バレエ「眠れる森の美女」の豆知識をご紹介する雑学シリーズ第二弾。

 

第一弾は、こちらから。

 

 

 

今回は、カラボスの呪いで100年の眠りにつくオーロラ姫が、作中で与えられた役割を、彼女の名前を鍵として紐解いていきます。

 

↓今日もお供は、英国ロイヤルバレエ「眠れる森の美女」(1978年)全幕映像です。

 

↓オーロラ姫は、メール・パーク。彼女は、1975年の来日公演でもオーロラ姫を披露しています。

 

実は、バレエ「眠れる森の美女」の元であるペローの「眠れる森の美女」やグリムの「いばら姫」では、ヒロインの姫には名前がついていません。

「眠れる森の美女」=オーロラ姫というイメージは、ディズニー映画によって、世界中に広まったともいえるかもしれません。

 

オーロラという名前は、ペロー版では、目覚めた姫と王子が結婚した後、2人の間に生まれた子供の名前です。

では、どうしてバレエでは、ヒロインの名前として「オーロラ」が選ばれたのでしょうか。

 

その背景としては、やはり「眠れる森の美女」がフランス絶対王政へのオマージュとして制作されたことが深く関わっています。

絶対王政を象徴する君主ともいえるルイ14世が自らのイメージとして用いたのが太陽神アポロン。

彼を中心とした秩序、平和な治世の悪に対する勝利が、作品のテーマ。

 

そして、オーロラ(アウロラ)は、曙の女神で、馬車で夜明けの空を駆け巡り、夜の闇を追い払い、太陽の到来を告げる役割を担っています。

そのため、「眠れる森の美女」の作中では、オーロラと命名された王女は、光明をもたらす象徴として描かれていると考えられます。

 

 

また、バレエでは各幕で、オーロラ姫の「生誕」→「青春」→「愛」→「結婚」というライフステージを見せるよう構成されています。

そして、ストーリーの核といえる「眠り」と「目覚め」は、古来から季節、更には生命の移ろいと紐づけられてきました。

例えば、ギリシア神話の冥界の女王ペルセポネーの話では、彼女が冥界に留まる間は、世界は冬に覆われ、地上に戻ることを許された時に春が始まるとされています。

 

 

↓英国ロイヤルバレエ公演より目覚めのシーン

1幕で村人たちが踊る花のワルツは、まさに「春の訪れ」や「生命の息吹」を思わせるものですし、第3幕のアポテオーズは、世界に秩序が戻ったことを告げるように構築されています。

 

↓第3幕のアポテオーズ 

 

この場面が、太陽神アポロンの勝利という寓話の象徴であることは、プティパ初演版を復刻したマリインスキーバレエのヴィハレフの演出が分かりやすいです。

ここでは、宮殿の背景がせり上がり、太陽神アポロンを中心とした壮大な天上の世界が広がります。

全ての者があるべき場所に落ち着き、オーロラ姫が世界に光をもたらす象徴であることがよく伝わります。

 

 

次回は、オーロラ姫を守る役割を果たすリラの精について深掘りしてみたいと思います。

 

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