神の右手悪魔の左手?
朝からちょっとばかりへたっていた。
持病的な過敏性大腸炎というやつ。
トイレに入っている時、
ジーンズのポケットに入れていた携帯が鳴った。
習慣とは恐ろしいもので、本能的に電話にでてしまった。
問い合わせに対する銀行からの回答だった。
やり取りをしながらも、お腹はキューとくる。
あとからかけ直せばいいものを、バカだねえ。
話の半分も耳に入らない。
それはそれとして、昼も遅く店に出向いた。
もう全然、へらへら状態で、仕事をする気にもなれない。
この時間からでは、通販品の処理は追いつかない。
そんな日に限って、受注が多い。
ボランティアバイトもいない。
家内は用事があって、僕より少し遅れて店に参上。
「お腹、大丈夫?とりあえず今日はピッキングだけして
明日、発送するようにしようよ」と。
お客さんには申し訳ないけど、そうするしかなさそうだ。
僕はよたよた歩きながら、棚に向かった。
いつもはあまり目のいかない棚をふとみたら、
あれれれれれ・・・「釣りキチ三平」の1巻がある。
気のせいかも知れないけど、1巻はなかなか見ないぞ。
一体、いつ買取ったのだろう?
小学校から大学まで、釣りにはよく出掛けた。
勿論、釣りキチ三平は愛読書だった。
いつの間にか失くしてしまったけど、殆どの巻を持っていた。
いやあ、懐かしい。
僕の左手は、僕の意思に反してすでに「釣りキチ三平」を手にしている。
右手が左手を制してその本を棚に戻そうとしている。
そうはさせじと、左手が器用に、本の弾力を利用してページをめくる。
右手が、今日はそんな時間はないでしょうが、本を戻して仕事に戻りなさいと。
どの道、今日は出荷できないっすよ。
ねっ、ねっ、少しだけ。
あっという間に読み終わっちゃうからさ、と左手が鮮やかな技でページをめくる。
と、そこに天からのイカズチが轟く。
「何ぶつぶつ言ってるの!」家内が悶え苦しむ僕を怒気の中で見ている。
「いや、ちょっとそのお腹が・・・」
「コミックを読むと治まるの?いい持病ね」
「いや、その神の右手と悪魔の左手がですね・・・」
「それを言うなら、神の左手悪魔の右手でしょ」
「おお~、そのコミックをご存知か」と、思わず僕は感嘆の声をあげてしまった。
「あのね、私は学生時代、書店でアルバイトしてたの。
それに今はこうして一緒に古本屋をしてるでしょ。
ほんとにしょうがないわね、早く仕事に戻りなさい」
と、冷ややかな目の家内。
これを読み終わってからじゃダメかな、やっぱダメですよね・・・
