【報告】生存権―「生きさせろ」と社会保障制度「改革」
グローカル座標塾第3回
生存権――「生きさせろ」と社会保障制度「改革」(白川真澄)
1月23日、グローカル座標塾第3回が開かれた。テーマは「生存権――「生きさせろ」と社会保障制度「改革」」。講師は白川真澄さん。
講演では、最初に社会保障制度とは何か。生存権=「人間らしい最低限の生活を営む権利」を保障するのが、社会保障制度であると定義。そして、社会保障制度とは、「顔を知らない者」どうしの社会連帯の仕組みである。
社会保障制度として、社会保険制度、所得再配分、税方式と保険方式について説明。
続いて、福祉国家の成立・展開と再編の歴史。そして戦後の日本が、福祉国家=北欧・西欧、軍事国家=米国と比較して、「企業国家」であり、「日本型福祉社会」と称して、女性に負担を押し付け、福祉国家にならなかったこと。
その日本で、小泉構造改革によって社会保障制度の縮小が進んできた事実を指摘。
そして、現在の社会保障制度の危機として、医療分野、高齢者介護、年金、雇用保険について問題点=危機の諸相を具体的に説明。「障害者自立支援法」のような応益負担原則を強制しているのは日本だけだと批判。
現在の社会保障制度の危機の原因である財政再建至上主義を批判。そして、増え続ける社会保障給付費を支えるために負担増は避けられず、必要。問題は負担増の方法が消費税アップしかないかのように、政治やマスコミで扱われている。
今求められているのは、「低福祉低負担社会」から「高福祉高負担社会」への転換である。「先に消費税アップありき」の考え方は転倒している。そして、増税の前提条件として、所得税の累進性の強化、相続税強化、軍事費大幅削減、大企業優遇措置撤廃などをあげた。
最後に、生存権を保障するのは社会的セーフティネットとして「ワークフェア」か「ベーシックインカム」という2つの政策・考えを提示。
「ワークフェア」政策は生き方の選択肢の拡大で、否定はできないが、障害者への就労強制につながる危険を指摘。
一方、「ベーシックインカム」は生きている限り、労働と無関係に「基本所得」を支給するということ。この場合、受給者と税負担者の間でどのような社会的連帯関係が成り立つか。俗っぽく言えば、近所の「どら息子」の面倒はみれても「顔を知らないどら息子」の面倒をみることができるかどうかと締めくくった。
続いて、質疑応答が行われ、医療問題や財源問題、竹中ら市場原理主義者の精勤を明確化させる必要性など様々な意見・質問が出された。
次回=第4回は2月20日に「ポスト・モダン思想の功罪」、講師・宮部彰
【報告】山田朗講演会 「何が「田母神」を生み出したか――自衛隊と歴史修正主義」
【報告】山田朗講演会 「何が「田母神」を生み出したか――自衛隊と歴史修正主義」
1月21日、講演会「何が「田母神」を生み出したか――自衛隊と歴史修正主義」を文京区民センターで開催された。講師は、山田朗さん(明治大学教員、日本近現代史・軍事史)。昨年10月に明らかになった田母神論文問題を扱った。主催は国連・憲法問題研究会。
山田さんは「何が「田母神論文」を生み出したか――自衛隊と歴史修正主義」と題して講演。
講演で山田さんは、田母神俊雄航空幕僚長の問題が個人の問題でないことを強調。最初に「田母神論文」の徹底検証を行った。
田母神論文を①戦前国家のプロパガンダの繰り返しであること②冷戦時代のコミンテルン陰謀史観の焼き直しであること③歴史観として破綻していること④現行の防衛政策批判の4つに分けて具体的に検証。
1点目の田母神論文が戦前プロバガンダの繰り返しであることについて、論文の内容を「合法論」「日本被害者論」「植民地支配美化論」「解放戦争論」に分類して、1つ1つ誤りを指摘。
田母神の「戦前の日本軍の中国・朝鮮への駐留は条約に基づく」という主張に対しては、帝国主義の時代の条約そのものが対等ではなく侵略の結果。田母神は中国・朝鮮の「駐留」に限定しているが、1940年の北部仏印や41年のタイへの「進駐」は条約がなかったなどと、具体的に反論。
