株式会社インシップ 広告表示差止訴訟の判決 2022年9月20日 | 林田学監修:適格消費者団体の動向

林田学監修:適格消費者団体の動向

元政府委員・薬事法ドットコム社主の林田学です。適格消費者団体の動向についてお伝えしていきます。
適格消費者団体は、景表法・特商法に関して消費者庁を補完する役割を果たしており、その動向は重要です。

 

1.概要

  • インシップ社がノコギリヤシサプリについて頻尿防止を暗示する広告を行っていたことに関し、適格消費者団体消費者ネットおかやまが2020年2月19日、景表法違反としてその差止を求めて岡山地裁に提訴した。2022年9月20日、岡山地裁は「ノコギリヤシの頻尿改善効果を肯定する研究報告等も相当数見られるのであるから、ノコギリヤシに、少なくとも個人差のある一定程度の頻尿改善効果が認められる可能性は否定しきれない」と述べて、インシップ勝訴の判決を下した(インシップ社、勝訴の告知)。
 

 

2.コメント

  • 適格消費者団体による広告差止請求訴訟の重要先例は、クロレラ広告チラシに関する京都地裁2015年1月21日の判決がある(クロレラチラシ事件)。
 
  • そこでは、「医薬品的効果を訴求しているが、医薬品として認められているものではないから、その点において優良誤認になる」というロジックが展開されていた。
 
  • このロジックに従うならば、本件でもインシップ社の健食は医薬品として承認されていないのに、医薬品的効果を訴求しているので優良誤認になるはずだが、本判決は京都地裁のロジックには従わず、「医薬品として承認されているか否か」という形式的基準ではなく、暗示している効果が本当にあるのか否かを実質的に判断している。
 
  • 京都地裁のロジックは、適格消費者団体が景表法違反として裁判外で広告の差止を請求する際にしばしば採用されているロジックだが、(簡単に言えてしまうため)本判決によりこのロジックの採用は今後難しくなると思われる。