日比谷野外音楽堂、通称野音と呼ばれるこの場所が好きだ。
先週末の土曜日、ついにその日はやってきた。
野音でのTHE MODS 40th ANNIVERSARY LIVE 「約束の夜」開催の日だ。
札幌から向かうため、念には念を入れて前日入りすることに。
2年ぶりの東京ということで、まずは懐かしの味を愉しむために神保町の喫茶店さぼうる2へ。ここで名物ナポリタンを食すのが東京へ来た時の恒例行事だ。
その後新宿へ向かい、これも東京での恒例行事のひとつ、新宿界隈のディスクユニオン巡り。
翌日のお茶の水駅前店を含め計4店舗で6点のCDを購入。いつもならもう少し購入するところだが、今回はモッズの40th記念グッズも手に入れなければならないのでグッと我慢。
夕方になったところで新宿を後にし、2日間の宿泊先となる大井町のホテルへ。
チェックインを済ませたところで、今回のもうひとつのメインイベントである40年以上にも及ぶ古くからの友人と飲むために大井町からほど近い友人宅へ。
こちらも2年ぶりの再会。ロックから政治、生き方までなんでも語りあえる大切な友とのひと時はこの上ない幸せな時間。奥さんの手料理とともに裸のラリーズ、外道、ルージュ、頭脳警察等の音や映像を肴に深夜まで。楽しかったなんてもんじゃない。遅くまでゴメンなさいでした。
いよいよライブ当日。
17時開場ではあるが逸る気持ちを抑えきれず、14時のグッズ販売開始に合わせ日比谷へ。
自分同様50歳を過ぎた連中が革ジャン、モッズT、ドクターマーチン等々を身に着け販売を待つ光景はいつ見ても圧巻。そんな連中がグッズを手に嬉々とした表情で坂道を下ってくる姿がどこか微笑ましい。
5年前は埼玉に住んでいた長女がグッズ販売に付き合ってバスタオルまで買ってくれたんだっけと思い出しながら、今回も後から後悔しないようにバスタオル、Tシャツ、バンダナ、キーホルダーなどを一通り。そして今回の目玉は何といっても菊池茂夫氏による写真集。コンパクトなサイズは少し意外ではあったが中身は全然コンパクトじゃない!!
野音でも昨晩の友人とは別に40年以上付き合いが続く古くからの友人Kと待ち合わせ。以前このブログで記事にしたこともある、モッズ30th ANNIVERSARYの野音で偶然の再会となった男である。
一杯やっているうちにいよいよ開場。
日比谷の空はすでに夜の色に変わっている。
売店でサッポロビールを1缶だけ手に入れ指定の座席へ。3回目の野音にしてようやく前から5列目の絶好席。
ライブ主催のホットスタッフの方から、コロナ禍のガイドラインに沿った運営(声だしNG等)について丁寧な説明があり、いつもの「We are MODS!!」のシュプレヒコールも今回だけはお預け。代わってマナーをしっかり守るファンの拍手が頂点に達した頃、いよいよライブの幕が開けた。
1曲目はまさかのBLUE RESISTANCE。
この曲をあえてオープニングにもってきたその意味は?なんて考える間もなく、1年半振りのモッズの演奏に今にも泣きだしそうなくらい抑えきれない感情があふれ出した。
あまりにも入り込みすぎたせいなのか次のFRIEND OR FOE以降の記憶が曖昧になっているが、TRUST ME、GOOD FELLOWSで同じように込み上げる感情が抑えきれない状態を体感したこと、仲間からこの日のためにとプレゼントされた白のエドワードジャケットを着てGUNSLINGER ROCKを歌う森ヤンのカッコよさ、他に何がでいつものようにテレキャスターをスタッフに向かって投げ放つシーン、キーコが四の五の語らずに歌い出すシーンなんかは強烈な残像となり残っている。
そして忘れてはいけないのが、開場前に有志の方が会場前でひとりひとりに「1回目のアンコールが始まるときに点けてください」と声をかけながら配ってくれたペンライト。歓声も、コール&レスポンスも抑制された中でせめてものメンバーに対するリアクションをと、多分かなりの額だったと思われる出費までして用意してくれたその熱意に頭が下がる思いだ。
アンコールで登場した森ヤンも夜の野音の空間で青白く揺れるライトの波に「アイドルってこんな気分なのかね」と照れながらも嬉しそうだったのが印象的。せっかくのペンライトに似合わない曲をと始まったのはライブで初めて演奏されるというスケッチソングだったとのは少しだけ想定外か。
アンコールを求めるコールもできず、ただただ拍手だけでしかアンコールの意思を表すことができないもどかしさ。そんな思いに応えるように最後の最後に演奏されたのはTWO PUNKS。30年ぶりに最初から最後まで森ヤンが歌い通したバージョンを聞けたのも、ある意味長いコロナ禍があったからこそか。
森ヤンも言っていたが何年か後には「あの時の野音にいたんだぜ」と得意げに話す時が来るのかもしれない素敵なショウタイムはあっという間に幕を閉じてしまった。
退路ヲ断ッテ前進セヨ。
野音のステージに垂らされた帯に書かれたメッセージは、これから先さまざまな節目を迎えるたびに心の中で反芻することになるのだろう。
さて、今回のライブ、1曲目の演奏が始まった時からちょっとした違和感。少しだけいつもより曲のテンポが遅いのだ。2曲目あたりでこれはあえてこうしてるのだなと気がついた。これからツアーを続けるためには煽りに煽ることによってガイドラインを逸脱してライブを中止させるわけにはいかないという、メンバーをはじめとする関係される方々の苦渋の選択だったのではないだろうか。
今回は誇り高き男たち(PROUD ONES)の決断をしっかりと受け止めておこう。
終演後はKと会場の出口を下っところで待ち合わせ、奥さんと別れ2人で新橋で乾杯。
同じ高校を卒業して同じ会社へ就職した2人は、今ではそれぞれ別のグループ会社へ移り、住まいも東京と札幌に分かれている。
テレワークを始めとした最近の仕事の様子や昔のクラスメートのことなどをゆっくりと話しながら時間がそれなりに過ぎた頃、Kが7年前に亡くなった次男のことをポツリと語り出した。5年前の野音の後には聞くに聞けずにいた件だ。ひととおり語り終えたKが1冊の本を差し出した。亡くなった次男を語った本を自費出版したのでよかったら読んでくれと。
400ページ近くあるその厚く重い本を受け取った後はいつものKに戻り、自費出版の費用や長男の転職なんかのことを笑いながら教えてくれ、最後は新橋の駅でハグをしながら次の再会を約束しそれぞれの電車へ。
モッズの野音ライブを間に挟んだ二人の友それぞれとの濃密な時間。自分にとってはモッズのライブ以上の約束の夜をプレゼントしてもらった気分だ。
THANKS!! GOOD FELLOWS!! 感謝しかないよ。
次の約束の夜に向かって、これからの毎日を丁寧に生きていこう。