2点目の「蒋介石はコミンテルンに操られていた」という田母神論文に対しては、蒋介石政権がソ連の援助を受けていたことは事実だが、米英の支援も受けており、コミンテルンが蒋介石を操っていたならば国共内戦など起こりようがない。
東京裁判でマインドコントロールと田母神はいうが、東京裁判はニュルンベルク裁判でのナチに当たる存在を陸軍とし、吉田茂をはじめ親英米派の復活が目指した。「国体護持のために必要な人たち」=天皇を支えていたエリートを護持したのが東京裁判である。ここでも一つ一つ間違いを指摘。
そして、「侵略国家というのはまさに濡れ衣」「歴史を抹殺された国家は衰退の一途をたどる」という田母神に対して、アジア諸国の被害から日本の侵略は動かしがたい事実であり、侵略の歴史の抹殺こそ「衰退の一途をたどる」ことだと真向から反論した。
講演の後半では、「田母神論文」が生まれた背景について述べた。
自衛隊内では戦前・戦中への反省皆無の歴史観が蔓延していることを指摘。田母神問題は自衛体内で軍隊化を求める「マグマ」が上昇していることを示す。78年栗栖発言と同じ危険な兆候。
冷戦終結によりヨーロッパでは軍縮が進んだが、日本は米軍と一体化した海外派兵で軍縮を免れた。海外派兵を進めた日本は、一貫して軍拡を進め、海上自衛隊の艦艇トン数が湾岸戦争時の30万トンが17年で1.5倍に増え、海上兵力世界5位になるなど、主要軍事大国となった。
ヘリ3機搭載、4950トンのはるな型護衛艦の後継としてヘリ10機搭載、13500トンのひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦を建造中。これは空母そのもの。おおすみ型輸送艦=揚陸艦も建造している。
自衛隊は海外では軍隊として扱ってもらえ、心地がよい。だが、国内では「軍隊のようなもの」。隊内では不満がたまり、幹部は改憲論に傾斜している。一般隊員では自殺、パワハラ・セクハラが横行している。一般隊員の自由を押さえつけてきたのが、「言論の自由」を言う田母神。
「田母神論文」は、自衛隊が集団的自衛権を行使できる「自立」した本格的軍隊になることを呼びかけている。
最後に、「市民としてできること」が提言された。
市民がもっとイラクの実態、自衛隊の活動の実態に関心をもち、実態を明らかにする作業を進める必要がある。戦争の実態・歴史を市民が知ることが必要。日本の軍拡に対抗して中国の空母建造など、アジアの軍拡競争が拡大している。
昨年4月17日のイラク派兵違憲名古屋高裁判決を活かし、「田母神論文」・アフガニスタン派兵・派兵恒久法への批判に応用を。
質疑応答では、東京裁判、旧海軍、文民統制、背広組と制服組の関係など様々な質問が出された。田母神の同窓生から地元のシンポジウムで田母神に質問したことについての発言も。
質問に丁寧に答えた山田さんは、「田母神は安倍政権後、改憲派にとって久しぶりに現れたスター。内容は荒唐無稽だと専門家が田母神論文の相手をしないのはいけない」と、批判の必要性を指摘した。
【報告】1・18三条・再びガザ虐殺抗議街頭アピール
1・18三条・再びガザ虐殺抗議街頭アピール
1月18日、先週に引き続き、さぼてん企画が呼びかけた街頭アピールに行ってきました。イスラエルの欺瞞的な「一方的停戦」が報道されたこの日の街頭アピールには、述べ60人以上が参加していました。子どもの数も先週よりちょっと増えてました。日本の子もアラブ系と思われる子も同じようにキャンドルで火遊びする悪がきでした。報道ではイスラエルに殺された子どもの数は400人以上。何ともいえない気持ちになります。マクドナルド、スターバックス、コカコーラなどイスラエル支援企業のボイコットも呼びかけられました。
最後はみんなで「free!free!Gaza!」「free!free!Palestine!」「Israel stop the killing!」をコールしました。 (P)

