『インフルエンザ』の歴史は古く、現在最も古い記載は、ヨーロッパの紀元前412年「ヒポクラテス」と「リヴィ」によるもので、「ある日、突然多数の住民が高熱を出し、震えがきて咳が盛んに出た。たちまち村中にこの不思議な病気は広がり、住民たちは脅えたが、あっという間に去っていった」と記述されています。
(なお、紀元前430427年のアテネの疫病として「ツキジデス」という人が記載した疫病が『インフルエンザ』ではないかという説もあります。)
11世紀には、明らかに『インフルエンザ』の流行を推測させる記録が残っており、16世紀にはすでに『インフルエンザ』という名で呼ばれていたようです。
 
『インフルエンザ』は、イタリア語の「星の影響(influence)」が語源で、流行が周期的に現れることから、イタリアの星占いたちが名付けたとされています。
 
日本では、奈良時代には『インフルエンザ』が存在していた形跡があり、平安時代(貞観4年:862年)には『インフルエンザ(平安・鎌倉時代には「しはぶきやみ」と呼ばれている)』の流行をうかがわせる記述が歴史物語「増鏡」にあり、「ことしは、いかなるにか「しはぶきやみ」はやりて、人多くうせ給ふ中に・・・」と記述されています。
また、わが国最古の医学書「医心方(984年)」には、「咳逆(しはぶき)咳逆疫(しはぶきやみ)」の記述があり、「源氏物語(1008年)」のヒロイン「夕顔」は「六条御息所」の嫉妬により呪い殺されたのではなく『インフルエンザ』でなくなった可能性が高いと考えられています。「夕顔」の死後も、光源氏も同じ症状を起こすため、「夕顔」から『インフルエンザ』に感染した可能性が高いとされています。
平安時代後期に書かれた「大鏡」には「一条天皇」が「しはぶき」で亡くなっているとの記述もあります。
江戸時代には、宝永年間(1707年)から慶応2年(1868)までに、23回の流行の記録があり、『インフルエンザ』は「お駒風」「谷風」「薩摩風」「琉球風」「アメリカ風」などと呼ばれていたそうです。
「谷風」は「力士風」とも言い、最強の名横綱「谷風梶之助」の名前からきています。「谷風梶之助」は実際、『インフルエンザ(御猪狩風)』で1795年に亡くなっています。
『インフルエンザ』は明治時代にも流行し、当時は江戸時代にも呼ばれていた呼び名「お染風」と呼ばれていたそうです。
「お染風」の「お染」は「お染久松」という浄瑠璃・歌舞伎の登場人物からきており、宝永7(1710)大坂でおきた「お染」と「久松」の心中事件を題材にした物語で有名です。
当時、「お染風」が流行ると、風邪除けのために『久松るす』という張り紙を玄関や軒下に張り付けたんだそうです。意味は、「あなたの大好きな「久松」さんは留守をしておりますので、この家に「お染風」さんは会いに来ないでね。」と言う意味なんだそうな。
(「久松るす、お染御免」と書く場合もあります。)
 
『インフルエンザウイルス』が発見されたのは1933年。最近です。
A型ウイルスがまず発見され、1940年にはB型ウイルス、1949年にはC型ウイルスが発見されています。
A型ウイルスには、「HA(ヘマグルチニン・赤血球凝集素):16種類」と「NA(ノイラミニダーゼ):9種類」の2つの突起があります。
HA」は、ウイルスが細胞に感染するときに使い、「NA」は細胞で作られた子孫のウイルスが細胞外へ出るときに使います。
この2つの組み合わせで、16×9144種類ものウイルスが存在します。
『インフルエンザ』のワクチンは、この144種類の中とB型でその時期に流行りそうだと思う数種類(2017/2018シーズンはA2種、B2種。)だけを考え作られていますので、「ワクチンが効かない」ということがあるのです。
B型ウイルスは「HA」も「NA」も各1種類(本当はHA2種)ずつで、亜型はないとされています。
C型ウイルスには「NA」がなく、亜型もありません。
ですので、現在世界的に流行(パンデミック)するのは、A型のみとなります。
19181920年:スペインかぜ(H1N1)
19571958年:アジアかぜ(H2N2)
19681969年:香港かぜ(H3N2)
19771978年:ソ連かぜ(H1N1)
A型は、特に「渡り鳥」が保有することが多いため、流行しやすいのです。
 
2018530日現在、私の薬局に5月だけで『インフルエンザ(A)』の患者さんが5名ほど来られています。場所によっては『インフルエンザ』による学級閉鎖があったところもあります。
5人ぐらいなら心配しなくてもよくね?と思うかもしれませんが、気が抜けたところに奴らは入り込んでくるかもしれません!
まだまだ、ご注意を!
 
参考URL
https://blogs.yahoo.co.jp/ito_pharmacy/69202017.html (インフルエンザ豆知識)
https://blogs.yahoo.co.jp/ito_pharmacy/69202017.html (インフルエンザ豆知識 妊娠中・授乳中)
https://blogs.yahoo.co.jp/ito_pharmacy/69731350.html (インフルエンザの吸入器の使い方)
https://kotobank.jp/word/お染%2F久松-1131147