一番有名な漢方薬と言えば『葛根湯』でしょう。
風邪のひき始め等に使われる漢方薬ですが、実は『葛根湯』には4種類あります。
日本薬局方にある「葛根湯エキス」の製法の部分を見てみると、
「①~④の処方に従い生薬をとり,エキス剤の製法により乾燥エキス又は軟エキスとする。」とあります。
その記述の上には表があり、よく見ると、使われている生薬成分はどれも同じ『7種類(葛根・麻黄・大棗・桂皮・芍薬・甘草・生姜)』ですが、生薬成分の「含まれている量に違い」があることがわかります。
①と④の全量を比べると、①は25g、④は17gと、「8g」も差があります。
また、②と③を比べると、全量はどちらも同じ18gですが、「麻黄」と「生姜」の量がどちらも1gずつ違うだけです。
そのため、その違いが4種類あるので「『葛根湯』には4種類ある」というわけです。
以前、「安中散」を例にお伝えしたと思いますが、漢方薬のほとんどは、このように1つの漢方薬に対して数種類の処方があります。
そして、漢方薬メーカーである「ツムラ」や「クラシエ」「コタロー」などは、その数種類の処方から1処方を選び、「ツムラ葛根湯」「クラシエ葛根湯」「コタロー葛根湯」と名前を付けて販売しているわけです。
A:ツムラ葛根湯エキス顆粒・・・③の処方
本品7.5g中
日局カッコン 4.0g
日局マオウ 3.0g
日局タイソウ 3.0g
日局ケイヒ 2.0g
日局シャクヤク 2.0g
日局カンゾウ 2.0g
日局ショウキョウ 2.0g
上記の割合の混合生薬の乾燥エキス3.75gを含有する。
B:クラシエ葛根湯エキス顆粒・・・①の処方
本薬1日量 (7.5g) 中
日局カッコン 8.0g
日局マオウ 4.0g
日局タイソウ 4.0g
日局ケイヒ 3.0g
日局シャクヤク 3.0g
日局カンゾウ 2.0g
日局ショウキョウ 1.0g
上記の混合生薬より抽出した、日局葛根湯エキス5,200mgを含有する。
C:コタロー葛根湯エキス細粒・・・②の処方
本剤7.5g中
日局 カッコン 4.0g
日局 マオウ 4.0g
日局 タイソウ 3.0g
日局 ケイヒ 2.0g
日局 シャクヤク 2.0g
日局 カンゾウ 2.0g
日局 ショウキョウ 1.0g
上記の混合生薬より抽出した、葛根湯の水製乾燥エキス4.8gを含有する。
この「分量の違い」は、以前もお伝えしましたが、治療効果を考えるうえでは影響はあまりありません。
が、注意したほうがいいときは『飲みやすさを考えるとき』や『漢方薬を同時に数種類服用するとき』です。
「分量の違い」は、味を変えたりしますので「飲みやすさ」に影響しますし、漢方薬には副作用を考えなければいけない生薬成分(甘草(1日量2.5g以上は注意!)や麻黄、附子など)もありますので、そのような場合は気にしたほうがいいでしょう。
ついでに「ツムラ葛根湯」のページを見てみましょう。
現在、医療用漢方製剤の『葛根湯』が1種類、一般用漢方製剤の『葛根湯』が4種類あります。
一般用漢方製剤の『葛根湯』を上から見ると、
あ:ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A(内容量10日分):③の2/3の分量で、2包(5.0g)中、葛根湯エキス2.5gを含有します。
い:ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A(内容量8日分):③の2/3の分量で、2包(5.0g)中、葛根湯エキス2.5gを含有します。
う:ツムラ漢方内服液葛根湯:①の分量で、1日量90mL(30mL×3本)中、生薬より抽出した葛根湯エキス8.3gを含有します。
え:ツムラ漢方内服液葛根湯液2:①の分量で、1日量90mL(45mL×2本)中、生薬より抽出した葛根湯エキス8.3gを含有します。
「あ」と「い」は、内容量とパッケージの違いだけですね。
「う」と「え」は、1日の服用回数に違いがあります。「う」は3回で「え」は2回。どちらも15歳未満は服用できません。
同じ名前の漢方薬でも、商品によって内容が違うので、一般薬でもやはり用法・用量を気にしないとといけないというわけです。
なお、中国の『葛根湯』の分量は日本のものと大きく異なります。
カッコン 9.0g
マオウ 6.0g
タイソウ 5.0g
ケイヒ 6.0g
シャクヤク 6.0g
カンゾウ 5.0g
ショウキョウ 6.0g
中国の『葛根湯』は、「傷寒論」や「金匱要略」という古典医学書を基に配合されているので、日本の処方と大きく異なります。
理由は「水」や「気候」の違いがあるためです。
日本の「水」の多くは「軟水」ですが中国は「硬水」で、「気候」は日本は「湿気の多い気候」に対し、中国は「乾燥した気候」です。湿潤地域では身体を乾燥させる漢方を使い、乾燥地域では身体を潤す漢方が好まれます。
ですので、海外(中国)で現地の漢方薬を服用するときは、特に注意が必要となります。
参考資料:
薬の比較と使い分け100(著:児島 悠史)
参考URL: