日比谷野外音楽堂、通称野音と呼ばれるこの場所が好きだ。


昨夏この野音で開催されたTHE MODS 40th Anniversary Live Encore 続・約束の夜。一年の時を経てようやくそのDVDが我々の手元に届けられた。


2022年7月9日(土)


開場17時、開演18時より何時間も前だという13時過ぎにはすでに野音の前に立っていた自分。グッズの先行販売が14時開始ということもあったがそれだけが理由ではない。

やはりモッズファンにとって野音でのライブは特別。そんな日は朝から居ても立っても居られなくなり、ついつい早く足が向いてしまうのだ。


早く会場にたどり着いた者へのご褒美というわけけではないが、サウンドチェックで奏でられる曲の数々を愉しむこともできる。野音のサウンドチェックでは本編で演奏しない曲が披露されるのがちょっとした、否、ビッグなファンサービスだ。



さて、こうやって作品となったDVDで改めてあの日のライブを目にしてみると、随分とあの日の演奏シーンを覚えていないことに気付かされる。DVDで初めてこのライブに触れた、そんな感じですらあった。


モッズの野音ライブはこの時で4度目だったが、こんなことは初めてだ。

この日はいつもと違って古くからの仲間が隣にいた、そんな嬉しさもあったのかも知れない。そんなことに加えて、この日の自分はいつも以上にライブの瞬間、瞬間、その時をすき間なく噛みしめていたのかも。



この日のオープニングナンバーは「S.O.S」。こんな曲をオープニングにもってくるところがモッズらしいといえばモッズらしい。

世界のNEWSが聞こえる
GASと渇きに犯される
人は地球の独裁者なのか

紙面のTOPを飾るのは
血に塗られた人と人
どれぐらい傷を受ければ気づく

曲が作られてから30年以上経ってもリアルに聴こえるのは、この世界があの頃からちっともいい方に変わってはいないということか。
どんなに傷を受けても気づかないのは海の向こうの独裁者だけではなく、この国の我々も同じなのかもしれない。


モッズには珍しいメンバー紹介を交えた苣木教授が唄うBOOGIE BOMB、久しぶりに演奏されたセカンドアルバからの「ハートに火をつけて」とライブ前半も見どころ満載ではあるが、なんといっても本編中盤の「涙のワンウェイ」で、ある意味ライブのハイライトを迎えた感がある。
前年の野音前にリリースされたMAXシングルにカップリングされたこの曲は決してアップテンポではないが、胸に沁みるメロディと歌詞は名曲「LOOSE GAME」や「ROCK A WAY」に匹敵するほど。

涙のワンウェイを行け 曲がりくねった道だけど
涙のワンウェイを行け 飛ばし続ける走り続ける
それがそれが俺だから

あの日、この曲を聴いて涙が出そうになったことを思い出した。今観ても涙が出そうだ。


続くお馴染みのジョーカータイムでの森山達也のキレッキレのパフォーマンスは、この時の1シーンがDVDのパッケージを飾っているほどに圧巻。


アンコール一回目はサイレンが鳴り響く中「UNDER THE GUN」~「いつの日か・・・Doomsday War」と2023年の今もまだ続く海の向こうの争いを憂いる曲が続き、二回目のアンコールLET’S GO GARAGEでこの日のライブの幕が落とされた。


まだまだ続く野音とモッズの歴史の瞬間をあと何度味わえるかと期待に胸膨らませていたあの日の夜。

しかし、そんな期待を断ち切るかのような出来事。


突然森山達也を襲った突発性難聴。いまだ復帰のめどが立っていない。
そして、野音改修のニュース。改修がいつから始まるかはわからないが完成は10年後の2033年。


もしかして、モッズの野音はあの日で最期?


一瞬、そんな後ろ向きな思いが頭を過ぎったのは紛れもない事実。

だが、このDVDを観ていてそんな思いは断ち切ることに決めた。

この日、苣木教授がMCで語った「ここに戻ってくると約束した相手は自分自身だと思います」の言葉。


続いて森山達也は「この歳になってもね、飽きずに変わらずにやってます。それもこれも、やっぱロックが大好きなんで、ロックンロールが大好きなんで、そしてみんながいる限りやれるかなと」と語った。


そう、モッズも、森山達也も、そして自分自身ももう一度ここに戻れるはず。


そう信じよう。


最後に。
今回4度目にして初めてライブDVDに自分自身の姿を発見。それも1シーンだけではなく、何度も(笑)
なんといっても古くからの大切な仲間と一緒に並んでいる姿が記録されたのが嬉しいところ。 


次はまた一緒にこの野音でモッズのTRUST MEを聴きたいものだ。

否、きっと聴けるだろう。


今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。