バレエ「眠れる森の美女」の豆知識をご紹介する雑学シリーズ第四弾。
過去3回はこちらから。
今回は、有名な「青い鳥とフロリナ王女」についての雑学です。
発表会やコンクールでも定番の「フロリナ王女のヴァリエーション」ですが、彼女がどのような人物かはご存知でしょうか?
チルチルとミチルが出てくる「青い鳥」じゃないよ、くらいは分かっていても、ストーリーは知らない方も多いかもしれません。
「青い鳥って元から鳥じゃないの?」
「あれって、2羽の鳥の踊りじゃないの?」
と思われている皆様、実は違います!!
振付は習っても、その意味まで説明されることって意外とないかもしれないバレエ界隈。
背景を知って踊れば、フロリナ王女のヴァリエーションも、また違った気持ちで踊れるかもしれません。
ということで、早速、「青い鳥とフロリナ王女」のストーリーを見ていきましょう。
↓パリ・オペラ座バレエ公演より
「青い鳥とフロリナ王女」の原作は、ドーノワ夫人という17世紀フランスの貴婦人が書いた「妖精物語(contes de fées)」という物語集の一話である「青い鳥(L'Oiseau bleu)」。
ちなみに、ドーノワ夫人、15歳の時に30歳のドーノワ男爵と結婚、夫が反逆者として告発され裁判沙汰、逮捕状を出されて逃亡、スパイ活動に従事した可能性もあり…と、まるで映画化できそうな経歴の持ち主です。
プティパは、2人のパ・ド・ドゥを、「青い鳥がフロリナ王女へ飛び方を教え、一緒に塔から飛び出そうとする」という設定で振付しました。
フロリナ王女の振付も、塔の部屋で、王女が青い鳥が教えてくれたことを思い出しつつ、飛び方を繰り返し練習しているようにも見えます。
↓ボリショイバレエのリュドミラ・セメニャカによる、台詞が聞こえてきそうなフロリナ王女のヴァリエーション
そして、最後のコーダでは、フロリナ王女は青い鳥と共に大空へ羽ばたき、ついに自由の身になります。
青い鳥と一緒に、ブリゼ→アラベスク→パ・ド・シャを繰り返し、舞台を横切る箇所が、フロリナ王女が幽閉の身を解かれた様を表現しています。
↓ワガノワ・メソッドのお手本のようなイリーナ・コルパコワ。コーダの足さばきの美しさは必見です。
最近では、まるで2羽の鳥を思わせる衣装や振付も増えましたが、オリジナルでは、フロリナ王女は明確に人の姿のままで、唯一鳥を思わせる動きをするのが、コーダでのシークエンス。
背景を分かって観ると、発表会やコンクールでよく見かける踊りでも、また違った見え方ができるかもしれませんね。
おまけ映像で、バレエ界のレジェンド達の青い鳥
若き日のルドルフ・ヌレエフの青い鳥(抜粋映像)
キーロフバレエで、ヌレエフのライバルであったユーリー・ソロヴィヨフの青い鳥。大空へ飛び立ちそうです。
ちなみに、「青い鳥とフロリナ王女」の続きが気になる方は、邦訳も出版されていますので、是非一度手にとってみてください!
↓アンドルー・ラング世界童話集に収録されています。出版社・バージョンによって収録巻が異なるのでご注意を!
〇東京創元社からの邦訳 「青い鳥」は、「第3巻:みどりいろの童話集」に収録
(Amazonでは、びっくりする価格だったので、図書館を探していただく方がいいかも)
参考HP
文中の「青い鳥」のあらすじは、こちらの原文をもとにまとめました
画像はこちらからお借りしました