販店の小山商店と長谷川越後屋酒店が共同で、小黒さんに「新しい酒質の酒を造ってほしい」と働きかけ、20BY(醸造年度)に新発売の運びになったものです。
 ですから、販売しているのも二店だけです。
 酒蔵さんが新しい銘柄で投入するお酒は近年、ことごとく「ムロゲン(無濾過原酒)」です。
 特にその生酒である「ムロナマゲン」が圧倒的に多いのです。
 ご多分に洩れず、この嘉山もムロナマゲン。
 新潟県が勝負を賭けている酒造好適米、越淡麗の60%磨きの純米酒です。
 いただきます。

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 ふーーむ、ふんわりと軟らかな香りが立ち上ってきます。
 含むと、相当、大振りの旨味の塊が、表面を波打たせながらゆっさゆっさとやってきます。
 重心の低い旨味は、舌の上で転がすと、これまたメタボなお腹を揺るかのような動きで少しずつ膨らんでいきます。
 その表面が各所でぷちっと破れると中からドロリとした粘っこい甘味が流れ出てきます。
 旨味よりも優勢な甘味は、まるで蜂蜜のようで、しばらく含んでいると少しずつ流動性を増してきます。
 そして、追いかけてきた結構な力強い酸味と手をつなぎ、味わいの舞台で踊ります。
 終盤になると酸味は踊り疲れて、いささか甘さが勝ってしまうのですが、それも許容範囲です。
 飲み下した後の余韻も甘い香りとともに長く伸びるのでした。

 まさに、甘甘甘スッパ酒です。
 洗練度はいまひとつですが、よく肥えたムロナマゲンです。
 新潟の酒蔵さんもやればできるのです。
 そして、先行組の成功を見て、少しずつですが、変わろうとしているのです。
 小黒酒造さんも早く、全量を無濾過、無加水のお酒に切り替えて、勝負をかけてほしいなあ、と願う空太郎でした。

*一升瓶三千円以下の美酒に登録します。

★お酒の情報(09年505銘柄目)
銘柄名「嘉山(かやま) 特別純米 越淡麗 20BY」
酒蔵「小黒酒造(新潟市)」
酒分類「純米酒」「生酒」「無濾過酒」「原酒」
原料米「越淡麗」
使用酵母「協会1801号」
精米歩合「60%」
アルコール度数「18度」
日本酒度「-11」
酸度「2.0」
情報公開度「△」
標準小売価格「1800ml=2580円」
評価「★★★★」