酵母違い比べ①高知「亀泉 純米吟醸 CEL19酵母」香りは思ったよりも抑え目で、適度な甘旨味がし | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

 東中野の銘酒居酒屋の大政小政さんで、同じ銘柄のスペックで醸造年度違いの味比べを楽しんだ後は、同一銘柄の純米吟醸で、使っている酵母が違うお酒の味比べをすることにしました。
 銘柄はこれです。

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 「亀泉 純米吟醸」。
 高知県土佐市の亀泉酒造さんが醸しているお酒です。
 亀泉酒造さんは、高知県が独自に開発した清酒酵母を積極的に利用している酒蔵さんです。
 高知県は1980年に入って吟醸酒ブームが起きると、独自の清酒酵母を開発して、酒どころ高知の酒蔵を支援することにしました。清酒酵母開発というと、優れた吟醸酒などを醸す酒蔵の蔵に棲みついている大量の野生酵母を採集し、その中から優良酵母を特定する、というやり方が当初は一般的でした。
 ところが、高知県工業技術センターは細胞融合などのバイオ技術をフル活用して、リンゴ系の香り成分のカプロン酸エチルやバナナ系の香りの酢酸イソアミルをたくさん生成する酵母の開発に、平成元年ごろから着手しました。

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 そして、平成3年の「KW-77」を皮切りに、4年に「A-14」、5年に「CEL-19」「CEL-24」の二種、6年に「AC-17」と矢継ぎ早に開発しました。
 その後は7年ほどあいて、平成13年からは前者5種の改良酵母などを続々と投入しています。
 高知の酒蔵さんはこれらの中から、自蔵のコンセプトにあった酵母を採用していますが、その中で、カプロン酸エチルの産生割合の高いCEL酵母を積極的に使っているのが、亀泉酒造さんなのです。

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 そこで、今夜は「CEL-19」と「CEL-24」を呑み比べます。
 一杯目の「CEL-19」はカプロン酸エチルとリンゴ酸が多く、酢酸イソアミルはやや少ないという性質があるようです。
 いただきます。

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 うーむ、上立ち香は特筆すべきほどのものはありません。
 普通の吟醸酒並みです。
 含むと、中程度よりも気持ち小さな旨味の塊が、表面をきれいに磨いて、つるつるになってアタックをかけてきます。
 旨味は受け止めると、軽快に膨らみ、拡散しながら、中小粒の新たな旨味を放ってきます。
 粒から弾け出てくるのは適度な甘味が加わった品のいい旨味です。
 おだやかな旨味はぱっと広がるものの、味わいの舞台全体を占領することなく、自重しながら、引き締まった味わいを展開するのです。
 後から微量の酸味と渋味が現われると、味わいはさらに引き締まり、飲み下すとすきっとした余韻が残るのでした。

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 これは香り吟醸酒ではなく、味吟醸酒です。
 うまいけど。
 CEL-19酵母は個性という面ではいまひとつだな、と勝手に断じながら、もうひとつのCEL酵母純吟に移ります。

★お酒の情報(09年502銘柄目)
銘柄名「亀泉 純米吟醸 兵庫山田錦 20BY」
酒蔵「亀泉酒造(高知県土佐市)」
酒分類「純米吟醸酒」「生酒」
原料米「山田錦」
使用酵母「CEL-19」
精米歩合「50%」
アルコール度数「16~17度」
日本酒度「+5」
酸度「1.7」
アミノ酸度「1.2」
情報公開度「◎」
標準小売価格「1800ml=3130円」
評価「★★★★」